生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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315.街道を歩いて

 四人揃った俺達は、すぐに南大門へと向かった。

 辿り着いた南大門はまだ人通りはまばらだったけれど、衛兵さん達は既に真剣な顔で行き来を見張っていた。こんな朝早くからお仕事お疲れ様です。心の中でそう声をかけながら、俺はいつも通り何事も無く大門を通過した。

「そういえば、今回はどの道で行くんだ?」

 街道に出るなりハルはクリスさんにそう尋ねた。

「まずはナルイット領へと徒歩で抜けようかと思ってます」
「そうか、じゃあこっちの道だな。アキト、後ろは頼んだよ」
「うん、ハルも前よろしくね」

 昨日のうちに相談を終えていた俺達は、すぐに前と後ろに分かれた。今回は護衛任務なんだから、カーディさんとクリスさんを挟むのが一番安全だろうって話になったんだ。

 ハルと離れて歩くのはちょっとだけ、いやだいぶ寂しいけどこればっかりは仕方ない。

 そう思ってたんだけどね。

「あ、言うのを忘れていましたね。お二人とも並んで前を歩いてもらって良いですよ」
「え?」
「この辺りはそうそう強い魔物もいませんし」

 クリスさんはそう言うとにっこりと笑ってみせた。

「しかし…」
「ああ、俺も背後は警戒しておくから大丈夫だぞ」
「でも俺達護衛なのに…」

 慌てて俺も声をかけたけれど、二人は顔を見合わせてからふわりと笑った。

「恋人同士を離れて歩かせて、私たちは隣合わせで歩くって言うのは嫌なので」
「そうそう、そんな事になったら俺達の方が気を遣うだろ?」
「…分かった」

 気配探知はきちんとかけておくと約束してから、ハルは俺の方をちらりと見た。

「じゃあアキト、いつも通り隣を歩いてくれる?」
「うん、嬉しい!」

 思わず本音がこぼれたけど、クリスさんとカーディさんは微笑ましそうに笑ってくれた。



 今日は珍しく曇り空だ。でもそのおかげか、気温はそこまで上がっていない。寒くもなく暑くもなく、歩いて移動にはぴったりの天気だな。

「ところでさ、ハル、ナルイット領ってどんな所?」

 実はさっき名前が出た時から気になってたんだよね。

「ナルイット領と言えば、やっぱり大きな川が流れてるのが一番の特徴かな」
「川?」
「ああ、トライプールの川とは比べ物にならないほど大きな川だよ。レーウェ川って言うんだけどね」
「レーウェ川か、じゃあ船とかもあったりするの?」

 ワクワクして尋ねれば、ハルはふふと楽し気に笑って続けた。

「多分アキトが想像してるよりも、立派な船がたくさんあると思うよ」

 なんでも漁のための船や、人を運ぶための乗合船、物資の運搬に使われる船に、移動のための貸出船なんてものまであるんだそうだ。 

 ハルによると、その川にある船の係留地はちょっとした観光名所になってるんだって。大きな川に並ぶ立派な船かぁ。ちょっと想像できないな。遠くからでも見れたら良いなとぼんやり思っていたら、クリスさんが後ろから話しかけてきた。

「明日はちょうどそのレーウェ川を目指す予定ですよ」
「え、そうなんですか?」

 じゃあその川の様子は見れるって事だ。ちょっと嬉しいなと考えていた俺に、クリスさんは悪戯っぽい笑みを浮かべて続けた。

「貸出船も、ばっちり予約済みですからね」
「え、そうなのか?いつの間に?」

 カーディさんも驚いた様子で尋ねてるから、クリスさんが内緒で用意してたって事か。ハルがこそっと教えてくれたんだけど、貸出船の予約は取りにくいので有名なんだって。

「興味あるって言ってたでしょう?」
「俺はいつも乗合しか使ってなかったから、そりゃあ興味はあるけど…予約を取るの大変だっただろ?」
「カーディのためなら何て事無いですよ」

 きっぱりと断言したクリスさんは、俺達の方を見てニヤリと笑みを浮かべた。

「ああ、もちろん私たちの部屋と貴方たちの部屋で、二部屋押さえてありますよ」
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