生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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238.ハルの優しさと俺の気持ち

 結局全て言ってしまったと後悔する俺の目の前で、ハルは幸せそうに笑っている。

 これ以上誤魔化せないと思ったにしても、もうちょっと言い方があったんじゃないかな。そんなことをぐるぐる考えていると、噛み締めるようにハルが呟いた。

「そっか、俺の事を意識してくれてたんだ」
「う…今は恋人同士なんだから、そういう事を想像しても、その、普通…だろ?」

 頬が熱いなと思いながらもたどたどしく言い訳すれば、ハルはすぐに頷いてくれた。

「ああ、もちろん普通だよ」

 良かった。ここで普通じゃないと言われたら、恥ずかしすぎて部屋から飛び出してたかもしれない。

「俺も恋人らしい触れ合いはしたいんだけど…さすがにここでは無理かな」
「え…?」

 ここでは無理と聞いて最初に思ったのが、なんで?だった事に自分で驚いてしまった。

「アキトにとって、黒鷹亭は安心できる特別な場所だよね?」

 それを壊したくないからと、ハルは残念そうに続けた。

 えーと、うん。ハルの気持ちはすごく嬉しいよ。その発言が、俺への気遣いからきてるのも頭では理解できる。確かに黒鷹亭は、俺にとってはこの世界の実家みたいな場所だからね。

 でも、同時に納得できない気持ちも湧いてくる。

 変な酒場で媚薬を飲まされた時にハルが処理してくれたのも、この部屋だったじゃないか。

 高度な防音結界があるのはさっきの実験で実感した。レーブンさんに聞かれる心配も、隣の部屋の客から文句を言われる心配もいらないのに、何で駄目なんだろう。

「二人でどこかに旅行に行くのも良いかなと思ってるんだけど、どうかな?」

 照れくさそうに笑うハルは可愛いけど、俺は即答できずに考え込んでしまった。

 もしここで俺がその案に同意したら、きっとハルは手を出さずに我慢できるんだろうな。まだ日にちも決まってない旅行の日まで、ずっとお預けでも我慢できるだけの忍耐力があるんだと思う。

 でも俺には無理だ。

 ぐっと拳を握りしめながら、ハルの目をまっすぐに見つめる。やけに喉が渇いたような気がするのは、緊張してるからかな。どうか引かないで欲しいと願いながら、俺はそっと口を開いた。

「俺は場所なんて気にしないのに」
「え…」
「ハルが相手なら場所なんてどこでも良いよ…抱いてくれないの?」

 口にした瞬間から、一気に後悔が襲い掛かってくる。

 あまりに直球すぎだだろうか。もう少し控え目な誘い方は無かったのかな。こんな事を言って呆れられてたらどうしよう。ぐるぐると考えながらハルの答えを待っていれば、不意にぎゅっと抱きしめられた。

「そんな事を言うと本気にするぞ、アキト?」

 耳元で低く囁かれたその言葉だけで、腰が砕けそうになった。抱きしめられたまま咄嗟に見上げたハルは、欲望でギラギラと光る目で俺を見下ろしていた。あんな言葉でこんなに煽られてくれたんだと思うと、たまらない気持ちになった。

「本気だよ。ハルが好きだから…触れて欲しい」

 少しかすれた声だったけど、ハルにはちゃんと届いたみたいだ。

「アキト、俺も好きだ」

 そう答えるなり、俺の体を軽々と抱きかかえた。いくらこの世界の人より華奢だといっても、俺だってそれなりに身長のある成人男性だよ?それをひょいっとお姫様抱っこで運べるとか、やっぱりハルってすごいんだな。

「……本当に我慢するつもりだったんだよ?」
「うん、ハルなら同意したら我慢しちゃうんだろうなって思ったんだ」

 そんな風に喋りながらも、ハルは悠々と室内を歩き出す。本当に俺なんて軽々運べちゃうんだな。

「まさかアキトから誘ってもらえるとは思って無かったから…暴走しそうかもしれない」
「あー…俺は嬉しいけどな」

 だってそれだけ欲しがってくれてるって事だしと呟けば、ハルはぐっと押し黙った。

「………もしアキトが許せないと思ったら、遠慮なく殴ってくれる?何なら魔法を使って止めてくれても良いから」

 唐突にそんな事を言い出したハルに、俺は戸惑いながらも頷いた。

「分かった。嫌だったらちゃんと言うし、殴ってでも止めるよ」

 まあ絶対そんな事にはならないと思うけどね。だって俺はハルになら、何をされても受け入れちゃうって分かってるから。
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