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301.指名依頼の依頼人
冒険者ギルドの地下の部屋は、今までも何度も利用させてもらってる勝手知ったる場所だ。ただ、案内無しで鍵だけを渡されたのは初めてだ。
「これって勝手に地下に入ってって良いの?」
恐る恐る尋ねれば、ハルは笑って頷いてから教えてくれた。
「うん。もし声をかけられてもこの鍵を見せれば大丈夫だからね」
なんでも鍵自体が通行証扱いになるんだって。ちゃんとしてるんだって感心しながら地下に向かったら、通りすがりのギルド職員さんにすぐに声をかけられた。ハルが鍵を見せたら、部屋は分かりますかと尋ねられただけで終わったんたけどね。
部屋に入った俺達は中央にあるテーブルには向かわず、壁際に置いてあった椅子に並んで腰を下ろした。
「ハルは指名依頼の人に心当りある?」
「いや、もしハロルドを知ってる人の依頼なら、メロウはそう言ってくれると思うんだ」
それもそうか。メロウさんは大事な事を隠すような人じゃないもんな。
「アキトは?」
「えー…と…俺に依頼しそうな人?」
この世界に来てから結構な時間が経った。それはもう色んな人に出会ったけど、護衛任務の指名をしそうな人なんていないと思うんだよね。
「全く思い浮かばない」
「でもまあ、メロウが問題が無いというなら信じて待つしかないね」
「表はともかく裏もってのが気になったんだけど」
さっきのメロウさんの言葉を思いだして尋ねてみたら、ハルは何も言わずににっこりと笑みを深くしただけだった。これは聞いたら駄目なやつか。
「護衛任務って、どこに行くんだろうね?」
「隣の領って場合もあれば、他国って場合もあるね」
「そうなの?」
そのまま護衛任務の事を色々教えてもらっていた俺は、不意に響いたノックの音に顔を上げた。無意識のうちに繋いでいた手をそっと離して、二人揃って立ち上がる。
「どうぞ」
「おまたせしました」
そう言って入ってきたメロウさんの後ろに続いたのは、二人組の男性だった。一人は整った顔立ちの優し気な男性で、もう一人は冒険者らしき逞しい体格の男性だった。
あれ、この二人ってもしかして。
「ハルさん、アキトさん、こちらが護衛任務の依頼人であるカーディさんとクリスさんです」
「こんにちは」
「「こんにちは」」
「あーっと、俺達の事、覚えてるかな?」
眉を下げながらそう尋ねてきた逞しい男性の質問に、俺はすぐに口を開いた。
「あの、黒鷹亭の食堂でお手伝いしてた方ですよね?」
「ああ、そうだ!覚えててくれたんだな」
「ギルドの酒場で注文をしてもらったのも覚えてます。お二人が新婚だって教えてもらいましたね」
ハルに伝わるようにとあえて言葉にすれば、ハルはなるほどと小さくひとつ頷いてくれた。無事に分かってもらえたみたいで良かった。
まだこの世界の事を何も知らなかった頃、この二人に出会って俺はこの世界の恋愛事情を知ったんだよな。同性同士なのに堂々としていて、新婚だって周りから祝福されてたのを見て羨ましく思ったのをすごくはっきり覚えてる。
「そこまで覚えてくれてたんですね」
優し気な男性も、嬉しそうに笑ってくれた。
「詳しいお話は座ってからにしましょうか?」
メロウさんがそう声をかけてくれたので、俺達はテーブルを挟んで向かい合わせに腰を下ろした。
「まずは自己紹介からですね。依頼側からどうぞ」
「では私から、ストファー魔道具店を営んでいます、クリスです」
「俺は元冒険者のカーディだ。今はストファー魔道具店で一緒に働いてる」
二人の自己紹介が終わると、メロウさんの視線が俺達の方に向いた。
「俺はCランク冒険者 前衛で戦士のハルだ」
「同じくCランク冒険者 後衛魔法使いのアキトです」
「はーもうCランクなのか…すごいな」
よく頑張ったなと褒めてくれるカーディさんは、何だか近所のお兄ちゃんって感じだ。
「お互いにまずは聞きたい事があればどうぞ」
進行役を買って出てくれたメロウさんの言葉に、すぐにハルが口を開いた。
「早速だが、俺達を指名した理由を教えてもらえるか?」
「理由…ですか」
「話せないならこの話は無かった事にしてもらいたい」
