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310.【ハル視点】条件と情報のすり合わせ
呆れるような依頼理由とは一体何だろう?
特に何も思いつかなかった俺は、思わず首を傾げた。向かいの二人は、俺達の反応を見てふふと笑みを浮かべている。どうやらアキトも隣で首を傾げていたようで、俺たちの動きがぴったりと一致していたみたいだ。
「呆れる理由って、全く想像付かないんですけど…」
アキトがそう口を開けば、クリスさんは指を三本立ててみせた。
「今回の依頼をするにあたって、条件は三つありました」
「一つは俺がつけたのだな。俺の条件は冒険者ランクがCランク以上な事だ」
カーディさんは爽やかに笑いながら続けた。
「これはまあ俺が元Cランクだったからだな。依頼をするのに、自分より下のランクの冒険者が護衛じゃあ困る。いざという時どっちが護衛か分からなくなるからな」
当然の条件だな。自分より弱い護衛を雇う意味なんて無いからな。
「俺は放っておける性格じゃないから余計にな」
苦笑しながらも説明をしてくれていたカーディさんの肩を、クリスさんはぽんぽんと優しく叩いた。ギルドの酒場で見た時から思っていたが、相変わらず仲が良い二人だな。
「その条件は当然だと思う」
「もう一つが私のつけた条件なんですが…」
そう話しかけたクリスさんは、途中でぴたりと言葉を止めた。一体どんな言葉が飛び出してくるのかと身構えていたけれど、クリスさんはまだ黙り込んだままだ。
「…そんなに言い難い条件なのか?」
俺が恐る恐るそう尋ねてみれば、クリスさんはすみませんと謝ってから口を開いた。
「私とカーディは新婚なんです」
「ええ、アキトから聞いてます」
「だから、その…恋人同士、または夫婦の冒険者を探していたんですよ」
「それは…何故?」
尋ねながらちらりと隣を見てみれば、びっくりしたのかアキトは大きく目を見開いて固まっていた。余程予想外の条件だったんだろうな。まあ、俺もこんな条件をつけられたのはさすがに初めてだけど。
俺の質問にはカーディさんが代わりに答えてくれた。
「自然と距離が近くなったりするから、嫉妬されたり見せつけられたって怒られても困るから…らしいぞ?」
「ああ、そういう意味なら、俺にも理解はできる」
「え…?」
「もし無関係な周りの奴から、アキトと手を繋いでるだけで見せつけられたなんて言われたら、俺も許せないからな…」
カーディさんとクリスさん、更にはメロウまでがびっくり顔で俺を見つめてくる。メロウの顔にはお前は本当にあのハルかと書いてある気がするな。
「…呆れないんですね?」
クリスさんは俺達の反応に驚いたみたいだ。
「勝手に嫉妬して騒ぐやつはいるからな」
「俺もそう思います」
「…良かった」
今度はカーディーさんが、クリスさんの頭をわしゃわしゃと撫でている。確かに今恋人がいない人や、片思いをこじらせている人が見たら、見せつけてると騒ぐかもしれないぐらいには触れ合いが多いな。
「最後の条件は、信頼できる相手かどうかですね」
「信頼できる相手…?」
「アキトさんの人柄は知っていましたからね」
笑顔のクリスさんの言葉に、アキトは不審そうに眉をひそめた。
「あの、一緒にお酒を飲んだぐらいしか面識が無いのに、俺の人柄って?」
確かにあの時の会話だけで人柄とまで言われるのは、俺も少し納得がいかなかった。クリスさんはアキトの質問に、楽し気に笑ってから話し始めた。
「あの時、アキトさんはカーディが黒鷹亭の食堂で配膳をしていた事を、ちゃんと覚えていましたよね」
「あ、はい」
「それにあの時アキトさんは、カーディの腕が治った事を喜んでくれたんですよ。腕が治ったんですね、良かった――と」
ああ、確かにそう言っていた気がするな。ああいう瞬間に出る言葉には、どうしても人柄や性格が現れるものだ。アキトの裏表の無い素直な性格を、クリスさんはそこで感じ取ったと言う事か。
「俺、そんな事言いましたっけ?」
きょとんとしている辺りが、すごくアキトらしいな。
「ええ、言いましたよ。おそらくハルさんなら分かるでしょう?」
クリスさんはそう言うと艶やかに微笑んだ。
