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260.【ハル視点】アキトのために
格上の魔物から逃げようとする気持ちは分かるが、引き連れたまま走り回るのは間違いなく愚策だ。どこかで立ち止まって体勢を整えれば、他の冒険者も援護しやすいものを。
更にあのけたたましい悲鳴のせいで、冒険者達にも動揺が広がっている。荷物を捨てて駆け出している奴もいれば、たまたま逃げ道にいたせいで真横から盾ごと吹っ飛ばされた奴もいた。
「うわ…大丈夫かな?」
「飛ばされた盾使いはちゃんと身構えてたから大丈夫だと思うよ。ほら、あそこ。仲間が回収してる」
指差しながら答えれば、アキトは良かったとぽつりと呟いた。
「それにしても…魔物を引き連れて周りを巻き込むなんて」
その上、叫び声で周りに動揺を引き起こすなんて。もし俺の部下だったら、有無を言わさず特別訓練一か月だな。それはもう過酷な訓練を組んでやる。
思わず三人組への怒りが漏れてしまったけれど、俺は慌てて笑顔を作るとアキトを振り返った。
今は騎士ではなく冒険者だから義務では無いんだが、それでも見捨てるわけにはいかない。何よりアキトが気にするだろうからな。
「アキトはここで見てて」
「え、一人で行くの?」
「ああ、ウロスとは戦った事があるから大丈夫だよ。信じてまかせて欲しいな」
ウロスは辺境のスタンピードの応援に行った際、一対一で戦った事がある。攻撃力は高いけれど当たらなければ問題は無いから、俺とは相性の良い魔物だ。
「信じてるけど…」
アキトはそう呟くと、そのまま黙り込んでうつむいてしまった。うつむく前にちらりと見えたのは、討伐依頼を受けた冒険者や三人組に向けた心配なんて霞むほどの不安そうな表情だった。
「あ、じゃあアキトにお願いしても良い?」
不安なまま置いていきたくはないけれど、魔法攻撃はそれほど効果が無いから連れていくわけにもいかない。悩んだ俺は、アキトにお願いをする事に決めた。
「お願い…?」
怪訝そうな顔で俺を見つめてきたアキトに、にっこりと笑顔を浮かべて答える。
「俺以外の人の所に行きそうになったら、魔法で牽制して欲しいんだけど…どうかな?」
牽制だけならウロスがアキトを狙う事もないだろうし、やる事があれば少しは気がまぎれるだろう。アキトは少し考えてから、申し出を快諾してくれた。
「いいよ、土魔法で大丈夫かな?」
「ああ、頼んだよ」
アキトが頷くのを確認してから、俺はアキトから少し離れた場所まで移動した。ここならウロスの攻撃範囲からは外れる筈だ。
「おい、お前ら!こっちに来い!」
「うわああああああああああぁぁぁぁ!」
「助けてくれえぇぇぇぇx!」
「ぎゃああああぁぁぁ」
三人組に声をかけたが、混乱しているせいか全く話を聞いてくれない。こっちに来てくれれば助けてやると言ってるんだがな。
「無理か…全く」
意味の無い言葉しか叫ばない三人に呆れながら、俺は剣を手にしたまま駆け出した。進んでいく先にアキトがいない事だけが幸いだな。
そろそろ追いつくかと思った瞬間、ウロスの攻撃を受けた三人組の進路が急に反れた。まずい、あっちには別の冒険者達がいる。
更に悪い事に、その内の一人は既に負傷しているみたいだ。足を引きずっている男性冒険者と、その男に肩を貸している女性冒険者の二人組だった。まっすぐに二人に向かって駆けていく三人組は、全く周りが見えていないんだろうか。
「リマ、俺を置いて行ってくれ!」
「嫌だ!」
女性はそう叫ぶなり、男性に肩を貸したまま腰にあった剣を抜いた。
「駄目だ、ウロスはB級、俺達では倒せない!」
「やってみなくちゃ分からない!」
ウロスはうるさい声を上げて逃げ回る三人よりも、動かない静かな二人に狙いを変えたようだ。あれだけ必死で追いかけていたのに、どうしてよりによって今狙いを変えるんだ。あの三人組なら、追いかけ続けてくれても一向に構わないのに。
「頼む!逃げてくれ!」
「断る!」
お互いを大切に想ってるのが伝わってくる二人のやりとりを聞きながら速度を上げると、アキトの魔法が発動した。
確かに俺は、他の人の所に行きそうになったら牽制して欲しいと言った。言ったけれど、まさかアキトがウロスの後頭部めがけて五個もつぶてを打ち込むとは思っていなかった。
ウロスには魔法攻撃があまり効かないと、先に話しておくべきだった。俺もさすがに予想外の事態の連続に、冷静じゃなかったみたいだ。
ウロスが負ったのはかすり傷程度だったが、後頭部めがけての攻撃はよっぽど腹立たしかったらしい。アキトを殺意を込めた目で睨みつけている。
「なんで…?」
「そこの人、逃げて!」
「はっ!こっちだ!化け物!」
ウロスの意識が反れた隙に逃げる事もできたのに、二人組は気を引こうと必死になって声を張り上げている。ああ、あの二人は良い奴らみたいだな。そんな事を考えながら俺は一気に速度を上げた。
「さすがアキトだ!」
