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231.揃いの食器
冒険者を始めてすぐの頃に俺が買った食器は、木製で柄の無いシンプルなものだった。
というのも冒険者はどうしても実用性を重視するから、模様とかは入ってないものばかりらしい。よほどの見栄っ張りとかお金持ちだけが、わざわざ特注した派手な食器を使ってたりするんだって。
特注するのは別に良いんだけど、そんな派手な食器は嫌だな。なんだか落ち着かない気がすると言えば、ハルも笑顔で同意してくれた。
「たしかここにも雑貨屋があった筈…」
そう言われて案内されたこのお店でもう四軒目だけど、お揃い感のある冒険者用食器はまだ一つも見つかってない。普通の家で使うような食器ならいっぱいあるんだけどね。冒険者用はちょっと小ぶりで、かなり丈夫な素材で作ってあるらしいよ。
品揃えはすごく良いんだけど、冒険者用の食器は相変わらずの木製シンプルなんだよね。
「ここにも無いか」
「うん、これじゃお揃いって感じしないね」
俺が持ってる食器と似てはいるけど、お揃いって感じは全くしない。特別感が無い。
「なんだ、お客さん達は揃いの冒険者用が欲しいのかい?」
出来るだけこそこそと小声で話していたつもりだけど、店主さんには俺たちの言葉がばっちり聞こえてしまったみたいだ。笑顔で聞いてくれてるって事は怒ってないみたいだけど、品揃えに文句を言ってたようなものだから少しだけ気まずい。
「ええ。ですが、冒険者用はどこも柄無しで…揃いのが欲しかったんですけどね」
ハルは慌てる事も無く、普通に返事を返した。おじいさんは俺とハルを見比べて、繋いだままだった手に気づくと優しく目を細めた。
「ああ、お客さん達は伴侶なのかい?」
「あ、いえ、違います!」
まさか伴侶と聞かれるなんて思ってなかった俺は、思わず大慌てで否定してしまった。恋人なのかいって聞いてくれたら、即答でそうなんですって言えたんだけどな。思わず全力で否定してしまったけど、ハルは気にしてないかな。そう思った瞬間、ハルが口を開いた。
「今はまだ、伴侶では無いですね。先日恋人になったばかりなんですよ」
ハルの言葉がじんわりと胸にしみ込んでくる。そうか、今はまだ伴侶じゃないだけか。今度から伴侶なのかって言われたら、俺もそう返せるようになろう。ハルは気にしてないよと俺の頭をそっと撫でてくれた。
「そうかいそうかい」
店主のおじいさんは微笑ましそうに笑うと、近くにあった紙にさらさらと何かを書き出した。
「ここに行ってみると良いよ」
ハルが受け取った紙には、簡単な地図が書き込んであった。詳しい話を聞いてみれば、なんでもそのお店はおじいさんの弟子だった人が作ったそうだ。
「伴侶馬鹿で、揃いの食器にこだわりのありすぎる弟子だよ」
「え!」
「それじゃあ」
「あいつも元冒険者だから、きっと冒険者用の食器も作ってると思うよ」
「「ありがとうございます」」
思わず重なった感謝の言葉に、店主のおじいさんは楽し気に笑ってくれた。
教えてもらったお店は本当に揃いの食器ばかり取り扱っていて、しかもバラ売りは絶対にしないというなかなかにこだわりがすごいお店だった。
「あんたらなら、どの食器も似合いそうだな」
楽し気に笑った店主に店内を案内してもらい、俺たちは無事に理想の食器に出会う事ができた。あの店主さんには感謝しないといけないな。
購入したのは木製で温かみのある使いやすそうな食器だ。繊細に彫りこまれたツタの葉模様が、ぐるりと周りを一周している。見つけた瞬間に、ハルと二人でこれだって声を上げちゃったからね。俺のお気に入りのチュニックの刺繍にもちょっと似てる感じかな。
「ああ、それは俺の伴侶が彫刻したんだよ。繊細で良い模様だろう?」
幸せそうに笑いながら、店主はそう言って笑った。
「これは皿だけですか?」
「いや、こっちに来てくれ」
店主さんが教えてくれた棚に近づいていけば、そこにはコップにスープ皿にスプーン、フォークまであった。どれもあの繊細な彫刻入りだ。
「全部ください」
「はいよ」
笑顔で答えてくれた店主さんに、ハルはすぐにギルドカードを取り出した。
「じゃあこれで」
「ちょっと待って!ハル、俺も払わせて!」
すかさず俺もギルドカードを差し出す。
「いや、いいよ」
俺が全額払うからと言い張るハルに、俺は必死で食い下がった。
「駄目!二人の記念に買うんだから!」
「でもお皿以外を勝手に増やしたのは俺だろう」
「そんなことない!俺だって他のもあったら欲しかったから!」
店主さんはどこまでも平行線な俺たちの言い合いを、何故か微笑ましそうに眺めていた。
「折角の記念品なら、お互いに贈り合うのが良いんじゃないか?」
不意に口を開いた店主さんの言葉は、俺に味方するものだった。
「でも…」
「うちの伴侶もな、記念の品を一方的に贈られるのは性に合わないって言ってたよ。そこの兄ちゃんもそうなんだろうよ」
店主さんの言葉にコクコクと頷けば、ハルは苦笑を浮かべた。
「そっか…じゃあ二人で贈り合おうか?」
「うんっ!それが良い!」
