生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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273.珍しい料理

 我に返った俺は慌てて周りを見渡してみたけど、カルツさんの姿はもう路地のどこにも無かった。異世界のことわざらしきものに気を取られてる間に、あっという間にいなくなってしまった。

「あー…挨拶もできなかった…」

 思わずしょんぼりと肩を落としていたら、ハルは優しく俺の頭を撫でてくれた。たったそれだけの触れ合いであっさりとテンションが上がるなんて、俺ってちょっと単純すぎないかな。頭ではそう考えながらも、優しい手の動きを拒否なんてできる筈が無い。

「また会いにくれば良いよ」
「そっか、そうだね」

 また二人でカルツさんに会いに来れば良いだけか。ハルにも幽霊が見えるし話せるって事は、目の前で俺がカルツさんと話してても疎外感を感じるなんて事も無いんだし。

 さっきは見えるって言われて動揺しちゃったけど、同じものが見れるってそういう意味もあったのかな。俺は隣に立つハルをちらりと見上げた。目が合ったハルは、明るく笑って手を差し出してくる。

「行こうか」

 当然のように差し出された手をきゅっと握って、俺達はまた歩き出した。



 歩きながらわいわいと食べたいものを言い合っていると、そういえばちょっと珍しい店が近くにあるんだとハルが言い出した。

 何でもそこはスープに麺が入った、少し変わった料理を出しているんだって。それってもしかしてラーメン?それともパスタ?どっちにしても異世界に来てから初の麺料理だ!

「興味ある?」

 悪戯っぽく笑いながら俺の顔を覗き込んだハルは、聞くまでもないねと楽し気に笑いだした。うん、聞くまでもないよね。俺の顔には、絶対に行ってみたいって書いてあると思うし。



 ハルの案内で辿り着いたその店は、店の外にまで行列が出来ていた。まさかここまで大人気の繁盛店だとは思ってなかった俺は、その光景に驚いてしまった。

「アキト、並ぼう」
「うん!」
「ゆっくりするような店じゃないから、すぐに順番は回ってくると思うよ」

 なるほど、回転率が良いって事か。これはますますラーメンっぽいな。

「メニューは一種類しかないんだけど、人気なんだよ」
「一種類だけ?」
「ああ、量の違いだけで一種類だよ。量はね…」

 ハルとのんびりと話しながら待っていると、時間なんてあっという間に過ぎていった。



「はいよ」

 目の前に置かれた大きな皿に、俺の目は釘付けになった。

「うわー美味しそう!」
「ああ、前よりも更に美味しそうになってるよ」

 透き通ったスープのかかった麺の上には、赤と緑と黄色の野菜がちょんちょんと乗っている。

 何故か別添えのお皿に焼いたお肉が山盛りになってるんだけど、これはチャーシュー代わりなのかな?普通サイズを頼んだのに多すぎる気がしたけど、大きめサイズを頼んだハルの前に置かれたお皿は倍ぐらいの肉が詰まれていた。間違いとかでは無いみたいだ。

「「いただきます」」

 お箸が無いからフォークとスプーンで食べるのが何だか不思議だ。この世界でもどこかにはあるのかな――お箸。

 苦戦しながらも何とか一口目を口に運べば、旨味が一気に襲い掛かってくる。あっさりめの塩ベースのスープが、細い麺に絡んでたまらない美味しさだ。

 茹でただけかと思ってた野菜もそれぞれに味が付いているし、チャーシュー代わりの肉はそのままでもスープに入れてもすごく美味しい。このお店すごいわ。そりゃあ、あれだけ行列にもなるよねと納得してしまった。

 食材が違うからやっぱり異世界風の味付けにはなってるんだけど、これは確実にラーメンだ。店での呼び名はヌードルらしいけどね。これもまた異世界人が伝えたものだったりするのかな。

 元の世界でも繁盛店になれるぐらいの美味しさだ。

 慣れないフォークとスプーンには苦戦してしまうけど、麺が伸びてしまう前には完食したい。急いで食べ進めていく俺を微笑ましそうに見つめながらも、ハルは器用にフォークとスプーンでラーメンを食べている。

「おう、兄ちゃん、どうだい?うちのヌードルは!」
「すっっっっごく美味しいです!」

 お世辞でも何でもなくそう答えれば、店主さんは嬉しそうに笑ってくれた。
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