生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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277.メロウさんの質問

 別室へと言われた俺達が連れていかれた先は、地下にある訓練場だった。俺が魔法の練習をしたあの広い訓練場だ。何でこんな広い所に?と思わず周りを見回していると、優しく笑ったメロウさんは俺に声をかけてきた。

「すみません。今は上の個室は全て使用中でしたので」
「あ、いえ」
「防音結界を発動してよろしいですか?」

 いつの間にかメロウさんの手に握られていたのは、ハルも持ってるあの防音結界のための魔道具だった。

「どうぞ」
「メロウ、俺も持ってるが良いのか?」
「ええ、ギルド内で個人所有の魔道具を使うとなると、色々と手続きが面倒ですし」
「ああ、それもそうか…」

 促されるままにハルと並んで椅子に腰かければ、メロウさんも向かい側に腰を下ろした。

「早速ですが、まずは手紙の内容について確認したいので…」
「手紙に書いた事が全てだ」

 即答したハルに、メロウさんの視線はまたも氷点下に戻った。

「アキトさんは元々幽霊が見える体質で、あなたの幽霊が見えていたと?」
「ああ、この剣に誓って嘘偽りは言ってない」

 ハルの誓いの言葉を聞いたメロウさんは、なるほどとすぐに納得した。その言葉ってそんなに信用される言葉なんだな。

「つまりハルさんはずっとアキトさんと一緒にいた…と」
「そうだ」
「リスリーロの件もあなたでしたか」

 あ、さらりとリスリーロの時のケビンに教えてもらった話も嘘だってばれちゃったな。

「すみません…」

 思わず小さくなりながらそう謝れば、メロウさんもハルも気にしなくて良いと言ってくれた。

「まだ冒険者ですらなかったアキトさんに、体質やハルさんの幽霊の事を教えられても確実に信じられなかったと思いますから」
「でも…俺、精霊が見える人って呼ばれてるけど知識を与えてくれてたのはハルで」

 だから俺には精霊は見えてないんです。恐る恐る口にした俺に、メロウさんは優しく微笑んでくれた。

「通り名と言うのは絶対にそれを達成していないと駄目ってわけじゃないんですよ?」
「え…?」
「例えばドラゴンを倒した事なんて無くても、その強さを見込んでかいつの間にかドラゴンキラーと呼ばれていた冒険者もいます」

 メロウさんがそう言い切れば、ハルも横から口を挟んだ。

「そうそう。食べられる素材を集めるのが上手いからって料理人なんて通り名が付いたやつもいたけど、そいつの作る料理は壊滅的だったしね」
「ああ、いましたね」
「自分で名乗るならともかく、周りが付けた通り名が事実と異なるなんて事は結構よくある事なんだよ」

 そうなのか。周りに何て呼ばれてても別にどうでも良いと思ってたけど、よく考えたら嘘吐いてたみたいなものなのかなってちょっと気になってたんだ。

「そこは本当に気にしなくて大丈夫ですからね」

 優しい声でもう一度そう断言してくれたメロウさんに、俺はホッと息を吐いた。最初に会った時から優しくしてくれてたメロウさんに、嘘つきだって嫌われなくて良かった。

 あの優しい笑顔でのおかえりなさいが無くなったら、きっとかなり寂しいと思うんだ。あの氷点下の視線で見つめられたら、もしかしたら俺は泣くかもしれない。

「それでハルさんは冒険者の特別任務ですか」
「ああ、最近の採取地の感じは何かおかしいからな」
「なるほど」
「そういえば、昨日コノーア草原でウロスに遭遇したぞ」
「報告は上がっています。すぐに捜索隊を動かしましたが発見はまだですね」

 深刻な顔で告げたメロウさんに、俺とハルは顔を見合わせた。

「その反応…もしかして?」
「あーすまん。俺が討伐したから、ここにいる」

 ぽんと自分の魔道収納鞄を叩いたハルを、メロウさんはまじまじと見つめた。

「…ここに出してもらえますか?」

 無表情のまま訓練場をそっと指差したメロウさんに従って、ハルはウロスを取り出した。どさりと置かれたウロスを、メロウさんはじっと凝視している。きっと鑑定してるんだろうな。
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