生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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316.のんびりと進む街道

 貸出船って聞いた時は船をまるごと借りて乗るんだと思ったんだけど、部屋って事は俺が想像してたのとは違うみたいだな。

 部屋を押さえるって事は、豪華なフェリーみたいな感じなのかな?ぼんやりと想像する事はできたけど、乗った事はないから俺にはそのすごさは分からない。

 でもハルが目を見張ってたから、きっとすごい事なんだろうな。

「俺達の分の部屋まで…?本当に良いのか?」
「ええ、もちろんです」

 あっさりと笑顔で答えたクリスさんに、ハルはすぐに言葉を続けた。

「分かった。予約は感謝するが、俺達のための部屋の料金は俺達に払わせて欲しい」
「いいえ、依頼の間の宿はこちらが持つと条件で合意しましたよね?」
「しかしこれは特別すぎるだろう」
「いえ、もしこれで支払ってもらったら、私はよりによってメロウさんの前でした契約に違反する事になりますから…」

 それまで食い下がっていたハルも、ああそれはなと何故か納得したみたいだ。

「分かった、じゃあ今回は甘える」

 ハルの言葉に、クリスさんはふうと肩の力を抜いた。

「諦めてくれて良かったです。恐ろしい事になるかと思って焦りました」

  恐ろしい事って何だろう。メロウさん、あんなに優しい人なのにな。

「それで、予約はいつから取ってるんだ?」
「明日の昼までに辿り着けば良いようにしてあります」
「それなら時間に余裕はあるか」
「ええ、のんびりと行きましょう」



 途中で休憩も挟みながら四人で話しつつ街道を歩いて行くと、あっという間にトライプール領とナルイット領との境界に辿り着いた。

 境界と言っても、大きな看板が一つ立ってるだけだったけどね。こっちがトライプール領でこっちがナルイット領だよって説明が書いてあるだけのごくシンプルな看板だった。

 まじまじとその看板を見ていると、ハルが笑って声をかけてきた。

「普通の領の境界と違いすぎてびっくりした?」

 え、これって普通の領の境界とは違うんだ。比較対象が無いから分からなかったけど、俺がうっかり変な事を言う前にってハルは声をかけてくれたんだ。異世界人だって事を隠してるのに、この世界の事を知らなすぎるってのは怪しいもんな。

「うん、そうなんだ」

 とりあえずハルの発言に乗ってそう答えてみれば、ハルは視線だけでよくできましたと褒めてくれた。今日は撫でてくれないんだって咄嗟に思ってしまった俺は、随分と甘えたになった気がするな。

「普通は街道沿いに簡易の検問ぐらいはあるけど、ここは領主同士の仲が良いからね」
「え、領主さんの仲の良さが関係あるの?」

 思わずそう尋ねてしまったけど、カーディさんもそうなのかって言ってるから大丈夫かな。

「すごく関係あるんですよ…」

 遠い目をしたクリスさんによると、領主同士の仲が悪いからと壁を巡らせた場所や、すごく厳しい検問をする場所もあるんだそうだ。

「商売でも出来れば近づきたくない場所なんですが、どうしても行かないと駄目な事があって…苦労しましたねぇ」
「それ、俺は知らないぞ?」
「カーディは長期の護衛依頼でトライプールにいなかったですから」
「あー…あの頃かぁ」

 思い出話が始まった二人の邪魔をしないように、俺はハルにこっそりと話しかけた。

「ハル、ありがとね」

 ハルならきっと、さっきの気づかいへのお礼だって気づいてくれるだろう。そう期待した感謝の言葉に、ハルは優しく微笑んでくれた。

「ああ、どうしたしまして」
「あーちょっと腹が減ってきたな」
「色々買ってはありますけど…きちんとした食事は無いですよ」
「火が起こせたら作れるんだけどな」

 そんな会話が後ろから聞こえてきた俺は、慌てて振り返った。

「あの!レーブンさんから四人で食えって包みを預かってます!」
「え、そうなんですか?」

 クリスさんは嬉しそうにしながらも、今度お礼に行かないとなと呟いていた。カーディさんはその隣で、満面の笑みを浮かべて叫んだ。

「おお!久しぶりのレーブンさんの飯か!!」
「美味しいですよねーレーブンさんのご飯」
「上手いよなぁ。洗練されてるのに、どことなく懐かしい雰囲気もあるんだよなぁ」
「分かります!」

 思わずカーディさんと二人で、レーブンさんのご飯の美味しさで盛り上がってしまったよね。ハルとクリスさんは微笑ましそうに俺達のやりとりを見守っていた。

「確か、この先の森を右に入った辺りに休憩所がある筈だ」
「ああ、ありましたね」
「じゃあそこで昼食にしようか」
「「賛成!」」

 見事にハモッた俺とカーディさんは、顔を見合わせて笑い合った。
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