生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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333.見張りの交代

 本当に良いのかなとだいぶ悩んだけれど、俺はひとまずそのポーションを受け取る事に決めた。ハルに鑑定書を見せて使って良いかと相談するなら、その時にハルにどうしたらお礼が出来るかも一緒に相談すれば良いんだよな。

 きっとハルなら何か良い案を考えてくれると思えば、少しだけ気が楽になった。

 それから俺とカーディさんは、見張りの時間を使って本当にいろんな事を話した。

 お互いの相手のどんな所が好きか、一番格好良いと思った瞬間はいつだったか、一緒に行きたい場所はどこか。

 そんな事をあれこれと話し合っていると、あっという間に見張りの時間は過ぎていく。

「あ、アキトは食べ物の好き嫌いってあるのか?」
「俺は特にないなぁ?カーディは?」

 いっぱい話してるうちに敬語は無しでと頼まれた俺は、カーディさんの質問に軽く答えた。気を張らなくて良い友人が増えた感じで、すごく嬉しい。

「俺も無いんだけどなークリスはあるんだよ、嫌いなもの」
「そうなんだ?」
「しかも隠してるつもりみたいなんだけど、クリスはティフの木の実が苦手なんだ」
「ティフの木の実って、パンとかに入ってる、あれ?」

 確かどこかで食べたパンに入ってたのが、そんな名前だった気がする。クルミみたいな食感で、ほんのり苦味があって俺はかなり好きな味だった。

「そうそう。だから俺は出来るだけ入ってるのは買わないように気をつけてるんだけど、外食だとたまに出てくるだろ?」
「ああ、気づかないうちに料理に使われてるって事?」
「そうそう。その時のクリスは眉間にしわを寄せてるのに、必死で誤魔化しながら食べるんだーそれがまた可愛くてな」

 その時のクリスさんの表情を思いだしたのか、カーディは悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「えー…気づかれてたの?」

 不意に聞こえてきた声に、俺は慌てて声の出所を探した。テントから出てきたばかりのクリスさんは、そう言うなりがっくりと肩を落とした。

「いつから聞いてたんだよ?」
「聞いてるの知っててその話題にしたくせに…」
「まあな」
「それにしても気づいてたの?」
「俺がクリスの事に気づかないわけがないだろう?」
「あー…うん、それもそうだね」

 近づいてくるなりカーディさんのつむじにキスを落としたクリスさんに、俺はそっと視線を反らした。さすが新婚さんだ、その空気はどこまでも甘い。

「それにしても、もう交代の時間か?」
「うん、そうだよ。魔道具で確認したから正確だよ?」

 くっついたまま話している二人をできるだけ見ないようにしていると、テントから出てきたばかりのハルと目があった。

「アキト、おはよう。何も問題は無かった?」
「おはよう、ハル。魔物も人も一切来なかったよ」

 一応見張りだからと話をしながらも周りを気にしてたけど、本当に何事もなかった。そう告げれば、ハルは安心したよと言いながら俺のおでこに軽い音を立ててキスを落とす。

 不意打ちの急な触れ合いに驚いてしまったけれど、もしかしてクリスさんとカーディのこの甘い空気にあてられたのかな。いつ触れられてもハルが相手だったら嬉しいから、別に良いんだけどさ。

「カーディさんとの見張りは楽しかったかい、アキト?」
「うん、すっごく!カーディとは友達になったんだ」
「へぇ、そうなのか」

 クリスさんはカーディに友人がと、何故かぷるぷる震えていた。カーディは元々友人多そうなタイプなのにな。なんだか予想外の反応だ。

「また色々話そうな、アキト」
「うん、ぜひ!」

 ニコニコと笑い合う俺達を、ハルとクリスさんは笑顔で見守っていた。

「では交代しますので、ゆっくり休んで下さいね」
「そうだな、安心して眠ってくれ」

 ぽんぽんとハルに頭を撫でられると、それだけで一気に眠気が襲ってきた。ふわぁと大きくあくびをした俺に、ハルは笑顔でテントを指差した。

「じゃあ、後は頼んだぞ。クリス、ハル」
「まかせて」
「ああ」
「カーディ、盗み聞きしないでよ?」
「しないっての。二人で思う存分語り合ってくれ」

 テントに入る寸前で振り返れば、じっと俺を見つめていたらしいハルとぱちりと目が合った。思わずひらひらと手を振っておやすみと口を動かせば、ハルも目を細めておやすみと答えてくれた。

 寝袋に潜り込んだ俺は、幸せな気持ちであっという間に眠りに落ちていった。
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