256 / 1,561
255.ウロス戦と感謝の言葉
そこからは俺の魔法での援護なんて入る隙も無い程、ハルが一方的に圧倒していった。B級の魔物 対 C級の冒険者ですよね?って真顔で聞きたくなるぐらいには一方的だった。
突進攻撃をするウロスをひらりと避けては攻撃をしかけていくハルの動きに、俺はただただ見惚れるしか無かった。
「あ、あの!」
今はハルの戦闘を見るのに忙しいのに何だよと思いながら振り返れば、さっきまで縦横無尽に逃げ回っていたあの迷惑な冒険者三人組だった。
「何か?」
「さっきは俺達のために攻撃してくれてありがとう!」
へ?と首を傾げて固まってしまうぐらいには、意味が分からなかった。
「いえ、あの…」
貴方たちを助けたつもりなんてかけらも無いし、俺が助けたかったのは二人組の冒険者さんだけです。そう言う間もなく、男たちはぐいぐいと距離を詰めてくる。
「迷惑をかけた俺たちを助けてくれるなんて」
「天使みたいだ…」
「俺達に礼をさせてくれっ!」
暑苦しく詰め寄ってくる三人に、俺はぶんぶんと首を振りながら後ずさった。
「助けたつもりは無いので」
「いや、助かったよ」
「天使だ…」
「優しい上に謙虚だなんて!」
否定の言葉を返したら更に絡まれるなんて、もうどうしたら良いのか分からない。眠らせて静かにさせる魔法とか知ってたら使ってたかもしれないけど、そんな便利な魔法は知らないしどうしよう。
「お前達、アキトは俺の恋人だ…」
真後ろから聞こえてきた声にホッと息を吐く。ハルがいるならもう大丈夫だ。後ろを振り返れば、ハルはドサッと音を立てて担いでいたウロスの体を地面に下ろした。もう倒しきったんだとか、あの巨体を担いだ状態で移動できるのかとか聞きたい事は色々あったけど、ギロリと三人組を睨みつけたハルを見て飲み込んだ。
「アキトを口説くつもりなら…俺が相手になるぞ?」
ハルの低音での明らかな脅しに、ハルとウロスを交互に見つめていた三人は息を飲んだ。
「「「す、す…すみませんでしたー!」」」
そう叫ぶなり驚くほどのスピードで走り出すと、三人組はそのまま逃げて行ってしまった。あれだけ周りを巻き込みながら走り回ってたのに、まだ体力が残ってたんだ。ある意味すごいな。
「逃げ足だけは早いな…顔はしっかり覚えたけどな」
「ハル、怪我はしてない?」
さっきの三人組のせいで最後は見れてなかったからと尋ねれば、ハルは大丈夫だよと笑って答えてくれた。俺がホッと息を吐いた瞬間、後ろから声がかかった。
「すまない、ちょっと良いか?」
声をかけてきたのは、さっきの二人組の凛々しい女性だった。男性は一緒じゃないんだと視線を巡らせれば、すぐ近くの地面に座り込んでいた。
「助けてくれてありがとう。君たちがいなかったらハドリーは助からなかった」
「俺からも感謝を。リマを助けてくれてありがとう」
二人からの丁寧な礼の言葉に、俺達は顔を見合わせてから口を開いた。
「気にしないで下さい」
「ああ、俺達は自分のために戦っただけだ」
「しかし」
「ああ、俺からも礼を。アキトを庇うために気を引こうとしてくれていたよな」
「…役には立たなかったけどな」
苦笑を洩らした前衛らしき女性に、ハルは笑顔で首を振った。
「あの状況で、自分たちが標的に戻る覚悟で声を上げてくれたんだ。そんな事が出来る人はそう多く無い――誇って良いと思うよ」
二人は顔を見合してから、強張っていた顔にやっとうっすらと笑みを浮かべた。
「俺は槍使いのハドリーだ」
「私は剣士のリマ」
名乗りを上げてくれた二人に、俺達もすぐに答えた。
「俺は魔法使いのアキトです」
「戦士のハルだ」
「今日は無理だが、俺の怪我が治ったらご馳走させてくれるか?」
「気を使わなくて良いですよ?」
「いや、それぐらいはしたいんだ」
「頼む」
判断に悩んだ俺は、ちらりとハルを見上げた。こういう時、何て答えるべきなのか分からないからね。ハルは二人の真剣な目を見つめてから、おもむろに口を開いた。
「俺達は黒鷹亭を拠点にしてる」
「感謝する」
黒鷹亭に来ればやりとりが出来ると伝えたって事は、招待は受けるんだ。ハルの事だから気にしないでっていいそうだと思ったんだけど。
