生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
255 / 1,561

254.B級魔物ウロス

 騎士団でやってた手合わせや稽古の見学で、ハルの強さはある程度知っている。C級なんて嘘だろうと思うぐらい強いって事ももちろん知ってはいるけど、それでもやっぱり心配は心配だ。

 だって今のハルは幽霊じゃなくて生身なんだよ。ということは怪我をする可能性とか、もっと悪ければ死んでしまう可能性だってゼロじゃないって事だ。

 思わずそんな事を考えてしまった俺は、返事もできずにうつむいたまま黙り込んだ。

「あ、じゃあアキトにお願いしても良い?」
「お願い…?」

 ちらりと視線を向ければ、ハルはにっこりと笑顔を浮かべた。

「俺以外の人の所に行きそうになったら、魔法で牽制して欲しいんだけど」

 ああ、ハルって本当にすごいよね。ただ待っててと言われても送り出せない俺に、さらりと役目を与えてくれるんだから。

「どうかな?」
「いいよ、土魔法で大丈夫かな?」

 申し出を快諾しながら、ハルがピンチになったら絶対に魔法攻撃を飛ばそうと俺はこっそり決意した。

 魔法なら遠くからでも狙えるんだから、危ない場面を見たらすぐに発動すれば間に合う筈だ。魔法で攪乱してる間に、二人で一緒に逃げるだけならできると思う。

 それにハルが怪我をしたらあの魔法を使えば良いんじゃないかな。また使えるか自信は無いけど、ハルのためなら発動できる気がするし。

「ああ、頼んだよ」

 ハルは俺の決意を知ってか知らずか、少し俺との距離をとってから三人組に声をかけた。

「おい、お前ら!こっちに来い!」
「うわああああああああああぁぁぁぁ!」
「助けてくれえぇぇぇぇx!」
「ぎゃああああぁぁぁ」

 追われている三人組がハルの方に来てくれれば、話は簡単だったんだけどね。三人は既にパニック状態なのか、ハルの声は全く聞こえていないみたいだ。

「無理か…全く」

 意味の無い言葉しか叫ばない三人に呆れながら、ハルは剣を手にしたまま駆け出した。

 その結果、草原では冒険者三人組を追うウロスに、さらにそのウロスを追うハルという、何とも奇妙な光景が繰り広げられている。

 でもそろそろハルが追いつきそうだな。すごいスピードだ。ハルの速さに感心しながら追いかけっこを眺めていると、三人組の進む先に冒険者達がいる事に気づいた。

 足を引きずっている男性冒険者と、その男に肩を貸している女性冒険者の二人組だ。まっすぐに二人に向かって駆けていく三人組は、周りが見えていないんだろうか。俺はもう一度魔力を練り上げ始める。 

「リマ、俺を置いて行ってくれ!」
「嫌だ!」

 女性はそう叫ぶなり、男性に肩を貸したまま腰にあった剣を抜いた。

「駄目だ、ウロスはB級、俺達では倒せない!」
「やってみなくちゃ分からない!」

 ウロスはうるさい声を上げて逃げ回る三人よりも、動かない静かな二人に狙いを変えたようだ。あれだけ必死で追いかけていたのに、どうしてよりによって今狙いを変えるんだよ。

「頼む!逃げてくれ!」
「断る!」

 お互いを大切に想ってるのが伝わってくる二人のやりとりを聞きながら、俺はようやく練りあがった魔力を使って得意の土魔法を発動した。

 強化した大きなつぶてはまっすぐに飛んでいくと、きっちりとウロスの後頭部に命中した。迷惑そうに頭を振ったウロスに、更に追撃のつぶてをどんどん打ち込んでいく。5つ全てを命中させてふうと息を吐いた時には、ウロスは殺意を込めた目で俺を睨んでいた。

 5つ全てを同じ場所に命中させたのに、それでもかすり傷程度なのか。B級はやっぱり強さが違うんだな。

「なんで…?」
「そこの人、逃げて!」
「はっ!こっちだ!化け物!」

 せっかくウロスの意識が俺に反れたのに、二人組は必死に気を引こうと声を張り上げてくれている。そのままこっそり逃げても良かったのに、良い人達だな。

 ウロスは二人組には見向きもせずにまっすぐに俺に向かって駆け出したけれど、それよりも早くハルが追いついた。

「さすがアキトだ!」

 高らかと叫んだハルは俺とウロスの間に陣取ると、流れるような動きでウロスに切りかかった。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。