「俺は俺の事を気にかけてくれる人よりも、俺の愛する人を気にかけてくれる人に好感を抱きます」
その言葉に俺はニヤリと笑ってしまった。まさに俺もクリスさんと同じだな。俺の事を気にかけてくれる人よりも、アキトを気にかけてくれる人に好感を抱いてしまう。自分よりも大事な相手なんだから当然か。
「ああ、その気持ちはよく分かるな」
「あと、私の肩書を聞いても態度を変えなかったのも、珍しいですから」
アキトはきまずそうに視線を反らして黙り込んでいる。あの時アキトはストファー魔道具店自体を知らなかったからな。まあもし知っていたとしても、態度が変わるようなアキトではないか。
「ああ、アキトは肩書で人を判断しないからな」
「私がサブマスと知っても態度は変わらなかったですね、アキトさんは」
「そうなんですか?さすがですね」
メロウにまでそう口添えされる辺りが、アキトのすごさだよな。
「アキトはともかく俺とは面識はないわけだが、そこは良いのか?」
これは絶対に聞いておきたいと口にすれば、クリスさんはあっさりと答えてくれた。
「自分が信頼している相手の信頼している相手なら、私は信じてみる事にしてるんですよ」
「信頼している相手…というのは聞いても大丈夫か?」
「ええ、もちろん。メロウさんとレーブンさんですよ」
「ああ、レーブンにも聞いたのか…ちなみに俺の身分については?」
「今のあなたはただの冒険者。先ほどハルさんと名乗られましたよね?以前の話は必要ないと思いましたが違いますか?」
やっぱりクリスさんもハロルドとしての俺を知ってはいるか。ケビンから奪い取――譲ってもらったあの防音結界も、ストファー魔道具店のものだからな。知っていてもおかしく無いとは思っていた。
ちらりと視線を動かしてみれば、カーディさんは不思議そうな表情で俺達のやりとりを見守っていた。なるほど、こちらは知らないって事だな。
「いや、それで問題ない。それで、今回の目的地はどこだ?」
「目的地はイーシャル領で、目的は私の親戚に会うのと商売の材料の購入です」
考える間を与えないように質問を続けても、クリスさんは少しも怯まずにすらすらと答えてくる。
特に隠し事がある様子も無いし、依頼人としても信頼できる相手のようだな。
特に何も思いつかなかった俺は、思わず首を傾げた。向かいの二人は、俺達の反応を見てふふと笑みを浮かべている。どうやらアキトも隣で首を傾げていたようで、俺たちの動きがぴったりと一致していたみたいだ。
「呆れる理由って、全く想像付かないんですけど…」
アキトがそう口を開けば、クリスさんは指を三本立ててみせた。
「今回の依頼をするにあたって、条件は三つありました」
「一つは俺がつけたのだな。俺の条件は冒険者ランクがCランク以上な事だ」
カーディさんは爽やかに笑いながら続けた。
「これはまあ俺が元Cランクだったからだな。依頼をするのに、自分より下のランクの冒険者が護衛じゃあ困る。いざという時どっちが護衛か分からなくなるからな」
当然の条件だな。自分より弱い護衛を雇う意味なんて無いからな。
「俺は放っておける性格じゃないから余計にな」
苦笑しながらも説明をしてくれていたカーディさんの肩を、クリスさんはぽんぽんと優しく叩いた。ギルドの酒場で見た時から思っていたが、相変わらず仲が良い二人だな。
「その条件は当然だと思う」
「もう一つが私のつけた条件なんですが…」
そう話しかけたクリスさんは、途中でぴたりと言葉を止めた。一体どんな言葉が飛び出してくるのかと身構えていたけれど、クリスさんはまだ黙り込んだままだ。
「…そんなに言い難い条件なのか?」
俺が恐る恐るそう尋ねてみれば、クリスさんはすみませんと謝ってから口を開いた。
「私とカーディは新婚なんです」
「ええ、アキトから聞いてます」
「だから、その…恋人同士、または夫婦の冒険者を探していたんですよ」
「それは…何故?」
尋ねながらちらりと隣を見てみれば、びっくりしたのかアキトは大きく目を見開いて固まっていた。余程予想外の条件だったんだろうな。まあ、俺もこんな条件をつけられたのはさすがに初めてだけど。
俺の質問にはカーディさんが代わりに答えてくれた。
