282 / 1,561
281.【ハル視点】イチャイチャのお誘い
ほんの思いつきで候補に加えた店だったけれど、食べ終えたアキトは本当に幸せそうに笑ってみせた。この店を思いだした自分を褒めてやりたくなるぐらい、それはもう可愛い笑顔だった。
店を出てしばらく歩くと、周りをキョロキョロと見回したアキトが不意に俺の手をくいっと引いた。何か言いたそうなアキトに、俺はすぐに立ち止まった。
「どうした?」
「さっきのヌードル、俺の世界にあった料理にそっくりだったんだ」
少し背伸びをしたアキトが、耳元でこっそりとそう教えてくれた。ああ、だからあんなに珍しい料理なのに、目の前に出された瞬間に懐かしそうな顔をしたのか。
「そっか。名前も一緒?」
「ううん、俺の国ではラーメンって呼ばれてた」
他の国ではヌードルって呼ばれてたんだと、アキトは教えてくれた。こそこそと耳打ちで話し続ける俺達は、はたから見たらかなり怪しいだろうな。いや、もしかしたら恋人同士の戯れだと、そっと目をそらされるかもしれないな。
「らーめんか…じゃあまた食べに行こうか、らーめん」
「うんっ!また行きたいっ!」
内緒話を切り上げた俺達は、大通りに続く道を歩いていく。
「今日はさすがに疲れてるだろうから黒鷹亭に帰ろうか」
そう提案したのは、昨夜アキトに無理をさせた自覚があるからだった。ポーションのおかげで元気そうではあるが、初めてなのに抱きつぶしてしまった罪悪感が消えない。
「そうだね、帰ろうか」
すぐに俺の提案に同意してくれたあたり、やっぱりアキトは疲れているのかもしれないな。帰ったらゆっくり休んでもらおう。
大通りに辿り着くと、魔道具の灯りに照らされたいくつもの店と楽し気に散策している人達の姿が目についた。大通りの店は夜も遅くまで開いているから、食事を終えてから足を伸ばす人達も多い。
アキトは興味深そうに、近くのお店を見つめていた。雑貨屋に食料品、飲食店と順番にのぞいていくアキトと一緒に、店の前をうろうろと移動する。
不意にアキトが足を止めたのは、薬の材料を取り扱っているお店だった。店先に並んでいるのは乾燥させた木の根ばかりだが、店内に入れば各種薬草も取り扱っている。
アキトが採取した事のある薬草も取り扱っているから、きっと店に入れば長くなってしまうだろう。少しでも早く休んで欲しい今日は、立ち寄るわけにはいかない。不思議そうに木の根を見つめているアキトに気づかなかったふりで、俺はくいっと繋いだままの手を引いた。
「アキト、次の角を左だよ」
「はーい」
不満そうなそぶりも一切無く、アキトは素直に角を曲がってくれた。ごめんね、アキト。今度あの店にも連れていくから、説明はその時まで待って欲しい。
ガチャリと音を立てて、俺は黒鷹亭の個室の鍵を閉めた。やっと帰り着いたなと思った瞬間、アキトが口を開いた。
「ただいまー」
ちらりと俺を見上げるアキトの期待に満ちた目があまりに可愛くて、思わずふふと笑ってしまった。
「おかえり、アキト」
「ハルも言って?」
まるで新婚みたいなやり取りじゃないかなんて考えてしまったせいで、じわりと頬が熱くなってくる。別に嫌なわけじゃない。ただひたすら照れくさいだけだ。だが、どれだけ照れくさくても、上目遣いで待たれてしまったら断る事なんて出来るわけがない。
「ただいま、アキト」
「うん。おかえり、ハル」
幸せそうな笑顔のアキトに、俺も思わずへらりと笑みを返した。
「…このやりとり嫌い?」
少しだけ不安そうに尋ねてきたアキトに、俺は目を大きく見開いてからぶんぶんと大きく首を振った。
「まさか!照れくさいけど、特別感があって好きだよ?」
新婚生活の先取りって感じがするとは、さすがに言わなかった。付き合いだしたばかりの俺に言われても、アキトが反応に困るかもしれないからな。
「本当?俺もこのやりとり好きなんだ」
「じゃあこれからも続けようよ。慣れれば照れなくなると思うし」
いつか二人で同じ家に住む頃には、自然とやり取りできるようになったら良いな。そう思いながら提案すれば、アキトは嬉しそうに笑った。