「ああ、いえ、話すのは問題無いんですが…」
クリスさんはそう言うと言葉を濁した。
「呆れられるかもしれません」
「これって勝手に地下に入ってって良いの?」
恐る恐る尋ねれば、ハルは笑って頷いてから教えてくれた。
「うん。もし声をかけられてもこの鍵を見せれば大丈夫だからね」
なんでも鍵自体が通行証扱いになるんだって。ちゃんとしてるんだって感心しながら地下に向かったら、通りすがりのギルド職員さんにすぐに声をかけられた。ハルが鍵を見せたら、部屋は分かりますかと尋ねられただけで終わったんたけどね。
部屋に入った俺達は中央にあるテーブルには向かわず、壁際に置いてあった椅子に並んで腰を下ろした。
「ハルは指名依頼の人に心当りある?」
「いや、もしハロルドを知ってる人の依頼なら、メロウはそう言ってくれると思うんだ」
それもそうか。メロウさんは大事な事を隠すような人じゃないもんな。
「アキトは?」
「えー…と…俺に依頼しそうな人?」
この世界に来てから結構な時間が経った。それはもう色んな人に出会ったけど、護衛任務の指名をしそうな人なんていないと思うんだよね。
「全く思い浮かばない」
「でもまあ、メロウが問題が無いというなら信じて待つしかないね」
「表はともかく裏もってのが気になったんだけど」
さっきのメロウさんの言葉を思いだして尋ねてみたら、ハルは何も言わずににっこりと笑みを深くしただけだった。これは聞いたら駄目なやつか。
「護衛任務って、どこに行くんだろうね?」
「隣の領って場合もあれば、他国って場合もあるね」
「そうなの?」
そのまま護衛任務の事を色々教えてもらっていた俺は、不意に響いたノックの音に顔を上げた。無意識のうちに繋いでいた手をそっと離して、二人揃って立ち上がる。
「どうぞ」
「おまたせしました」
そう言って入ってきたメロウさんの後ろに続いたのは、二人組の男性だった。一人は整った顔立ちの優し気な男性で、もう一人は冒険者らしき逞しい体格の男性だった。
あれ、この二人ってもしかして。
「ハルさん、アキトさん、こちらが護衛任務の依頼人であるカーディさんとクリスさんです」
「こんにちは」
「「こんにちは」」
「あーっと、俺達の事、覚えてるかな?」
眉を下げながらそう尋ねてきた逞しい男性の質問に、俺はすぐに口を開いた。
「あの、黒鷹亭の食堂でお手伝いしてた方ですよね?」
「ああ、そうだ!覚えててくれたんだな」
「ギルドの酒場で注文をしてもらったのも覚えてます。お二人が新婚だって教えてもらいましたね」
ハルに伝わるようにとあえて言葉にすれば、ハルはなるほどと小さくひとつ頷いてくれた。無事に分かってもらえたみたいで良かった。
まだこの世界の事を何も知らなかった頃、この二人に出会って俺はこの世界の恋愛事情を知ったんだよな。同性同士なのに堂々としていて、新婚だって周りから祝福されてたのを見て羨ましく思ったのをすごくはっきり覚えてる。
「そこまで覚えてくれてたんですね」
優し気な男性も、嬉しそうに笑ってくれた。
「詳しいお話は座ってからにしましょうか?」
メロウさんがそう声をかけてくれたので、俺達はテーブルを挟んで向かい合わせに腰を下ろした。
「まずは自己紹介からですね。依頼側からどうぞ」
「では私から、ストファー魔道具店を営んでいます、クリスです」
「俺は元冒険者のカーディだ。今はストファー魔道具店で一緒に働いてる」
二人の自己紹介が終わると、メロウさんの視線が俺達の方に向いた。
「俺はCランク冒険者 前衛で戦士のハルだ」
「同じくCランク冒険者 後衛魔法使いのアキトです」
「はーもうCランクなのか…すごいな」
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「お互いにまずは聞きたい事があればどうぞ」
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「ああ、いえ、話すのは問題無いんですが…」
クリスさんはそう言うと言葉を濁した。
「呆れられるかもしれません」
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