「自然と距離が近くなったりするから、嫉妬されたり見せつけられたって怒られても困るから…らしいぞ?」
「ああ、そういう意味なら、俺にも理解はできる」
「え…?」
「もし無関係な周りの奴から、アキトと手を繋いでるだけで見せつけられたなんて言われたら、俺も許せないからな…」
カーディさんとクリスさん、更にはメロウまでがびっくり顔で俺を見つめてくる。メロウの顔にはお前は本当にあのハルかと書いてある気がするな。
「…呆れないんですね?」
クリスさんは俺達の反応に驚いたみたいだ。
「勝手に嫉妬して騒ぐやつはいるからな」
「俺もそう思います」
「…良かった」
今度はカーディーさんが、クリスさんの頭をわしゃわしゃと撫でている。確かに今恋人がいない人や、片思いをこじらせている人が見たら、見せつけてると騒ぐかもしれないぐらいには触れ合いが多いな。
「最後の条件は、信頼できる相手かどうかですね」
「信頼できる相手…?」
「アキトさんの人柄は知っていましたからね」
笑顔のクリスさんの言葉に、アキトは不審そうに眉をひそめた。
「あの、一緒にお酒を飲んだぐらいしか面識が無いのに、俺の人柄って?」
確かにあの時の会話だけで人柄とまで言われるのは、俺も少し納得がいかなかった。クリスさんはアキトの質問に、楽し気に笑ってから話し始めた。
「あの時、アキトさんはカーディが黒鷹亭の食堂で配膳をしていた事を、ちゃんと覚えていましたよね」
「あ、はい」
「それにあの時アキトさんは、カーディの腕が治った事を喜んでくれたんですよ。腕が治ったんですね、良かった――と」
ああ、確かにそう言っていた気がするな。ああいう瞬間に出る言葉には、どうしても人柄や性格が現れるものだ。アキトの裏表の無い素直な性格を、クリスさんはそこで感じ取ったと言う事か。
「俺、そんな事言いましたっけ?」
きょとんとしている辺りが、すごくアキトらしいな。
「ええ、言いましたよ。おそらくハルさんなら分かるでしょう?」
クリスさんはそう言うと艶やかに微笑んだ。
「俺は俺の事を気にかけてくれる人よりも、俺の愛する人を気にかけてくれる人に好感を抱きます」
その言葉に俺はニヤリと笑ってしまった。まさに俺もクリスさんと同じだな。俺の事を気にかけてくれる人よりも、アキトを気にかけてくれる人に好感を抱いてしまう。自分よりも大事な相手なんだから当然か。
「ああ、その気持ちはよく分かるな」
「あと、私の肩書を聞いても態度を変えなかったのも、珍しいですから」
アキトはきまずそうに視線を反らして黙り込んでいる。あの時アキトはストファー魔道具店自体を知らなかったからな。まあもし知っていたとしても、態度が変わるようなアキトではないか。
「ああ、アキトは肩書で人を判断しないからな」
「私がサブマスと知っても態度は変わらなかったですね、アキトさんは」
「そうなんですか?さすがですね」
メロウにまでそう口添えされる辺りが、アキトのすごさだよな。
「アキトはともかく俺とは面識はないわけだが、そこは良いのか?」
これは絶対に聞いておきたいと口にすれば、クリスさんはあっさりと答えてくれた。
「自分が信頼している相手の信頼している相手なら、私は信じてみる事にしてるんですよ」
「信頼している相手…というのは聞いても大丈夫か?」
「ええ、もちろん。メロウさんとレーブンさんですよ」
「ああ、レーブンにも聞いたのか…ちなみに俺の身分については?」
「今のあなたはただの冒険者。先ほどハルさんと名乗られましたよね?以前の話は必要ないと思いましたが違いますか?」
やっぱりクリスさんもハロルドとしての俺を知ってはいるか。ケビンから奪い取――譲ってもらったあの防音結界も、ストファー魔道具店のものだからな。知っていてもおかしく無いとは思っていた。
ちらりと視線を動かしてみれば、カーディさんは不思議そうな表情で俺達のやりとりを見守っていた。なるほど、こちらは知らないって事だな。
「いや、それで問題ない。それで、今回の目的地はどこだ?」
「目的地はイーシャル領で、目的は私の親戚に会うのと商売の材料の購入です」
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