生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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334.朝の目覚め

 翌朝、自然と目を覚ました俺は、ぼんやりと寝ぼけたまま緑色の天井を見つめた。緑色の天井というかこれは緑色の布かな。何で緑色の布なんだろうとぼんやりと考えていた俺は、ハッと目を覚ました。

 そうだ、これは俺のテントの色だ。いくらハルとクリスさんが見張りをしてくれてるっていっても、ちょっと油断しすぎだろう、俺。

 慌ててテントから出ていけば、まだカーディの姿は無かった。

「あ、おはよう、アキト。まだ寝てて良かったのに」
「おはよう、ハル。目が覚めちゃって」
「おはようございます、アキトさん」
「クリスさん、おはようございます」

 二人はまったりと飲み物を飲みながら見張りをしていたらしく、手招きされて近づいていけばすぐに俺にもコップが差し出された。

「はい。今朝は少し冷えるから、これ飲んで」
「ありがと」

 花の香りのする温かいお茶は、寝起きの体にしみ込むようだった。

「クリスも、もう少し飲むか?」
「ああ、頂きます」

 あ、何だかこの二人の距離も一気に縮まったみたいだ。ハルの呼び方にさん付けがなくなってるし、クリスさんの話し方も何だか柔らかい雰囲気な気がする。

「何か二人も仲良くなった?」
「ああ、クリスはカーディさんにしか興味が無いから、アキトに惚れられる心配が無いからね」

 さらりとそう言ったハルは、惚気たせいで興味を持たれたら困るからと笑ってるんだけど、そんな人がそうそういるとは思えないんだけどな。

「私も一緒ですよ。同じ理由で惚気もろくに出来なかったので…本当に楽しい見張りの時間でした」
「色々と情報交換もできたしな」
「さすがにハルさんは情報通でしたね」
「クリスもだろう」

 二人とも満足そうな所を見ると、見張りの時間はかなり有意義だったみたいだ。三人で飲み物を楽しみながら今日の予定を確認していると、ばさりと音が聞こえた。

 三人の視線が集中した先、カーディはテントをめくったまま俺達の方を真顔で見つめていた。

「……おはよう」
「カーディ、おはよう。今日は自分で起きれたんだね」
「…うるさい」

 いつも笑顔のカーディは、そう言うなり不服そうにクリスさんを睨みつける。え、見た事無いぐらい機嫌が悪そうなんだけど、これって大丈夫なの?

 密かに慌ててしまった俺に、ハルはこっそりと耳打ちをした。

「さっき聞いたんだけど、カーディさんは寝起きが悪いらしいよ」
「あ、そうなの?」

 そういう事か。そういえば、俺の友人にもいたなぁ。起こされてもなかなか起きれないし、朝はどうしても気分が上がらないって言ってたっけ。

「ほら、これ飲んで」

 鞄から取り出した飲み物をクリスさんが飲ませると、カーディはパチパチと瞬きをしてからふわりと笑みを浮かべた。さっきまでの不機嫌顔とのギャップがすごいんだけど。

「起きたかい?カーディ」
「ああ、おはよう、クリス」
「おはよう、カーディ」

 ついばむようなキスを交わしてから、俺たちの視線に気づいたのかカーディは照れくさそうに頭をかいた。

「あー…みっともない所を見せたなぁ。俺はどうしても朝が無理でな」
「いやいや、体質なら仕方ないよ」
「ああ、気にするな」

 ハルと二人でそうフォローの声を上げたけれど、カーディはまだ恥ずかしそうにしていた。ハルはちらりとクリスさんを見てから、口を開いた。

「そういう所も可愛いんだっていう伴侶から、楽しみを奪わないでやってくれないか?」
「あっ、ばらさないで下さいよ!」
「ああ、悪いな、ついうっかり?」

 慌てるクリスさんにそう答えたハルは、少しも悪びれた様子が無い。それなら私にだって考えがありますからねと言い返していたクリスさんに、カーディはきゅっと抱き着いた。

「…クリス」
「はいっ!?」
「ありがとう。この体質も悪くないって、今初めて思ったわ」
「…いつもは頼れるカーディが、私に頼ってくれる滅多にない機会だから…本当に可愛いと思ってるからね」

 まっすぐに目をみて伝えたクリスさんに、カーディはふふと幸せそうに笑い返した。

「ああ、ありがとう。あと、ハルもありがとな」
「え?俺?」
「俺のために、クリスの情報を教えてくれたから」
「ああ、どういたしまして」
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