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338.【ハル視点】アキトの手料理か
幸せそうにパンを頬張るアキトを見ていると、それだけで自分まで幸せな気分になってくるんだから不思議なものだ。もぐもぐと口を動かすアキトを見つめながら、俺もそっとパンをちぎると口に運んだ。ああ、確かにこれはかなり美味いな。
美味しいと素直に感想を口にしたアキトに、カーディさんは何故か少し悔しそうにぽつりと呟いた。
「グネのパン屋は美味しいんだよ、この味はなかなか出せない」
本職の作るパンが美味しいのは当然じゃないのか?どういう意味だろうと不思議には思ったけれど、俺は何も聞かなかった。クリスさんがあまりに真剣な顔でカーディさんを見つめていたから、邪魔をしたくなかった。
ただ黙って見守っていると、クリスさんはカーディさんの肩をぐいっと抱き寄せた。
「さっきも言ったけど、私にとってはカーディの作ったパンが世界一だからね?」
「あー…うん、ありがと」
赤くなって目を反らしたその反応からして、伴侶の作った料理が世界一美味しいって話でもしていたんだろうな。そう察した俺は微笑ましそうに二人のやり取りを見つめていたアキトの肩を、ぐいっと抱き寄せた。
「わっ!」
急な動きに驚いて体勢を崩さないように支えながら、俺は不意に浮かんできたアキトとやりたい事を言葉に変えた。
「アキト、俺も料理はそれなりにできるから、今度食べてくれる?」
そういえば俺が幽霊だった時にも、アキトのために料理を作りたいって何度も思ったな。もし俺の手料理を、アキトが美味しいと目を輝かせて食べてくれたら。それはきっととてつもなく幸せな時間になるだろう。
当時は絶対に叶う事のないただの夢物語だったけれど、今の俺には生身の体があるんだから決して不可能では無い。意気込んで尋ねた俺に、アキトはパチパチと目を瞬いてから即答してくれた。
「え、うん、もちろん!…むしろ良いの?」
「二人のやりとりを見てたら、俺の手料理も食べて欲しいなと思って」
にっこり笑顔で答えながら、頭の中ではどんな料理を作るべきかを考え始めていた。アキトはライスが好きだから、主食はライスで決定だろう。甘辛い味付けに少しスパイスが効いたものが好きだったな。アキトの好みを思い浮かべていた俺は、続いたアキトの言葉に目を見開いた。
「あ、俺も!料理してる時のやりとり見てて手料理食べて欲しいなと思ってたっ!」
え、本当に?アキトが俺のためにわざわざ料理を作ってくれるって???じわじわと湧いてくる嬉しさに、俺はアキトをじっと見つめて尋ねた。
「え…アキトが俺のために料理してくれるの?」
「あーえっとめちゃくちゃ上手では無いけど…」
少し不安そうにアキトはそう続けたが、仮に焼きすぎで焦げた肉だとしてもアキトが焼いてくれたものなら、俺は笑顔で食べ切ると思う。
「アキトが作ってくれる事が重要なんだよ!」
「ちょっと練習してから振る舞わせてください」
可愛い事を言い出したアキトには悪いけれど、たとえただの練習の分だとしても誰かに味見なんてさせるわけが無いだろう。だってそれは、アキトが俺のために、俺のためだけに作ってくれた料理なんだから。
「……練習のは食べさせてくれないの?」
大げさにしょんぼりと肩を落として見つめれば、アキトはううーんと唸った。
「分かった…食べて良いけど、味は保証しないからね?」
「ああ、楽しみにしてるよ」
「…うん、俺も楽しみ」
もちろん全力で、アキトが気に入ってくれるような料理を作るよ。それにしてもアキトの前で手料理の話をしてくれた二人には、感謝の気持ちしかないな。後で機会があればきちんとお礼を言わないとな。俺はそんな事を考えながら、目の前で二人の世界を繰り広げている二人にちらりと視線を向けた。
食事を終えた俺達は、そのままのんびりと時間を過ごしていた。パチパチと音を立てる焚火を眺めながら、四人で何てことのない会話を続けている。採取地や素材、それに冒険、商売の話に、魔道具の話まで話題は尽きそうにない。
ふと気づくと隣で星空を眺めていたアキトに、自然と笑みを浮かべてしまった。本当に星空を見るのを好きになってくれたんだな。夜の森でも堂々としている姿も、俺の影響だと思えば可愛くて仕方ない。
自然と話題が途切れた瞬間、クリスさんが申し訳なさそうに切り出した。
「あの、見張りについてなんですが…」
「ああ、俺とアキトで交代で見張りにつくから、二人は眠ってもらって大丈夫だよ」
護衛中なんだからこれはまあ当然の事だ。ただこの二人の性格からして気にする可能性もあるかと先回りして口にしたんだが、クリスさんはふるふると首を振った。
「違うんです。そうでは無くて…」
「ん?…違うとは?」
「あー、カーディがどうしてもアキトさんと一緒に見張りがしたいと言ってまして」
「俺!?」
アキトは大きな声でそう叫んだ。
「アキトと?」
「約束しただろ?」
カーディさんとアキトの約束?不思議に思ったのはどうやら俺だけでは無かったらしい。クリスさんもアキトもゆるりと首を傾げていた。