「うん、じゃあこれからも続けよう」
笑顔で宣言したアキトは、荷物を下ろすとすぐに装備を外し始めた。俺も隣に並んで装備を解除していく。
ふと気づけば、アキトは何かを考えこんでいるようだった。目がうろうろと彷徨っているし、どこか遠くを見ているような目をしている。今日は一日楽しそうにしていたけれど、何か気になる事でもあったんだろうか。
心配しつつこっそりと見つめていると、アキトは流れるように浄化魔法を発動しそのままベッドに飛び込んだ。
「アキト、やっぱり疲れた?」
「いや、疲れはそんなに…」
「じゃあさっきまで何を考えてたの?もしよければ教えて?」
「えー…と…笑わない?」
「笑わないから教えて欲しいな」
一体何がそんなに気になっていたのか、もし悩み事だったら遠慮なく相談して欲しい。そう考えていた俺は、その後に続いた予想外すぎる言葉に固まってしまった。
「その…ハルとイチャイチャしたいけど、こういう時どうやって誘うのかが分からないなって」
大きく目を見開いたまま固まった俺に、アキトは慌てて言いつのる。
「だって、恋人への甘え方とか知らないんだよ、俺は!いきなりイチャイチャしたいって言ったら引くのかなとか」
何だろう、この愛おしい存在は。最初に思ったのはそれだった。次いで、この愛おしい存在が俺の恋人なんだという幸福感がじわじわと湧いてくる。
恋人への甘え方が分からないなんて、悩む必要はかけらも無いのに。イチャイチャしたいともし直球で言われたら、俺は大喜びで従うだけだ。
「引かないよ!」
「え…引かないの?」
きょとんと俺を見つめてくるアキトが可愛すぎて、すぐにでもキスして触れたくなってしまう。
「アキトに誘われたら喜びこそすれ、引くわけがないよね?いつでもどこでも俺はアキトとイチャイチャしたいんだからね!」
力強く宣言した俺の言葉を聞くなり、アキトは恥ずかしそうに頬を染めるとベッドの上をゴロゴロと転がりだした。少し強く言い過ぎたかな。それこそアキトが引いていないと良いんだが。
店を出てしばらく歩くと、周りをキョロキョロと見回したアキトが不意に俺の手をくいっと引いた。何か言いたそうなアキトに、俺はすぐに立ち止まった。
「どうした?」
「さっきのヌードル、俺の世界にあった料理にそっくりだったんだ」
少し背伸びをしたアキトが、耳元でこっそりとそう教えてくれた。ああ、だからあんなに珍しい料理なのに、目の前に出された瞬間に懐かしそうな顔をしたのか。
「そっか。名前も一緒?」
「ううん、俺の国ではラーメンって呼ばれてた」
他の国ではヌードルって呼ばれてたんだと、アキトは教えてくれた。こそこそと耳打ちで話し続ける俺達は、はたから見たらかなり怪しいだろうな。いや、もしかしたら恋人同士の戯れだと、そっと目をそらされるかもしれないな。
「らーめんか…じゃあまた食べに行こうか、らーめん」
「うんっ!また行きたいっ!」
内緒話を切り上げた俺達は、大通りに続く道を歩いていく。
「今日はさすがに疲れてるだろうから黒鷹亭に帰ろうか」
そう提案したのは、昨夜アキトに無理をさせた自覚があるからだった。ポーションのおかげで元気そうではあるが、初めてなのに抱きつぶしてしまった罪悪感が消えない。
「そうだね、帰ろうか」
すぐに俺の提案に同意してくれたあたり、やっぱりアキトは疲れているのかもしれないな。帰ったらゆっくり休んでもらおう。
大通りに辿り着くと、魔道具の灯りに照らされたいくつもの店と楽し気に散策している人達の姿が目についた。大通りの店は夜も遅くまで開いているから、食事を終えてから足を伸ばす人達も多い。
アキトは興味深そうに、近くのお店を見つめていた。雑貨屋に食料品、飲食店と順番にのぞいていくアキトと一緒に、店の前をうろうろと移動する。
不意にアキトが足を止めたのは、薬の材料を取り扱っているお店だった。店先に並んでいるのは乾燥させた木の根ばかりだが、店内に入れば各種薬草も取り扱っている。