突進攻撃をするウロスをひらりと避けては攻撃をしかけていくハルの動きに、俺はただただ見惚れるしか無かった。
「あ、あの!」
今はハルの戦闘を見るのに忙しいのに何だよと思いながら振り返れば、さっきまで縦横無尽に逃げ回っていたあの迷惑な冒険者三人組だった。
「何か?」
「さっきは俺達のために攻撃してくれてありがとう!」
へ?と首を傾げて固まってしまうぐらいには、意味が分からなかった。
「いえ、あの…」
貴方たちを助けたつもりなんてかけらも無いし、俺が助けたかったのは二人組の冒険者さんだけです。そう言う間もなく、男たちはぐいぐいと距離を詰めてくる。
「迷惑をかけた俺たちを助けてくれるなんて」
「天使みたいだ…」
「俺達に礼をさせてくれっ!」
暑苦しく詰め寄ってくる三人に、俺はぶんぶんと首を振りながら後ずさった。
「助けたつもりは無いので」
「いや、助かったよ」
「天使だ…」
「優しい上に謙虚だなんて!」
否定の言葉を返したら更に絡まれるなんて、もうどうしたら良いのか分からない。眠らせて静かにさせる魔法とか知ってたら使ってたかもしれないけど、そんな便利な魔法は知らないしどうしよう。
「お前達、アキトは俺の恋人だ…」
真後ろから聞こえてきた声にホッと息を吐く。ハルがいるならもう大丈夫だ。後ろを振り返れば、ハルはドサッと音を立てて担いでいたウロスの体を地面に下ろした。もう倒しきったんだとか、あの巨体を担いだ状態で移動できるのかとか聞きたい事は色々あったけど、ギロリと三人組を睨みつけたハルを見て飲み込んだ。
「アキトを口説くつもりなら…俺が相手になるぞ?」
ハルの低音での明らかな脅しに、ハルとウロスを交互に見つめていた三人は息を飲んだ。
「「「す、す…すみませんでしたー!」」」
そう叫ぶなり驚くほどのスピードで走り出すと、三人組はそのまま逃げて行ってしまった。あれだけ周りを巻き込みながら走り回ってたのに、まだ体力が残ってたんだ。ある意味すごいな。
「逃げ足だけは早いな…顔はしっかり覚えたけどな」
「ハル、怪我はしてない?」
さっきの三人組のせいで最後は見れてなかったからと尋ねれば、ハルは大丈夫だよと笑って答えてくれた。俺がホッと息を吐いた瞬間、後ろから声がかかった。
「すまない、ちょっと良いか?」
声をかけてきたのは、さっきの二人組の凛々しい女性だった。男性は一緒じゃないんだと視線を巡らせれば、すぐ近くの地面に座り込んでいた。
「助けてくれてありがとう。君たちがいなかったらハドリーは助からなかった」
「俺からも感謝を。リマを助けてくれてありがとう」
二人からの丁寧な礼の言葉に、俺達は顔を見合わせてから口を開いた。
「気にしないで下さい」
「ああ、俺達は自分のために戦っただけだ」
「しかし」
「ああ、俺からも礼を。アキトを庇うために気を引こうとしてくれていたよな」
「…役には立たなかったけどな」
苦笑を洩らした前衛らしき女性に、ハルは笑顔で首を振った。
「あの状況で、自分たちが標的に戻る覚悟で声を上げてくれたんだ。そんな事が出来る人はそう多く無い――誇って良いと思うよ」
二人は顔を見合してから、強張っていた顔にやっとうっすらと笑みを浮かべた。
「俺は槍使いのハドリーだ」
「私は剣士のリマ」
名乗りを上げてくれた二人に、俺達もすぐに答えた。
「俺は魔法使いのアキトです」
「戦士のハルだ」
「今日は無理だが、俺の怪我が治ったらご馳走させてくれるか?」
「気を使わなくて良いですよ?」
「いや、それぐらいはしたいんだ」
「頼む」
判断に悩んだ俺は、ちらりとハルを見上げた。こういう時、何て答えるべきなのか分からないからね。ハルは二人の真剣な目を見つめてから、おもむろに口を開いた。
「俺達は黒鷹亭を拠点にしてる」
「感謝する」
黒鷹亭に来ればやりとりが出来ると伝えたって事は、招待は受けるんだ。ハルの事だから気にしないでっていいそうだと思ったんだけど。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。