初めて買うお揃いの食器が、お互いのプレゼントなんて最高だよね。俺は幸せな気分で、器用に包まれていく食器を見つめていた。
というのも冒険者はどうしても実用性を重視するから、模様とかは入ってないものばかりらしい。よほどの見栄っ張りとかお金持ちだけが、わざわざ特注した派手な食器を使ってたりするんだって。
特注するのは別に良いんだけど、そんな派手な食器は嫌だな。なんだか落ち着かない気がすると言えば、ハルも笑顔で同意してくれた。
「たしかここにも雑貨屋があった筈…」
そう言われて案内されたこのお店でもう四軒目だけど、お揃い感のある冒険者用食器はまだ一つも見つかってない。普通の家で使うような食器ならいっぱいあるんだけどね。冒険者用はちょっと小ぶりで、かなり丈夫な素材で作ってあるらしいよ。
品揃えはすごく良いんだけど、冒険者用の食器は相変わらずの木製シンプルなんだよね。
「ここにも無いか」
「うん、これじゃお揃いって感じしないね」
俺が持ってる食器と似てはいるけど、お揃いって感じは全くしない。特別感が無い。
「なんだ、お客さん達は揃いの冒険者用が欲しいのかい?」
出来るだけこそこそと小声で話していたつもりだけど、店主さんには俺たちの言葉がばっちり聞こえてしまったみたいだ。笑顔で聞いてくれてるって事は怒ってないみたいだけど、品揃えに文句を言ってたようなものだから少しだけ気まずい。
「ええ。ですが、冒険者用はどこも柄無しで…揃いのが欲しかったんですけどね」
ハルは慌てる事も無く、普通に返事を返した。おじいさんは俺とハルを見比べて、繋いだままだった手に気づくと優しく目を細めた。
「ああ、お客さん達は伴侶なのかい?」
「あ、いえ、違います!」
まさか伴侶と聞かれるなんて思ってなかった俺は、思わず大慌てで否定してしまった。恋人なのかいって聞いてくれたら、即答でそうなんですって言えたんだけどな。思わず全力で否定してしまったけど、ハルは気にしてないかな。そう思った瞬間、ハルが口を開いた。
「今はまだ、伴侶では無いですね。先日恋人になったばかりなんですよ」
ハルの言葉がじんわりと胸にしみ込んでくる。そうか、今はまだ伴侶じゃないだけか。今度から伴侶なのかって言われたら、俺もそう返せるようになろう。ハルは気にしてないよと俺の頭をそっと撫でてくれた。
「そうかいそうかい」
店主のおじいさんは微笑ましそうに笑うと、近くにあった紙にさらさらと何かを書き出した。
「ここに行ってみると良いよ」
ハルが受け取った紙には、簡単な地図が書き込んであった。詳しい話を聞いてみれば、なんでもそのお店はおじいさんの弟子だった人が作ったそうだ。
「伴侶馬鹿で、揃いの食器にこだわりのありすぎる弟子だよ」
「え!」
「それじゃあ」
「あいつも元冒険者だから、きっと冒険者用の食器も作ってると思うよ」
「「ありがとうございます」」
思わず重なった感謝の言葉に、店主のおじいさんは楽し気に笑ってくれた。
教えてもらったお店は本当に揃いの食器ばかり取り扱っていて、しかもバラ売りは絶対にしないというなかなかにこだわりがすごいお店だった。
「あんたらなら、どの食器も似合いそうだな」
楽し気に笑った店主に店内を案内してもらい、俺たちは無事に理想の食器に出会う事ができた。あの店主さんには感謝しないといけないな。
購入したのは木製で温かみのある使いやすそうな食器だ。繊細に彫りこまれたツタの葉模様が、ぐるりと周りを一周している。見つけた瞬間に、ハルと二人でこれだって声を上げちゃったからね。俺のお気に入りのチュニックの刺繍にもちょっと似てる感じかな。
「ああ、それは俺の伴侶が彫刻したんだよ。繊細で良い模様だろう?」
幸せそうに笑いながら、店主はそう言って笑った。
「これは皿だけですか?」
「いや、こっちに来てくれ」
店主さんが教えてくれた棚に近づいていけば、そこにはコップにスープ皿にスプーン、フォークまであった。どれもあの繊細な彫刻入りだ。
「全部ください」
「はいよ」
笑顔で答えてくれた店主さんに、ハルはすぐにギルドカードを取り出した。
「じゃあこれで」
「ちょっと待って!ハル、俺も払わせて!」
すかさず俺もギルドカードを差し出す。
「いや、いいよ」
俺が全額払うからと言い張るハルに、俺は必死で食い下がった。
「駄目!二人の記念に買うんだから!」
「でもお皿以外を勝手に増やしたのは俺だろう」
「そんなことない!俺だって他のもあったら欲しかったから!」
店主さんはどこまでも平行線な俺たちの言い合いを、何故か微笑ましそうに眺めていた。
「折角の記念品なら、お互いに贈り合うのが良いんじゃないか?」
不意に口を開いた店主さんの言葉は、俺に味方するものだった。
「でも…」
「うちの伴侶もな、記念の品を一方的に贈られるのは性に合わないって言ってたよ。そこの兄ちゃんもそうなんだろうよ」
店主さんの言葉にコクコクと頷けば、ハルは苦笑を浮かべた。
「そっか…じゃあ二人で贈り合おうか?」
「うんっ!それが良い!」
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