生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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336.レーウェ川の船着き場

 ハルの言葉通り、木々で遮られていた視界が開けると川が目に飛び込んできた。

 レーウェ川は大きい川だと三人から聞いてはいたけれど、想像していたよりも遥かに大きく立派な川だ。流れはそれほど速くなくてむしろ穏やかなぐらいだけど、雄大な自然が持つ圧倒するような迫力があった。

 太陽の光を反射してキラキラと輝く水面はどこまでも澄んでいて、かなりの深さがあると思うのに底に沈んだ石まで見えた。

「綺麗だ…」

 ぽつりと呟いた俺は、そのまま雄大な景色にしばし見惚れてしまった。

「あ、ごめんなさい、待たせて」

 ハッと我に返った俺がそう声を上げると、ハルもカーディもクリスさんも笑って許してくれた。団体行動を乱したのに、みんな優しいな。今度から気をつけよう。

「アキト、左を見てごらん?船着き場が見えるよ」

 柔らかいハルの言葉に誘われるように自然と視線を向けた俺は、つい先ほどの反省も忘れてそのまま固まってしまった。だってあんな不思議な景色があるなんて想像してなかったから、なんてただの言い訳かな。

 俺の視界に飛び込んできたのは、驚くほど巨大な街だった。ただ川辺に街があるだけなら、俺だってこんなに驚かなかったと思うんだけどね。

 その街は、よりによって雄大な川のちょうど真上に存在していたんだ。一瞬浮いているように見えたその街は、よくよく見ればどうやら巨大な橋の上に存在しているみたいだ。

「えーと…アキト、大丈夫?」
「うーん、動かなくなっちまったなぁ。予想通りだけど」
「よほどびっくりしたんでしょうね」

 心配そうなハルに、面白がってるカーディ、そして微笑ましそうに笑っているクリスさん。そんな三者三様の反応を気にする余裕も無く、俺はただぽつりと呟いた。

「…これ船着き場じゃなくて街じゃない…?」

 川の大きさに比例したそれはもう巨大な橋の上に、大小色んな大きさの建物がひしめき合っている。

「まあ、規模でいえば街…だな?」

 俺の独り言に律儀に答えてくれたハルに、俺も景色を見つめたまま答える。

「だよね…?でも呼び名は船着き場?」
「名前をつけようって動きもあったらしいけど、分かりやすさが一番大事だって今でも船着き場って呼ばれてるんだ
「へぇーそうなんだ」

 説明を聞いているうちにようやく落ち着いてきた俺は、ふうと一つ息を吐いてから後ろを振り返った。さっき反省したのに、思いっきり固まってしまったから謝らないと。

「落ち着きましたか?」
「はい、すみません」
「いえいえ、説明しなかったのは私たちですから…」

 実際に見た方が楽しめるかと思ったのでと、クリスさんは笑って続けた。

「落ち着いたなら、船着き場に向かおうか」
「うん」
「賛成!」
「行きましょう」

 俺とハル、カーディとクリスさんで隊列を組み、船着き場を目指して歩き出す。

「さっきのアキトの反応見てたら、そういえば俺も初めてレーウェ川の船着き場に来た時は、驚いたなぁって思いだしたわ」

 カーディはそう言うと楽し気に笑いだした。

「ああ、私も驚きましたね」
「一瞬街が浮いてるように見えるんだよなぁ」
「分かります。落ち着いたら、今度はこの橋はどうやって建てたのかが気になって気になって…」
「いや、それは多分クリスだけだぞ?」
「え…?」

 背後から聞こえてくる二人の会話に、思わずクスリと笑ってしまった。俺への気づかいから始まった会話が、思わず着地点に辿り着いたみたいだ。
 
「これからどうするんだ?」

 二人の会話がひと段落するのを待って、ハルはそう尋ねた。

「ああ、まだ時間はあるので…折角なら船着き場を散策しませんか?」

 説明してくれたクリスさんによると、船着き場にはそれはもう色んなお店があるんだそうだ。魔物の多いこの世界では欠かせない武器屋や防具屋、更には色んな領の料理が楽しめる飲食店や屋台、荷物の一部を販売して旅費を稼ぐための商人達の市場なんてものまであるらしい。

 話を聞いてるだけでもワクワクしてくる。

「それは楽しそうですね!」
「えーと、四人行動で良いのか?」

 カーディの質問に、ハルとクリスさんは視線を交わしてから大きく一つ頷いた。

「その方が安全だから、四人で回ろう」
「ハルさん、アキトさん。気になる店があれば遠慮なく言ってくださいね」
「ありがとうございます」
「とりあえず大通りを行くとして…他に行きたい場所はあるか?」

 ハルはここの船着き場にもやっぱり詳しいのか、頭の中でルートを組み立ててくれてるみたいだ。

「あー俺は川魚の串焼きは食べたいなー」
「私も久々に食べたいです」

 カーディとクリスさんの会話に耳を傾けていると、ハルは俺に向かって尋ねた。

「確かアキトは魚好きだったよね?」
「うん、魚は好きだよ!」
「じゃあ決まりだな。どの店にする?」
「うーん…私のおすすめは二番通りから裏道に入った場所にある漁師の屋台ですね」

 え、悩むほどたくさん川魚の串焼きのお店があるの?俺が密かに驚いている間に、ハルは笑顔で答えた。

「ああ、あそこは美味しいな!俺も気に入ってる店だ」
「では、そこにしましょうか?カーディもそれで良い?」
「もちろん」
「アキトも良いかな?」

 どうやら川魚の串焼きは、ハルとクリスさんのお勧めのお店になるみたいだ。敏腕な観光ガイドが二人もいるみたいな状況に、俺はただワクワクしながら笑顔で頷いた。
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