生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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302.三つの条件

 呆れるような依頼理由って例えば何だろう?

 考えても何も思いつかなかった俺は、思わず首を傾げた。向かい合わせのクリスさんとカーディさんがふっと笑ったからどうしたのかと思ったんだけど、隣を見たらハルも同じ角度で首を傾げてたよ。見事にシンクロしちゃったな。

「呆れる理由って、全く想像付かないんですけど…」
「今回の依頼をするにあたって、条件は三つありました」

 三つもあったのか。顔を見合わせてから、俺たちは揃って二人に向き直った。

「一つは俺がつけたのだな。俺の条件は冒険者ランクがCランク以上な事だ」

 カーディさんは爽やかに笑いながら続けた。

「これはまあ俺が元Cランクだったからだな。依頼をするのに、自分より下のランクの冒険者が護衛じゃあ困る。いざという時どっちが護衛か分からなくなるからな」

 カーディさんって、元Cランクだったのか。黒鷹亭の食堂で働いてた人の中でもかなり強そうだとは思ってたけど、まさかCランクだったとは。

「俺は放っておける性格じゃないから余計にな」

 苦笑しながら説明してくれたカーディさんの肩を、クリスさんはぽんぽんと優しく叩いた。相変わらず仲良さそうだな。この二人のやりとりを見て、同性を好きだって隠さなくて良いんだってびっくりしたんだよな。

「その条件は当然だと思う」

 ハルもカーディさんの条件に、すぐに理解を示した。

「もう一つが私のつけた条件なんですが…」

 そう話しかけたクリスさんは、途中で言葉を止めた。あ、多分これが呆れるような依頼理由ってやつだな。一体何が飛び出してくるのかと続きを待っているけれど、クリスさんは口をつぐんだままだ。

「…そんなに言い難い条件なのか?」

 思わずハルが尋ねれば、クリスさんはすみませんと言ってから口を開いた。

「私とカーディは新婚なんです」
「ええ、アキトから聞いてます」
「だから、その…恋人同士、または夫婦の冒険者を探していたんですよ」

 クリスさんの口からあまりに予想外の条件が飛び出して来て、俺は大きく目を見開いて固まった。呆れるとかよりも先に驚いちゃったんだよね。何でそんな条件になったんだろう。

「それは…何故?」

 あくまでも冷静なハルは、俺の疑問を代わりに口にしてくれた。ありがとう、さすがハルだ。ハルの質問には恥ずかしそうなクリスさんの横から、カーディさんが答えてくれた。

「自然と距離が近くなったりするから、嫉妬されたり見せつけられたって怒られても困るから…らしいぞ?」
「ああ、そういう意味なら、俺にも理解はできる」

 もしアキトと手を繋いでるだけで見せつけられたって言われたら、俺も許せないからなとハルはぽつりと呟いた。カーディさんとクリスさんはともかく、メロウさんがすごいびっくり顔でハルを見てるんだけど、気づいてる?

「…呆れないんですね?」

 クリスさんは俺達の反応に驚いたみたいだ。

「勝手に嫉妬して騒ぐやつはいるからな」
「俺もそう思います」
「…良かった」

 今度はカーディーさんが、クリスさんの頭をわしゃわしゃと撫でた。うん、仲良しだな。

「最後の条件は、信頼できる相手かどうかですね」
「信頼できる相手…?」
「アキトさんの人柄は知っていましたからね」

 クリスさんはにっこりと笑ってそう言ってくれたけど、俺はその説明には素直に納得できなかった。だってたった一回だけギルドの酒場で一緒になっただけの相手だよ?普通そんなふうに信頼できる?

「あの、一緒にお酒を飲んだぐらいしか面識が無いのに、俺の人柄って?」

 クリスさんは俺の質問に、楽し気に笑ってから話し始めた。

「あの時、アキトさんはカーディが黒鷹亭の食堂で配膳をしていた事を、ちゃんと覚えていましたよね」
「あ、はい」

 黒鷹亭の食堂のお手伝いは駆け出しの冒険者が多いから、強そうな人ってすごく印象に残ってたんだよね。

「アキトさんは、カーディの腕が治った事を喜んでくれたんですよ。腕が治ったんですね、良かったと」
「俺、そんな事言いましたっけ?」
「ええ、言いましたよ。おそらくハルさんなら分かるでしょう?」

 クリスさんはそう言うと艶やかに微笑んだ。

「俺は俺の事を気にかけてくれる人よりも、俺の愛する人を気にかけてくれる人に好感を抱きます」

 もちろん打算込みでのそういうのは、商人の勘で弾かせてもらいますけれどね?とクリスさんは意味深に笑ってみせた。そっと視線を動かして見てみれば、カーディさんは頬を赤く染めている。こんな熱烈な告白されたら、そりゃあそうなるよね。

「ああ、その気持ちはよく分かるな」

 カーディさん愛されてるなとニヤニヤしながら見守ってた俺は、不意打ちで入ったハルからの同意を受けて頬を真っ赤に染めた。知ってはいたけどさ、本当に俺も愛されてるんだな。
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