238 / 1,561
237.意識しすぎ
騎士団服を着たハルを見た時も、そりゃあ動揺したし格好良すぎるって思ったよ。でも騎士団服ってのは公の場所に出るための正装、いわば制服みたいなものだ。だからドキドキはしたけど、何とか耐えられたんだ。
でも今は明らかに私服だと分かる服を、色気駄々洩れで着崩してるんだよ。そんなの直視できるわけないじゃないか!
「俺も装備外せたよ」
何とかそう言葉は返したけど、ハルはじっと俺を見つめていた。気づかないふりでそっと視線を反らすと、俺はすっかり習慣になった浄化魔法を発動した。
一瞬で発動した魔法のおかげで、全身は風呂上りのようなさっぱり感に包まれた。移動で結構汗をかいたからだろうな。あ、ハルにもかけた方が良いのかな?それともハルって、浄化魔法を使えるんだろうか。
「ハル、浄化魔法って使える?」
ちらっと視線だけを向けて聞いてみれば、ハルはすぐに頷いた。
「ああ、幽霊の時は使わなかったから存在すら忘れてたけど、使えるよ」
「そうなんだ?」
「騎士団での移動中には、かなり重宝するからね」
何でも騎士団は領地とか国を背負ってる立場だから、身だしなみにもしっかりと気を使わないと駄目なんだって。
まあ確かに薄汚れた騎士団を見たら、この国大丈夫かなとは思うかもしれない。
かと言って任務での移動中に、騎士団員全員が一々風呂に入ったりするような時間を取れる筈も無い。だからほとんどの騎士が、浄化魔法だけは使えるようになるんだって。必要に迫られたら、結構覚えられるものなんだよとハルは遠い目をして呟いた。結構厳しく覚えさせられたりするのかもしれないな。
「そっか。じゃあハルも騎士団で覚えたんだね」
「ああ、まあアキトほど綺麗な魔法じゃないけどね」
そう言ったハルは、俺には聞き取れない言葉で何かを呟くとひょいっと軽く指先を揺らした。たったそれだけの動きで、ハルの体は淡いオレンジの光に包まれた。
「終わったよ」
綺麗な魔法じゃないなんてハルは言ってたけど、俺の魔法よりもよっぽど魔法らしくて綺麗だと思うんだけどな。
「俺はハルの魔法綺麗だと思うけどな」
「そう?…ありがとう」
ふふと笑って誉め言葉を受け入れたハルに、俺はどういたしましてと笑顔で答えた。
「アキト、何か食べる?」
「んー…」
正直に言えばお昼にいっぱい食べたからか、まだあんまりお腹が空いてないんだよな。おかわりまでしちゃったから、いつもより食べすぎな感じがする。
「俺はまだ良いかな。ハルは食べて良いよ?」
あれだけたくさん食べてたけど、ハルの胃袋は俺とは格が違うって知ってしまったからね。遠慮して食べないってのは避けたかったから、慌てて付け足した。
「いや、俺も結構食べたから、今日はまだいらないかな」
お腹が空いたら夜食でも食べようかと軽く続けたハルに、俺は笑顔を返した。
いつもなら装備を外して浄化魔法をかけたら、後はベッドに座るかそのまま寝転がってしまうかの二択だった。ハルは行儀がとか注意なんてしてこないから、好きなように振る舞ってたんだ。
でも、さすがにハルの事を意識している今の状態で、ベッドに座ったり転がったりはできなかった。なんでって恥ずかしいからだよ。
とりあえずごまかすようにテーブルの方へと歩いていけば、ハルはすぐに後を追ってきた。
「本当に大丈夫?」
心配そうに眉を寄せたハルは、俺の顔をそっと覗き込んできた。部屋に入ってからろくに視線を合わせられなかったから、だからこんなに心配そうなんだろうな。そう冷静に分析してる一方で、色気駄々洩れの至近距離でのどアップに叫びたい気持ちもある。
「だ、大丈夫!」
咄嗟にそう否定はしたけど、いま俺の頬はきっと真っ赤だと思う。俺の頬が赤い理由を誤解したのか、ハルはそっと手のひらで俺の額に触れた。
「体調が悪かったりする?」
「ううん、違う」
すっごく心配そうな顔をしてるから、申し訳ない気持ちになる。俺がただハルを意識しすぎて変になってるだけなんだよ。
「隠さないで、アキト」
至近距離でそんな風に囁かれたら、もう抵抗なんてできなかった。
「俺が、ただハルを意識しすぎてるだけだよ…っ!」
あまりに予想外の言葉だったんだろう。ハルは大きく目を見開いたまま、まじまじと俺を見つめてきた。あー駄目だ、すっごく恥ずかしい。
「防音結界まである部屋に、生身のハルと二人きりって思ったら、その、意識しちゃって…」
どんどん小さくなって行く俺の声に、ハルはぱちぱちと瞬きをしてから幸せそうに笑ってみせた。
でも今は明らかに私服だと分かる服を、色気駄々洩れで着崩してるんだよ。そんなの直視できるわけないじゃないか!
