生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
319 / 1,561

318.ティシーの森

 のんびりと休憩時間を堪能して英気を養った俺達は、元気いっぱいで次の目的地であるティシーの森へと向かう事になった。

 今俺達がいるナルイット領は、トライプールと比べても起伏が少ない地形みたいだ。平坦な道が延々と続くから、思った以上に歩きやすい。

 途中で冒険者らしき人達とも何組かすれ違ったけれど、ハルの言った通りティシーの森へと向かう人は全くいないみたいだ。全員が同じ方向に向かっていくって事は、ハルとクリスさんが名前を出してた何とかの森へ行くのかな。

 むしろ何故そっちへ行くのかと言いたげな不思議そうな顔で見られるのには、ちょっとだけ笑ってしまった。

「なぁ、ファルブラキノコってそんなに有名な素材なのか?俺は知らないんだが…」

 カーディさんは、申し訳なさそうにぽつりと尋ねた。あ、そこは俺も気になってたけど、常識的に知らないとまずい事だったら困るからあえて尋ねてなかったんだよね。聞いてくれてありがとう、カーディさん。

「ああ、一年の内にで二週間程しか取れないキノコだから無理も無いよ」

 笑顔を浮かべたハルの答えに、俺は驚いて叫んだ。

「「二週間!?」」

 はからずも俺とカーディさんの言葉が綺麗にハモッたよね。

「ええ、たった二週間です」

 面白い素材ですよとクリスさんは笑顔で応じた。

「冒険者であるハルはともかく、なんでクリスが知ってるんだ?」
「ああ、ファルブラキノコは魔道具の素材になるんだよ」
「キノコが魔道具の素材…?」

 え、料理に使うとか薬の材料とかじゃなくて、魔道具にキノコを使うの?嘘だろうと思わず視線を向けたハルは、苦笑を浮かべながらも本当だよと教えてくれた。

「えーと、何の魔道具だ?」

 考え込みながらもそう尋ねたカーディさんに、クリスさんは優しく語りかける。

「着火の魔道具って分かる?」
「え、あのライタ?」
「あれの核には、ファルブラキノコの胞子が使われてるんだよ」
「そうなのか!?あれって火石を使ってるんじゃないのか?」
「その火を維持させるのにはあの胞子が相性が良くて…」

 真剣な顔をしたクリスさんとカーディさんは、着火の魔道具の構造と製造工程について話し始めた。魔道具ってそうやって作られてるんだと聞き流しながら、俺はぼんやりとさっきの言葉について考えていた。

 着火の魔道具でライタって、絶対にライターの事だよね。魔道具の話でも異世界人の名づけらしきものが出てくるのかぁ。密かに感心していると、ハルが心配そうに俺の方をちらりと見た。

 あ、やっぱりライタは異世界人絡みなんだな。ハルの心配そうな視線だけで分かったよ。俺がどんな反応をするか気にしてくれたんだろうけど、だいぶ慣れてきた気がするから大丈夫だよ。思ったよりもこの世界、異世界人が色々やらかしてるみたいだからね。

 俺は後ろを歩く二人に見えないように、ハルに向かって笑みを浮かべて見せた。



 魔道具の話から何故か手に入りにくい素材の話に流れ、さらに手に入りにくい食材の話になって、最終的にはナルイット領の美味しい食べ物の話に辿り着いた。

 川魚の美味しさについて語る後ろの二人の話を聞いていると、不意にハルが声をかけてきた。

「アキト、そこの道を左に入ったら、ティシーの森だよ」

 ハルが指差したのは、伸びきった木の枝がアーチ状になっている道だった。何だか森というより、隠された不思議な家とかに繋がってそうだな。そう思ってしまうぐらいには、ファンタジー映画とかにありそうな入口だった。

 どこかに連れていかれたりしないよね。そんな事を考えながらアーチをくぐったけれど、道は普通に森の中に繋がっていた。ただ何だかすごく違和感がある。

「ねぇ、ハル。ここって何か、道幅が広くない?」
「ああ、トライプールに慣れるとそう思うよね」
「ナルイット領の道は、トライプール領よりも確実に広いですね」
「こっちに慣れてる奴は、逆にトライプール領に行ったら道が狭すぎるってびっくりするらしいぞ?」

 ああ、そう言われると確かにそうか。どっちを基準にして考えるかって話だもんな。

「ちなみにもっと広い道の領もあれば、道がずっとぐねぐねと蛇行してるっていう領もあるよ」

 悪戯っぽく笑って教えてくれたハルに、俺はうーんと考えこんだ。

「広いのはともかく、蛇行はちょっと困りそうだね」
「ああ、方向感覚が狂うって言われてるね」
「でも、ハルなら大丈夫でしょ?」

 思わずそう尋ねれば、ハルはびっくりした顔をしてからふにゃりと笑みを浮かべた。

「ああ、アキトを迷わせたりしないよ」
「うん、頼りにしてる」

 素直にそう言葉を返せば、ハルは俺の頭をぽんぽんと撫でた。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。