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289.異国情緒の溢れる料理
子どもみたいな悪戯っぽい笑顔を浮かべて『来てからのお楽しみ』なんて言われたら、それ以上問い詰める事なんてできなかった。
せっかくならとできるだけ周りのテーブルを見ないように気をつけて、俺はひたすら注文した料理を待ち続けた。
まあ待ち時間は向かいに座ってたハルをじっくり観察してたから、あっという間に時間は過ぎたんだけどね。伏目がちな時はまつげに目が行くのに、ぱちりと目を開くと綺麗な紫の瞳にばっかり目が行くのを発見したよ。
「お待たせしましたー日替わりと果実水です」
そう声をかけながら目の前に置かれた大きなお皿を見て、俺はギリギリの所でなんとか叫び声を飲み込んだ。え、これってまさか。
「ごゆっくりどうぞ」
「ハル、これって!…えっとまず料理名なんだったっけ?」
「ビルチェッティとガックラースだね」
「それだ。えっと、これってライスだよね?」
料理を指差して尋ねた大興奮の俺の反応を見て、ハルはふふと楽し気に笑った。
「ラースっていうのは隣の国の言葉でライスって意味なんだ。ガックは香草だね」
「そうなんだ!ラースね、覚えとこう!」
「ちなみにビルチェッティは、豆の煮込み料理って感じかな」
へぇ、じゃあライスの横に乗ってるこの豆がたっぷり入った紫色のペーストみたいなのが、ビルチェッティなのか。ふわりと漂ってくる嗅いだことのない香りからして、スパイスが結構効いてるみたいだ。
「隣の国ではラースは良く食べるの?」
「ああ、この国よりは頻繁に食べるかな。温かいうちに食べようか?」
お米をよく食べると言う隣の国についてもっと聞きたい気持ちはあるけど、目の前に温かい料理があるなら冷めてしまう前に食べないと失礼だよね。
「うんっ!いただきます」
「いただきます」
添えられていたスプーンで、俺はお米の部分と豆の煮込み料理の部分を均等にすくい上げた。ワクワクしながら口に運べば、香草の風味の聞いたごはんに、香辛料で味付けされた少し辛味のある豆の煮込みが意外にもよく合っている。異国情緒漂う料理だけど、どこか懐かしいような不思議な味だ。
「アキト、どう?」
ほんの少し心配そうな顔をして俺を見つめていたハルに、俺はすぐに笑顔で答えた。
「美味しい!」
「気に入って良かったよ」
「ちょっと辛いんだね!」
「あ、もしかして辛いのは苦手だった?」
「ううん、むしろ辛いのは大好きなんだ!」
「そうなのか」
我が家はカレーは絶対辛口派だったし、その上辛味スパイスを追加してたぐらいだからね。そう思ったけど、これはさすがにこんな場所で口に出来る話じゃないな。俺はすぐに話題を変えた。
「それにしても、ハルは他の国にも詳しいんだね?」
「ああ、行った事はあるよ」
「そうなんだ?」
「仕事の関係で色々ね」
それは騎士としてなのか、冒険者としてなのか。俺はぼんやりとどっちだろうと考えながら、淡い水色の果実水を一口飲んでみた。爽やかな酸味と濃厚な甘みが、何だか癖になりそうな味だ。
「あ、果実水も美味しい…」
「これは隣国の特産の果物、ビオンを使ってるみたいだね」
「果実水まで隣の国の果物なんだ?」
「ああ、かなりこだわってる店みたいだな」
感心したように店内を見渡したハルは、壁に飾ってある絵や謎の仮面も隣国のものだよと教えてくれた。もしかしてここは、アンテナショップみたいなものなのかな。異国に行った気分で楽しめる料理店とか、そりゃあ間違いなく流行るよね。
しかも味もちゃんと美味しいし。食べれば食べるほど、食欲が湧いてくる気がする。
「たまには下調べ無しで店に入るのも良いもんだね」
「うん、おかげで美味しいごはんに出会えたし」
「あー…メロウにも感謝だな」
ちょっと嫌そうにしながらそう言ったハルに、俺は思わず声を上げて笑ってしまった。
折角だからこの後どこかに行こうかと誘ってくるハルの手をくいっと引いて、俺はまっすぐ黒鷹亭を目指して歩き続けた。