「俺も装備外せたよ」
何とかそう言葉は返したけど、ハルはじっと俺を見つめていた。気づかないふりでそっと視線を反らすと、俺はすっかり習慣になった浄化魔法を発動した。
一瞬で発動した魔法のおかげで、全身は風呂上りのようなさっぱり感に包まれた。移動で結構汗をかいたからだろうな。あ、ハルにもかけた方が良いのかな?それともハルって、浄化魔法を使えるんだろうか。
「ハル、浄化魔法って使える?」
ちらっと視線だけを向けて聞いてみれば、ハルはすぐに頷いた。
「ああ、幽霊の時は使わなかったから存在すら忘れてたけど、使えるよ」
「そうなんだ?」
「騎士団での移動中には、かなり重宝するからね」
何でも騎士団は領地とか国を背負ってる立場だから、身だしなみにもしっかりと気を使わないと駄目なんだって。
まあ確かに薄汚れた騎士団を見たら、この国大丈夫かなとは思うかもしれない。
かと言って任務での移動中に、騎士団員全員が一々風呂に入ったりするような時間を取れる筈も無い。だからほとんどの騎士が、浄化魔法だけは使えるようになるんだって。必要に迫られたら、結構覚えられるものなんだよとハルは遠い目をして呟いた。結構厳しく覚えさせられたりするのかもしれないな。
「そっか。じゃあハルも騎士団で覚えたんだね」
「ああ、まあアキトほど綺麗な魔法じゃないけどね」
そう言ったハルは、俺には聞き取れない言葉で何かを呟くとひょいっと軽く指先を揺らした。たったそれだけの動きで、ハルの体は淡いオレンジの光に包まれた。
「終わったよ」
綺麗な魔法じゃないなんてハルは言ってたけど、俺の魔法よりもよっぽど魔法らしくて綺麗だと思うんだけどな。
「俺はハルの魔法綺麗だと思うけどな」
「そう?…ありがとう」
ふふと笑って誉め言葉を受け入れたハルに、俺はどういたしましてと笑顔で答えた。
「アキト、何か食べる?」
「んー…」
正直に言えばお昼にいっぱい食べたからか、まだあんまりお腹が空いてないんだよな。おかわりまでしちゃったから、いつもより食べすぎな感じがする。
「俺はまだ良いかな。ハルは食べて良いよ?」
あれだけたくさん食べてたけど、ハルの胃袋は俺とは格が違うって知ってしまったからね。遠慮して食べないってのは避けたかったから、慌てて付け足した。
「いや、俺も結構食べたから、今日はまだいらないかな」
お腹が空いたら夜食でも食べようかと軽く続けたハルに、俺は笑顔を返した。
いつもなら装備を外して浄化魔法をかけたら、後はベッドに座るかそのまま寝転がってしまうかの二択だった。ハルは行儀がとか注意なんてしてこないから、好きなように振る舞ってたんだ。
でも、さすがにハルの事を意識している今の状態で、ベッドに座ったり転がったりはできなかった。なんでって恥ずかしいからだよ。
とりあえずごまかすようにテーブルの方へと歩いていけば、ハルはすぐに後を追ってきた。
「本当に大丈夫?」
心配そうに眉を寄せたハルは、俺の顔をそっと覗き込んできた。部屋に入ってからろくに視線を合わせられなかったから、だからこんなに心配そうなんだろうな。そう冷静に分析してる一方で、色気駄々洩れの至近距離でのどアップに叫びたい気持ちもある。
「だ、大丈夫!」
咄嗟にそう否定はしたけど、いま俺の頬はきっと真っ赤だと思う。俺の頬が赤い理由を誤解したのか、ハルはそっと手のひらで俺の額に触れた。
「体調が悪かったりする?」
「ううん、違う」
すっごく心配そうな顔をしてるから、申し訳ない気持ちになる。俺がただハルを意識しすぎて変になってるだけなんだよ。
「隠さないで、アキト」
至近距離でそんな風に囁かれたら、もう抵抗なんてできなかった。
「俺が、ただハルを意識しすぎてるだけだよ…っ!」
あまりに予想外の言葉だったんだろう。ハルは大きく目を見開いたまま、まじまじと俺を見つめてきた。あー駄目だ、すっごく恥ずかしい。
「防音結界まである部屋に、生身のハルと二人きりって思ったら、その、意識しちゃって…」
どんどん小さくなって行く俺の声に、ハルはぱちぱちと瞬きをしてから幸せそうに笑ってみせた。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。