生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
300 / 1,561

299.【ハル視点】安心できる場所

 どこまでも甘くて幸せで、そして恥ずかしい時間はあっという間に過ぎていった。アキトは俺の頭を飽きもせず撫で続け、俺はついに耐えかねて声を上げた。

「アキト、もうやめて…」
「嫌?」
「嫌じゃないけど、恥ずかしい…」

 愛されてるのは分かったからそろそろ勘弁して欲しい。アキトは悪戯っぽく笑って答えた。普段はあまり見せない子どもっぽい笑顔だった。

「また撫でさせてくれるなら止めるよ」

 口にされた言葉のあまりの可愛さに、俺はぐっと言葉に詰まった。また撫でたいのか、こんな年上の頭を。そんなの答えは一つに決まっている。

「分かった」
「じゃあ今日は終わりで」
「はー…アキト嬉しそうだね?」
「嬉しいからね」
「今度、俺もアキトにマッサージさせて欲しいな」

 お返しにマッサージとやらをして、ついでに頭も撫でさせてもらおう。そんな計画を考えながら提案すれば、アキトは即答で答えた。

「もちろん、いつでも歓迎だよ。頭も撫でてくれる?」

 笑顔で続けたアキトをまじまじと見つめて、俺はフハッと吹き出した。敵わないな。いくらでも撫でさせてもらうよ。

「アキトもおいで」

 手招きをしながら声をかければ、アキトは向かい側のベッドによじ登った。向かい合わせになるように寝転がったアキトに、そっと手を差し伸べる。アキトは嬉しそうに笑ってから、きゅっと軽く握り返してくれる。

 窓からはカーテン越しに太陽の光が入ってきていた。まだ夕方にもならない時間帯で、防音結界が無ければきっと外の活気に満ちた声が聞こえてるだろう。

「今日はこのまま寝ちゃおうか?」
「うん、良いね」
「あ、先に言っておくけど、今日もまだしないからね」

 一応言っておこうとそう告げれば、アキトは不服そうに視線を反らした。

「ああ、そっか…残念だけど、分かった」
「アキト…頼むから残念だけどとか言わないで…俺の理性が」

 思わず口から漏れた弱音に、アキトは楽し気に声を上げて笑いだす。本当にアキトと一緒にいると、今までの自分は何だったのかと思うほど幸せな気持ちになるな。

「ねえ、ハル。ガックラースとビルチェッティ、美味しかったね?」
「美味しかったね」
「あのお店また行きたいな」
「また行こう。行きたいお店がどんどん増えていくね」

 つまりそれは、俺達二人の思い出が増えていってるって事でもある。そう考えると感慨深いな。

「それにしても、ちゃんと料理の名前覚えたんだね?」
「あ、うん。美味しかったから覚えたよ」
「それじゃあ隣国の話でもしようか。もちろん眠くなったらすぐ寝て良いからね」

 俺はそう前置きをするとゆったりと話しだした。

「隣国はバーサ王国という国で、うちと同じ王政の国だね」

 隣国とこの国は同盟関係にあるから、出入りは比較的簡単にできる。俺は騎士としての任務でも冒険者としての依頼でも、何度も訪れた事がある国だ。

 騎士団もなかなか強いんだとは伝えたが、華奢な男性が大好きな騎士団団長の話は絶対にしない。アキトにはできれば会わせたくないな。

 アキトが気に入っていた果実水に使われていたビオンは、細長い果実なんだけど果皮がすっっっごく固い事も告げておいた。だからあの果物は剥くのがすごく大変で、ビオンを剥くだけの職業があると教えれば、アキトは大きく目を見開いて驚いていた。

 一応割るための道具はあるんだが、魔道具や魔法で割ると変質するから最後は腕力に頼るんだよな。

「それ、で…ラース…はね…」

 バーサ王国について話しながらも、じわじわと眠気に襲われていた。だめだ、まだ寝るなと自分に言い聞かせていたけれど、意識がどんどん遠ざかっていく。人前ではろくに眠れなかったなんて嘘みたいだな。

「ハル、話はまた明日にしよう?」

 囁くような声でそう告げられ、俺はゆっくりと口を閉ざした。明日。そうか明日にすれば良いのか。アキトは優しく微笑みながら俺を見つめていて、このまま眠ってしまうのが惜しいような気持ちになってしまった。

 それでも眠気には抗えずに、じわじわとまぶたが下りてきてしまう。

「おやすみ、ハル。良い夢を」
「お…すみ…キト」

 かろうじてそう答えると、俺はそのまま眠りに落ちていった。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

神獣様の森にて。

しゅ
BL
どこ、ここ.......? 俺は橋本 俊。 残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。 そう。そのはずである。 いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。 7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。