アキトが採取した事のある薬草も取り扱っているから、きっと店に入れば長くなってしまうだろう。少しでも早く休んで欲しい今日は、立ち寄るわけにはいかない。不思議そうに木の根を見つめているアキトに気づかなかったふりで、俺はくいっと繋いだままの手を引いた。
「アキト、次の角を左だよ」
「はーい」
不満そうなそぶりも一切無く、アキトは素直に角を曲がってくれた。ごめんね、アキト。今度あの店にも連れていくから、説明はその時まで待って欲しい。
ガチャリと音を立てて、俺は黒鷹亭の個室の鍵を閉めた。やっと帰り着いたなと思った瞬間、アキトが口を開いた。
「ただいまー」
ちらりと俺を見上げるアキトの期待に満ちた目があまりに可愛くて、思わずふふと笑ってしまった。
「おかえり、アキト」
「ハルも言って?」
まるで新婚みたいなやり取りじゃないかなんて考えてしまったせいで、じわりと頬が熱くなってくる。別に嫌なわけじゃない。ただひたすら照れくさいだけだ。だが、どれだけ照れくさくても、上目遣いで待たれてしまったら断る事なんて出来るわけがない。
「ただいま、アキト」
「うん。おかえり、ハル」
幸せそうな笑顔のアキトに、俺も思わずへらりと笑みを返した。
「…このやりとり嫌い?」
少しだけ不安そうに尋ねてきたアキトに、俺は目を大きく見開いてからぶんぶんと大きく首を振った。
「まさか!照れくさいけど、特別感があって好きだよ?」
新婚生活の先取りって感じがするとは、さすがに言わなかった。付き合いだしたばかりの俺に言われても、アキトが反応に困るかもしれないからな。
「本当?俺もこのやりとり好きなんだ」
「じゃあこれからも続けようよ。慣れれば照れなくなると思うし」
いつか二人で同じ家に住む頃には、自然とやり取りできるようになったら良いな。そう思いながら提案すれば、アキトは嬉しそうに笑った。
「うん、じゃあこれからも続けよう」
笑顔で宣言したアキトは、荷物を下ろすとすぐに装備を外し始めた。俺も隣に並んで装備を解除していく。
ふと気づけば、アキトは何かを考えこんでいるようだった。目がうろうろと彷徨っているし、どこか遠くを見ているような目をしている。今日は一日楽しそうにしていたけれど、何か気になる事でもあったんだろうか。
心配しつつこっそりと見つめていると、アキトは流れるように浄化魔法を発動しそのままベッドに飛び込んだ。
「アキト、やっぱり疲れた?」
「いや、疲れはそんなに…」
「じゃあさっきまで何を考えてたの?もしよければ教えて?」
「えー…と…笑わない?」
「笑わないから教えて欲しいな」
一体何がそんなに気になっていたのか、もし悩み事だったら遠慮なく相談して欲しい。そう考えていた俺は、その後に続いた予想外すぎる言葉に固まってしまった。
「その…ハルとイチャイチャしたいけど、こういう時どうやって誘うのかが分からないなって」
大きく目を見開いたまま固まった俺に、アキトは慌てて言いつのる。
「だって、恋人への甘え方とか知らないんだよ、俺は!いきなりイチャイチャしたいって言ったら引くのかなとか」
何だろう、この愛おしい存在は。最初に思ったのはそれだった。次いで、この愛おしい存在が俺の恋人なんだという幸福感がじわじわと湧いてくる。
恋人への甘え方が分からないなんて、悩む必要はかけらも無いのに。イチャイチャしたいともし直球で言われたら、俺は大喜びで従うだけだ。
「引かないよ!」
「え…引かないの?」
きょとんと俺を見つめてくるアキトが可愛すぎて、すぐにでもキスして触れたくなってしまう。
「アキトに誘われたら喜びこそすれ、引くわけがないよね?いつでもどこでも俺はアキトとイチャイチャしたいんだからね!」
力強く宣言した俺の言葉を聞くなり、アキトは恥ずかしそうに頬を染めるとベッドの上をゴロゴロと転がりだした。少し強く言い過ぎたかな。それこそアキトが引いていないと良いんだが。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。