317 / 1,561
316.のんびりと進む街道
貸出船って聞いた時は船をまるごと借りて乗るんだと思ったんだけど、部屋って事は俺が想像してたのとは違うみたいだな。
部屋を押さえるって事は、豪華なフェリーみたいな感じなのかな?ぼんやりと想像する事はできたけど、乗った事はないから俺にはそのすごさは分からない。
でもハルが目を見張ってたから、きっとすごい事なんだろうな。
「俺達の分の部屋まで…?本当に良いのか?」
「ええ、もちろんです」
あっさりと笑顔で答えたクリスさんに、ハルはすぐに言葉を続けた。
「分かった。予約は感謝するが、俺達のための部屋の料金は俺達に払わせて欲しい」
「いいえ、依頼の間の宿はこちらが持つと条件で合意しましたよね?」
「しかしこれは特別すぎるだろう」
「いえ、もしこれで支払ってもらったら、私はよりによってメロウさんの前でした契約に違反する事になりますから…」
それまで食い下がっていたハルも、ああそれはなと何故か納得したみたいだ。
「分かった、じゃあ今回は甘える」
ハルの言葉に、クリスさんはふうと肩の力を抜いた。
「諦めてくれて良かったです。恐ろしい事になるかと思って焦りました」
恐ろしい事って何だろう。メロウさん、あんなに優しい人なのにな。
「それで、予約はいつから取ってるんだ?」
「明日の昼までに辿り着けば良いようにしてあります」
「それなら時間に余裕はあるか」
「ええ、のんびりと行きましょう」
途中で休憩も挟みながら四人で話しつつ街道を歩いて行くと、あっという間にトライプール領とナルイット領との境界に辿り着いた。
境界と言っても、大きな看板が一つ立ってるだけだったけどね。こっちがトライプール領でこっちがナルイット領だよって説明が書いてあるだけのごくシンプルな看板だった。
まじまじとその看板を見ていると、ハルが笑って声をかけてきた。
「普通の領の境界と違いすぎてびっくりした?」
え、これって普通の領の境界とは違うんだ。比較対象が無いから分からなかったけど、俺がうっかり変な事を言う前にってハルは声をかけてくれたんだ。異世界人だって事を隠してるのに、この世界の事を知らなすぎるってのは怪しいもんな。
「うん、そうなんだ」
とりあえずハルの発言に乗ってそう答えてみれば、ハルは視線だけでよくできましたと褒めてくれた。今日は撫でてくれないんだって咄嗟に思ってしまった俺は、随分と甘えたになった気がするな。
「普通は街道沿いに簡易の検問ぐらいはあるけど、ここは領主同士の仲が良いからね」
「え、領主さんの仲の良さが関係あるの?」
思わずそう尋ねてしまったけど、カーディさんもそうなのかって言ってるから大丈夫かな。
「すごく関係あるんですよ…」
遠い目をしたクリスさんによると、領主同士の仲が悪いからと壁を巡らせた場所や、すごく厳しい検問をする場所もあるんだそうだ。
「商売でも出来れば近づきたくない場所なんですが、どうしても行かないと駄目な事があって…苦労しましたねぇ」
「それ、俺は知らないぞ?」
「カーディは長期の護衛依頼でトライプールにいなかったですから」
「あー…あの頃かぁ」
思い出話が始まった二人の邪魔をしないように、俺はハルにこっそりと話しかけた。
「ハル、ありがとね」
ハルならきっと、さっきの気づかいへのお礼だって気づいてくれるだろう。そう期待した感謝の言葉に、ハルは優しく微笑んでくれた。
「ああ、どうしたしまして」
「あーちょっと腹が減ってきたな」
「色々買ってはありますけど…きちんとした食事は無いですよ」
「火が起こせたら作れるんだけどな」
そんな会話が後ろから聞こえてきた俺は、慌てて振り返った。
「あの!レーブンさんから四人で食えって包みを預かってます!」
「え、そうなんですか?」
クリスさんは嬉しそうにしながらも、今度お礼に行かないとなと呟いていた。カーディさんはその隣で、満面の笑みを浮かべて叫んだ。
「おお!久しぶりのレーブンさんの飯か!!」
「美味しいですよねーレーブンさんのご飯」
「上手いよなぁ。洗練されてるのに、どことなく懐かしい雰囲気もあるんだよなぁ」
「分かります!」
思わずカーディさんと二人で、レーブンさんのご飯の美味しさで盛り上がってしまったよね。ハルとクリスさんは微笑ましそうに俺達のやりとりを見守っていた。
「確か、この先の森を右に入った辺りに休憩所がある筈だ」
「ああ、ありましたね」
「じゃあそこで昼食にしようか」
「「賛成!」」
見事にハモッた俺とカーディさんは、顔を見合わせて笑い合った。
