生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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308.【ハル視点】アキトの補助魔法

 アキトとパーティーを組んで依頼を受けるようになってから、早くも数日が過ぎた。

 騎士ならば後衛を守るのは当然の事だとずっと思っていたけれど、アキトが後ろにいると気合の入り方が違う。何があっても守り抜きたいと思える相手がいるのは、すごく幸せな事だとしみじみと実感する。

 ずっとソロだったアキトが俺とパーティーを組んだという話は、既にトライプールの冒険者の間では噂になっているようだ。

 ソロの相手は勧誘し難いが、パーティーに入ったなら自分達にも可能性があるかもしれない。同じパーティーに入るか、もしくは引き抜いてしまえばアキトとの距離を縮められる。そんな考えで近づいてくる奴らがいてもおかしくない。

――アキトとパーティーを組んだハルって奴はかなりの凄腕で、しかもアキトを溺愛しているから、手を出したらどうなるか分からない。

 レーブンがこっそりと教えてくれた噂はそんな内容だった。これは間違いなくメロウが噂の出所だろうな。暴走しそうな一部の冒険者への牽制のために流してくれたんだろう。次に会ったら、礼を言わないとな。

 ちらちらとアキトを見る冒険者が、俺と視線が合うなり目を反らすのを何度か繰り返しながら街中を歩いていく。恋人の特権として、もちろん手はしっかりと繋いだままだ。見せつけやがってと呟いてるやつもいたが、そんな奴らは放っておくに限る。

 俺の幸せな時間を邪魔しないで欲しい。



 アキトが急に補助魔法を使えるようになった時は、俺も心底驚いた。

 その時戦っていたノアールベアの速度が急にぐんっと落ちて、その瞬間ふわりとアキトの魔力を感じたんだ。そのおかげでノアールベアはすぐに倒す事ができた。

 アキトは土魔法を使うべく魔力を練り上げながら、魔物の速度が落ちたら良いのにとただ考えただけだと言う。

 補助魔法を使える人はそれなりにいるが、B級のノアールベアにまで効く魔法となるとかなり人数はしぼられるだろう。唯一の救いは、かけられた相手にしか魔法の強度がバレないという点だろうか。

 その場での実験を提案してみれば、アキトはすぐに俺の強化までできるようになった。

「これでハルの役に立てるね!」

 笑顔でそんな事を口にしたアキトに、俺は真剣な声で語りかける。

「アキトは一緒にいてくれるだけで俺を幸せにしてくれてるから、補助魔法が無くても常に役に立ってるよ」

 だからそんな事を言わないでと言いながらも、脳内ではどうやってアキトを守りきるかを考えていた。補助魔法を使う人は、一番最初に狙われるようになってしまう。ある程度の知能のある相手なら、まっさきに狙われるだろう。

「あ、でもアキトは詠唱をしないから…魔力が感知できる魔物以外には狙われないんじゃないかな」
「それなら、こっそり使って確認してみようか?」
「ああ、それは良いね」

 結果、アキトの補助魔法はCランクの魔物には感知されなかった。ノアールベアの反応を見る前に倒してしまったのが悔やまれるが、Bランク以上の魔物の反応はこれからゆっくりと確認していけば良い。

「アキト、補助魔法が使える事は人に話しても良いけど、強度については分からないとごまかしてくれる?」
「強度?」
「どのくらいの強度なのかとか、どの魔物に効いたかとかだね」
「そっか、分かった」



 それから、アキトは補助魔法に慣れるべく色んなことを試していた。

 腕力強化の補助魔法は、どうやらかけられる側にもコツがいるようだ。アキトの魔力を感じたらどの能力が強化されたかを察知して、自分の動きを変える必要がある。その試行錯誤はなかなかに楽しかった。

「アキトさん、ハルさん、こんばんは」

 依頼の報酬を待っていた俺達に近づいてきたメロウは、にっこりとわざとらしい笑みを浮かべて声をかけてきた。

「こんばんは。メロウさん」
「こんばんは」
「お二人に護衛任務の指名が来ているんですが…いかがですか?」

 あまりに唐突なその言葉に、アキトと俺は揃って首を傾げた。

「護衛任務って…一体誰のだ?」
「今回は指名条件がいくつかあるので、説明は本人が行いたいとの事ですが…今ならすぐに連れてこれますが」

 急に指名依頼と言われても、反応に困る。アキトは通り名こそ有名だがこれといった実績があるわけでもないし、俺もハルの名ではむしろ目立たないように気をつけてきた身だ。一体誰がと聞いて名前が出ないって事は、騎士団関係や貴族関係では無いんだろうが。

 俺はちらりとメロウの顔を見つめながら尋ねた。

「……メロウから見て、依頼人はどうだ?」

 アキトのためにあの噂を流してくれたメロウの、依頼人の感想を知りたかった。

「問題は一切無いですよ。表も…裏もね」

 さらりと裏もと言い切るのなら、問題は無いんだろうな。

「そうか、それなら」

 言葉を切った俺は、アキトの方をちらりと見て尋ねた。

「…説明ぐらいは聞いても良いかな?」
「うん、誰が指名してくれたのか知りたいし」
「当然ですが納得が行かなければ、受けなくても問題はありませんからね?」

 メロウはアキトに向けて優しくそう言うと、地下のこの部屋で待っていて下さいと鍵を一つ手渡してから去っていった。
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