「えーと…約束?」
「ほら、俺の伴侶自慢と、アキトの恋人自慢だよ」
美味しいと素直に感想を口にしたアキトに、カーディさんは何故か少し悔しそうにぽつりと呟いた。
「グネのパン屋は美味しいんだよ、この味はなかなか出せない」
本職の作るパンが美味しいのは当然じゃないのか?どういう意味だろうと不思議には思ったけれど、俺は何も聞かなかった。クリスさんがあまりに真剣な顔でカーディさんを見つめていたから、邪魔をしたくなかった。
ただ黙って見守っていると、クリスさんはカーディさんの肩をぐいっと抱き寄せた。
「さっきも言ったけど、私にとってはカーディの作ったパンが世界一だからね?」
「あー…うん、ありがと」
赤くなって目を反らしたその反応からして、伴侶の作った料理が世界一美味しいって話でもしていたんだろうな。そう察した俺は微笑ましそうに二人のやり取りを見つめていたアキトの肩を、ぐいっと抱き寄せた。
「わっ!」
急な動きに驚いて体勢を崩さないように支えながら、俺は不意に浮かんできたアキトとやりたい事を言葉に変えた。
「アキト、俺も料理はそれなりにできるから、今度食べてくれる?」
そういえば俺が幽霊だった時にも、アキトのために料理を作りたいって何度も思ったな。もし俺の手料理を、アキトが美味しいと目を輝かせて食べてくれたら。それはきっととてつもなく幸せな時間になるだろう。
当時は絶対に叶う事のないただの夢物語だったけれど、今の俺には生身の体があるんだから決して不可能では無い。意気込んで尋ねた俺に、アキトはパチパチと目を瞬いてから即答してくれた。
「え、うん、もちろん!…むしろ良いの?」
「二人のやりとりを見てたら、俺の手料理も食べて欲しいなと思って」
にっこり笑顔で答えながら、頭の中ではどんな料理を作るべきかを考え始めていた。アキトはライスが好きだから、主食はライスで決定だろう。甘辛い味付けに少しスパイスが効いたものが好きだったな。アキトの好みを思い浮かべていた俺は、続いたアキトの言葉に目を見開いた。
「あ、俺も!料理してる時のやりとり見てて手料理食べて欲しいなと思ってたっ!」
え、本当に?アキトが俺のためにわざわざ料理を作ってくれるって???じわじわと湧いてくる嬉しさに、俺はアキトをじっと見つめて尋ねた。
「え…アキトが俺のために料理してくれるの?」
「あーえっとめちゃくちゃ上手では無いけど…」
少し不安そうにアキトはそう続けたが、仮に焼きすぎで焦げた肉だとしてもアキトが焼いてくれたものなら、俺は笑顔で食べ切ると思う。
「アキトが作ってくれる事が重要なんだよ!」
「ちょっと練習してから振る舞わせてください」
可愛い事を言い出したアキトには悪いけれど、たとえただの練習の分だとしても誰かに味見なんてさせるわけが無いだろう。だってそれは、アキトが俺のために、俺のためだけに作ってくれた料理なんだから。
「……練習のは食べさせてくれないの?」
大げさにしょんぼりと肩を落として見つめれば、アキトはううーんと唸った。
「分かった…食べて良いけど、味は保証しないからね?」
「ああ、楽しみにしてるよ」
「…うん、俺も楽しみ」
もちろん全力で、アキトが気に入ってくれるような料理を作るよ。それにしてもアキトの前で手料理の話をしてくれた二人には、感謝の気持ちしかないな。後で機会があればきちんとお礼を言わないとな。俺はそんな事を考えながら、目の前で二人の世界を繰り広げている二人にちらりと視線を向けた。
食事を終えた俺達は、そのままのんびりと時間を過ごしていた。パチパチと音を立てる焚火を眺めながら、四人で何てことのない会話を続けている。採取地や素材、それに冒険、商売の話に、魔道具の話まで話題は尽きそうにない。
ふと気づくと隣で星空を眺めていたアキトに、自然と笑みを浮かべてしまった。本当に星空を見るのを好きになってくれたんだな。夜の森でも堂々としている姿も、俺の影響だと思えば可愛くて仕方ない。
自然と話題が途切れた瞬間、クリスさんが申し訳なさそうに切り出した。
「あの、見張りについてなんですが…」
「ああ、俺とアキトで交代で見張りにつくから、二人は眠ってもらって大丈夫だよ」
護衛中なんだからこれはまあ当然の事だ。ただこの二人の性格からして気にする可能性もあるかと先回りして口にしたんだが、クリスさんはふるふると首を振った。
「違うんです。そうでは無くて…」
「ん?…違うとは?」
「あー、カーディがどうしてもアキトさんと一緒に見張りがしたいと言ってまして」
「俺!?」
アキトは大きな声でそう叫んだ。
「アキトと?」
「約束しただろ?」
カーディさんとアキトの約束?不思議に思ったのはどうやら俺だけでは無かったらしい。クリスさんもアキトもゆるりと首を傾げていた。
「えーと…約束?」
「ほら、俺の伴侶自慢と、アキトの恋人自慢だよ」
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