部屋を押さえるって事は、豪華なフェリーみたいな感じなのかな?ぼんやりと想像する事はできたけど、乗った事はないから俺にはそのすごさは分からない。
でもハルが目を見張ってたから、きっとすごい事なんだろうな。
「俺達の分の部屋まで…?本当に良いのか?」
「ええ、もちろんです」
あっさりと笑顔で答えたクリスさんに、ハルはすぐに言葉を続けた。
「分かった。予約は感謝するが、俺達のための部屋の料金は俺達に払わせて欲しい」
「いいえ、依頼の間の宿はこちらが持つと条件で合意しましたよね?」
「しかしこれは特別すぎるだろう」
「いえ、もしこれで支払ってもらったら、私はよりによってメロウさんの前でした契約に違反する事になりますから…」
それまで食い下がっていたハルも、ああそれはなと何故か納得したみたいだ。
「分かった、じゃあ今回は甘える」
ハルの言葉に、クリスさんはふうと肩の力を抜いた。
「諦めてくれて良かったです。恐ろしい事になるかと思って焦りました」
恐ろしい事って何だろう。メロウさん、あんなに優しい人なのにな。
「それで、予約はいつから取ってるんだ?」
「明日の昼までに辿り着けば良いようにしてあります」
「それなら時間に余裕はあるか」
「ええ、のんびりと行きましょう」
途中で休憩も挟みながら四人で話しつつ街道を歩いて行くと、あっという間にトライプール領とナルイット領との境界に辿り着いた。
境界と言っても、大きな看板が一つ立ってるだけだったけどね。こっちがトライプール領でこっちがナルイット領だよって説明が書いてあるだけのごくシンプルな看板だった。
まじまじとその看板を見ていると、ハルが笑って声をかけてきた。
「普通の領の境界と違いすぎてびっくりした?」
え、これって普通の領の境界とは違うんだ。比較対象が無いから分からなかったけど、俺がうっかり変な事を言う前にってハルは声をかけてくれたんだ。異世界人だって事を隠してるのに、この世界の事を知らなすぎるってのは怪しいもんな。
「うん、そうなんだ」
とりあえずハルの発言に乗ってそう答えてみれば、ハルは視線だけでよくできましたと褒めてくれた。今日は撫でてくれないんだって咄嗟に思ってしまった俺は、随分と甘えたになった気がするな。
「普通は街道沿いに簡易の検問ぐらいはあるけど、ここは領主同士の仲が良いからね」
「え、領主さんの仲の良さが関係あるの?」
思わずそう尋ねてしまったけど、カーディさんもそうなのかって言ってるから大丈夫かな。
「すごく関係あるんですよ…」
遠い目をしたクリスさんによると、領主同士の仲が悪いからと壁を巡らせた場所や、すごく厳しい検問をする場所もあるんだそうだ。
「商売でも出来れば近づきたくない場所なんですが、どうしても行かないと駄目な事があって…苦労しましたねぇ」
「それ、俺は知らないぞ?」
「カーディは長期の護衛依頼でトライプールにいなかったですから」
「あー…あの頃かぁ」
思い出話が始まった二人の邪魔をしないように、俺はハルにこっそりと話しかけた。
「ハル、ありがとね」
ハルならきっと、さっきの気づかいへのお礼だって気づいてくれるだろう。そう期待した感謝の言葉に、ハルは優しく微笑んでくれた。
「ああ、どうしたしまして」
「あーちょっと腹が減ってきたな」
「色々買ってはありますけど…きちんとした食事は無いですよ」
「火が起こせたら作れるんだけどな」
そんな会話が後ろから聞こえてきた俺は、慌てて振り返った。
「あの!レーブンさんから四人で食えって包みを預かってます!」
「え、そうなんですか?」
クリスさんは嬉しそうにしながらも、今度お礼に行かないとなと呟いていた。カーディさんはその隣で、満面の笑みを浮かべて叫んだ。
「おお!久しぶりのレーブンさんの飯か!!」
「美味しいですよねーレーブンさんのご飯」
「上手いよなぁ。洗練されてるのに、どことなく懐かしい雰囲気もあるんだよなぁ」
「分かります!」
思わずカーディさんと二人で、レーブンさんのご飯の美味しさで盛り上がってしまったよね。ハルとクリスさんは微笑ましそうに俺達のやりとりを見守っていた。
「確か、この先の森を右に入った辺りに休憩所がある筈だ」
「ああ、ありましたね」
「じゃあそこで昼食にしようか」
「「賛成!」」
見事にハモッた俺とカーディさんは、顔を見合わせて笑い合った。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。