いくら自然な笑顔が出るようになったっていっても、ハルは間違いなく疲れてるはずだ。だから俺の前でぐらいは無理はして欲しくなかった。
せっかくならとできるだけ周りのテーブルを見ないように気をつけて、俺はひたすら注文した料理を待ち続けた。
まあ待ち時間は向かいに座ってたハルをじっくり観察してたから、あっという間に時間は過ぎたんだけどね。伏目がちな時はまつげに目が行くのに、ぱちりと目を開くと綺麗な紫の瞳にばっかり目が行くのを発見したよ。
「お待たせしましたー日替わりと果実水です」
そう声をかけながら目の前に置かれた大きなお皿を見て、俺はギリギリの所でなんとか叫び声を飲み込んだ。え、これってまさか。
「ごゆっくりどうぞ」
「ハル、これって!…えっとまず料理名なんだったっけ?」
「ビルチェッティとガックラースだね」
「それだ。えっと、これってライスだよね?」
料理を指差して尋ねた大興奮の俺の反応を見て、ハルはふふと楽し気に笑った。
「ラースっていうのは隣の国の言葉でライスって意味なんだ。ガックは香草だね」
「そうなんだ!ラースね、覚えとこう!」
「ちなみにビルチェッティは、豆の煮込み料理って感じかな」
へぇ、じゃあライスの横に乗ってるこの豆がたっぷり入った紫色のペーストみたいなのが、ビルチェッティなのか。ふわりと漂ってくる嗅いだことのない香りからして、スパイスが結構効いてるみたいだ。
「隣の国ではラースは良く食べるの?」
「ああ、この国よりは頻繁に食べるかな。温かいうちに食べようか?」
お米をよく食べると言う隣の国についてもっと聞きたい気持ちはあるけど、目の前に温かい料理があるなら冷めてしまう前に食べないと失礼だよね。
「うんっ!いただきます」
「いただきます」
添えられていたスプーンで、俺はお米の部分と豆の煮込み料理の部分を均等にすくい上げた。ワクワクしながら口に運べば、香草の風味の聞いたごはんに、香辛料で味付けされた少し辛味のある豆の煮込みが意外にもよく合っている。異国情緒漂う料理だけど、どこか懐かしいような不思議な味だ。
「アキト、どう?」
ほんの少し心配そうな顔をして俺を見つめていたハルに、俺はすぐに笑顔で答えた。
「美味しい!」
「気に入って良かったよ」
「ちょっと辛いんだね!」
「あ、もしかして辛いのは苦手だった?」
「ううん、むしろ辛いのは大好きなんだ!」
「そうなのか」
我が家はカレーは絶対辛口派だったし、その上辛味スパイスを追加してたぐらいだからね。そう思ったけど、これはさすがにこんな場所で口に出来る話じゃないな。俺はすぐに話題を変えた。
「それにしても、ハルは他の国にも詳しいんだね?」
「ああ、行った事はあるよ」
「そうなんだ?」
「仕事の関係で色々ね」
それは騎士としてなのか、冒険者としてなのか。俺はぼんやりとどっちだろうと考えながら、淡い水色の果実水を一口飲んでみた。爽やかな酸味と濃厚な甘みが、何だか癖になりそうな味だ。
「あ、果実水も美味しい…」
「これは隣国の特産の果物、ビオンを使ってるみたいだね」
「果実水まで隣の国の果物なんだ?」
「ああ、かなりこだわってる店みたいだな」
感心したように店内を見渡したハルは、壁に飾ってある絵や謎の仮面も隣国のものだよと教えてくれた。もしかしてここは、アンテナショップみたいなものなのかな。異国に行った気分で楽しめる料理店とか、そりゃあ間違いなく流行るよね。
しかも味もちゃんと美味しいし。食べれば食べるほど、食欲が湧いてくる気がする。
「たまには下調べ無しで店に入るのも良いもんだね」
「うん、おかげで美味しいごはんに出会えたし」
「あー…メロウにも感謝だな」
ちょっと嫌そうにしながらそう言ったハルに、俺は思わず声を上げて笑ってしまった。
折角だからこの後どこかに行こうかと誘ってくるハルの手をくいっと引いて、俺はまっすぐ黒鷹亭を目指して歩き続けた。
いくら自然な笑顔が出るようになったっていっても、ハルは間違いなく疲れてるはずだ。だから俺の前でぐらいは無理はして欲しくなかった。
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