生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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217.久しぶりのレーブンさん

 騎士団本部から出た俺たちは、見慣れたトライプールの街中を手をつないでゆっくりと歩いていた。

 この世界では同性のカップルも多いから、手をつないで歩いていても周りからじろじろ見られたりしないんだね。

「アキト、まっすぐ黒鷹亭に行くで良い?」
「うん。レーブンさん心配してくれてるだろうし…ハルの事恋人だって紹介したいな」

 浮かれてるのは分かってるんだけど、やっと生身のハルを紹介できるようになったんだからこれぐらいは許して欲しい。思わずぎゅっと手を握りしめれば、ハルは柔らかい笑みを浮かべる。

「アキト、黒鷹亭に帰り着いたら、もう一つ話したい事があるんだ」

 ここで聞くのにと思ったけれど、真剣なハルの顔を見て俺は言葉を飲み込んだ。黒鷹亭なら防音結界があるから、そこに入ってからって事かな。

「うん、分かった」
「じゃあこっちだね」

 俺一人だと絶対に通らないような狭い路地を駆使して、俺たちはあっという間に黒鷹亭の前に辿り着いた。

 既にお昼に近い時間な事もあり、黒鷹亭の中はしんと静まりかえっていた。こんなに天気が良い冒険日和だ。そりゃあ、冒険者はみんな出掛けてるよね。

「すみませーん」

 ハルが声を張り上げれば、レーブンさんが厨房の方から現れた。

「なんのよう…アキト!」
「レーブンさん!ただいま戻りました!」
「おかえり、アキト!怪我はしてないか?」
「はい、元気です!」
「一体何があったんだ?ケビンの野郎は体調に問題はないんだがとしか言わないし…」

 ケルビンさん、きちんと話を通してるって言ってたのに全然じゃないか。心配してくれてたんだなって分かるレーブンさんの反応は、正直に言えばちょっとだけ嬉しい。

「それについては、俺から説明させて下さい」

 俺の後ろに立っていたハルがそう口を開けば、レーブンさんはギロリと見た事が無いほど険しい目でハルを睨みつけた。

「なんでお前がアキトと一緒にいるんだ?」
「あの、レーブンさん」

 大切な二人がもめる所なんて見たくないと咄嗟に口を挟んだ俺をちらりと見て、レーブンさんは続けた。

「きっちり説明してくれるよな?ハロルド・ウェルマール」

 ハロルド・ウェルマール。今レーブンさんは確かにそう言った。

「ウェルマール…?」

 ウェルマールって、辺境伯の苗字と同じだよね?

「なんだ、お前名乗ってすらいなかったのか?」
「詳しい話は、これを起動してからでお願いします」

 魔道具を取り出してそう言ったハルに、レーブンさんは食堂を指差した。



 魔道具が起動された食堂で、隣り合わせに座った俺とハルの向かい側にレーブンさんは腰を下ろした。

「まずお前、いつ目覚めたんだ」

 レーブンさんはあっさりとそう尋ねた。ハルの予想通り、レーブンさんはハルが毒で眠ってた事も知ってたんだな。

「10日程前ですね」
「そうか。まあそれは良かった…おめでとう」

 仏頂面のままで律儀にお祝いの言葉を言うレーブンさんに、俺は思わず笑みを浮かべてしまった。

「まずこれから話す事は、剣に誓って真実です」
「お前が嘘を吐くと思ってるわけじゃない」
「俺は半年前から眠ったままでしたが、ずっと体にいたわけじゃないんです」
「…は?」

 レーブンさんの反応も無理は無いと思う。だって突然そんな事を言われても、ああそうなんだって納得できる筈が無い。

「俺は体から抜け出して、幽霊として色んな所を彷徨っていたんです」
「それは…」
「信じられないと思いますが、事実です」

 言い切ったハルを不思議そうな顔で見つめていたレーブンさんと、ふと目があった。ここは俺の体質を先に話した方が良いかもしれない。

「レーブンさん、俺は生まれつき変わった体質を持ってます」
「変わった体質?」
「俺には幽霊が見えるんです」

 ハルの言葉以上に唐突な切り出し方だったと思うけれど、レーブンさんはじっと俺の目を見つめてからふうと息を吐いた。

「アキトが嘘を吐いて無い事は分かった」

 レーブンさんはそう言い切ると、今度はハルの目をじっと見つめる。ハルは少しも怯まずにレーブンさんの目を見つめ返すと、そのまま見つめ合った。

「はあ…お前たち二人が嘘を吐いてない事は分かった」

 なんでそんな風に信じられるんだろうと思ったけど、そういえばレーブンさんは特殊なスキルで相手の事が分かるんだったっけ。嘘を吐いてるかどうかまでバレるとは思わなかったな。

 レーブンさんって、やっぱりすごい人なんだ。
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