叫びながらアキトとウロスの間に陣取ると、俺はすぐに切りかかった。俺の目の前で、アキトに向かって殺意を飛ばすなんて死にたいらしい。
更にあのけたたましい悲鳴のせいで、冒険者達にも動揺が広がっている。荷物を捨てて駆け出している奴もいれば、たまたま逃げ道にいたせいで真横から盾ごと吹っ飛ばされた奴もいた。
「うわ…大丈夫かな?」
「飛ばされた盾使いはちゃんと身構えてたから大丈夫だと思うよ。ほら、あそこ。仲間が回収してる」
指差しながら答えれば、アキトは良かったとぽつりと呟いた。
「それにしても…魔物を引き連れて周りを巻き込むなんて」
その上、叫び声で周りに動揺を引き起こすなんて。もし俺の部下だったら、有無を言わさず特別訓練一か月だな。それはもう過酷な訓練を組んでやる。
思わず三人組への怒りが漏れてしまったけれど、俺は慌てて笑顔を作るとアキトを振り返った。
今は騎士ではなく冒険者だから義務では無いんだが、それでも見捨てるわけにはいかない。何よりアキトが気にするだろうからな。
「アキトはここで見てて」
「え、一人で行くの?」
「ああ、ウロスとは戦った事があるから大丈夫だよ。信じてまかせて欲しいな」
ウロスは辺境のスタンピードの応援に行った際、一対一で戦った事がある。攻撃力は高いけれど当たらなければ問題は無いから、俺とは相性の良い魔物だ。
「信じてるけど…」
アキトはそう呟くと、そのまま黙り込んでうつむいてしまった。うつむく前にちらりと見えたのは、討伐依頼を受けた冒険者や三人組に向けた心配なんて霞むほどの不安そうな表情だった。
「あ、じゃあアキトにお願いしても良い?」
不安なまま置いていきたくはないけれど、魔法攻撃はそれほど効果が無いから連れていくわけにもいかない。悩んだ俺は、アキトにお願いをする事に決めた。
「お願い…?」
怪訝そうな顔で俺を見つめてきたアキトに、にっこりと笑顔を浮かべて答える。
「俺以外の人の所に行きそうになったら、魔法で牽制して欲しいんだけど…どうかな?」
牽制だけならウロスがアキトを狙う事もないだろうし、やる事があれば少しは気がまぎれるだろう。アキトは少し考えてから、申し出を快諾してくれた。
「いいよ、土魔法で大丈夫かな?」
「ああ、頼んだよ」
アキトが頷くのを確認してから、俺はアキトから少し離れた場所まで移動した。ここならウロスの攻撃範囲からは外れる筈だ。
「おい、お前ら!こっちに来い!」
「うわああああああああああぁぁぁぁ!」
「助けてくれえぇぇぇぇx!」
「ぎゃああああぁぁぁ」
三人組に声をかけたが、混乱しているせいか全く話を聞いてくれない。こっちに来てくれれば助けてやると言ってるんだがな。
「無理か…全く」
意味の無い言葉しか叫ばない三人に呆れながら、俺は剣を手にしたまま駆け出した。進んでいく先にアキトがいない事だけが幸いだな。
そろそろ追いつくかと思った瞬間、ウロスの攻撃を受けた三人組の進路が急に反れた。まずい、あっちには別の冒険者達がいる。
更に悪い事に、その内の一人は既に負傷しているみたいだ。足を引きずっている男性冒険者と、その男に肩を貸している女性冒険者の二人組だった。まっすぐに二人に向かって駆けていく三人組は、全く周りが見えていないんだろうか。
「リマ、俺を置いて行ってくれ!」
「嫌だ!」
女性はそう叫ぶなり、男性に肩を貸したまま腰にあった剣を抜いた。
「駄目だ、ウロスはB級、俺達では倒せない!」
「やってみなくちゃ分からない!」
ウロスはうるさい声を上げて逃げ回る三人よりも、動かない静かな二人に狙いを変えたようだ。あれだけ必死で追いかけていたのに、どうしてよりによって今狙いを変えるんだ。あの三人組なら、追いかけ続けてくれても一向に構わないのに。
「頼む!逃げてくれ!」
「断る!」
お互いを大切に想ってるのが伝わってくる二人のやりとりを聞きながら速度を上げると、アキトの魔法が発動した。
確かに俺は、他の人の所に行きそうになったら牽制して欲しいと言った。言ったけれど、まさかアキトがウロスの後頭部めがけて五個もつぶてを打ち込むとは思っていなかった。
ウロスには魔法攻撃があまり効かないと、先に話しておくべきだった。俺もさすがに予想外の事態の連続に、冷静じゃなかったみたいだ。
ウロスが負ったのはかすり傷程度だったが、後頭部めがけての攻撃はよっぽど腹立たしかったらしい。アキトを殺意を込めた目で睨みつけている。
「なんで…?」
「そこの人、逃げて!」
「はっ!こっちだ!化け物!」
ウロスの意識が反れた隙に逃げる事もできたのに、二人組は気を引こうと必死になって声を張り上げている。ああ、あの二人は良い奴らみたいだな。そんな事を考えながら俺は一気に速度を上げた。
「さすがアキトだ!」
叫びながらアキトとウロスの間に陣取ると、俺はすぐに切りかかった。俺の目の前で、アキトに向かって殺意を飛ばすなんて死にたいらしい。
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