生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
265 / 1,561

264.行きたい場所と二つの小道

「今日の依頼分も無事に終わったし、帰ろうか」

 すっと立ち上がったハルはそう言うなり、しゃがみこんで採取をしていた俺に当然のように手を差し伸べた。こういう所が王子様っぽいよねなんて考えながらもその手をきゅっと掴めば、ぐいっと腕の力だけで俺の体は引き上げられた。

 すごい力だな。あれだけ筋肉があれば当然なのかな。思わず綺麗に筋肉のついたハルの体を思い浮かべてしまった俺は、ごまかすように慌てて答えた。

「うん、帰ろう!」

 何ならこのまま手を繋いで歩きたい気分だけど、今は危険もある採取先だから我慢だ。黒鷹亭に着いたら手を繋いで欲しいってお願いしてみようかな。

 俺達は二人並んで、まだまばらにしか人がいない草原を歩き出した。

「今日は早く終わったね」
「ああ、レボネの花をアキトがあっさり見つけたからね」
「え、でもホワイトブランカはハルがあっさり見つけたよね?」
「いやアキトだよ」
「ううん、ハルだよ」
「でも」
「いやいや」

 歩きながらそう言い合っていた俺達は、顔を見合わせると二人同時に吹きだした。二人とも一歩も引かずに、相手のおかげだって言い合ってるんだもんね。冷静になると笑ってしまうやり取りだ。

「二人とも運が良かったおかげで早く終わったって事にしようか」
「賛成!」
「ちょっと時間が出来たからどうしようか?」
「んー…冒険者ギルドは?」
「今日の報告は明日でも問題ないから、どこかアキトが行きたい場所があれば行こうか?」

 行きたい場所かぁ。黒鷹亭に着いたら手を繋いでもらいたいし、正直に言えばキスもそれ以上の事もしたい。でもさすがにこんな場所でそれを口にしない程度の常識はある。だっていくら人が少ないって言っても、誰が聞いてるか分からない外だからね。

「うーん…」
「ゆっくり考えて良いから、何か思いついたら教えて」

 そんな風に優しく言われてしまうと、逆に何か一つぐらい場所を上げたいと思ってしまった。でもいくら考えても何も思いつかない。

 ハルと一緒ならこんな地味な草原だってびっくりするぐらい楽しいし、ハルがいなかったら景色が綺麗だという高台からの眺望も味気なく感じたからな。ハルが一緒ならどこでも良いって答えるのは反則だろうか。それが俺の本音なんだけどな。

 考えながらも周りの景色を眺めていた俺は、不意に目に飛び込んできた小道にゆるりと首を傾げた。なんで二つも小道があるんだろう?

「あれ…?」
「どうかした?」
「俺達が来たのはこっちだよね?じゃああっちはどこに繋がってるの?」

 俺は二つの小道を順番に指差しながら、そうハルに尋ねてみた。来た時も当然そこにあったんだろうけど、全く気付いてなかったんだよね。

「ああ、あっちは北門につながってるんだ」
「え、北門!?」

 南門から来たよね?とびっくりしちゃったけど、何でもコノーア草原はどちらの門からも同じくらいの距離にあるんだって。

「ただ、朝早くは北門の方が混雑するからね」

 だからあえて朝は南門を選んだんだってハルは教えてくれた。

「そうなんだ…まだまだ知らない事がいっぱいあるんだなー」
「ゆっくり覚えていけば良いよ」

 これからはいつも一緒にいるんだしと笑ったハルに、俺も自然と笑みを返した。ハルはこういう事もはっきり言葉にしてくれる。そういう所もすごく好きだと思う。

「あ、良い事考えついたかも!」
「良い事?」
「北門に帰れば、アキトの好きなウマが見れるかもしれないよ」
「え?…いいの?」

 馬が走ってる姿を見るのは大好きだから俺は嬉しいけど、ハルは退屈しないのかな。だって俺、見惚れちゃって会話もできなくなると思うんだよ。前もそうだったから絶対そうなると思う。

「もちろん」
「でも俺、馬見てたら話せないから…」
「大丈夫だよ。俺もウマは好きだし、もし飽きたらアキトを見てるから問題ないよ」
「えー…俺見て楽しい?」
「俺にとっては何より楽しいよ」

 そうなのか。ハルが楽しいならまあ良いか。

「じゃあ、北門から帰りたい!」

 それでできれば馬を見たいと続ければ、ハルは嬉しそうに俺の希望を受け入れてくれた。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。