生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
346 / 1,561

345.【ハル視点】二組の友人

「あ、おはよう、アキト。まだ寝てて良かったのに」
「おはよう、ハル。目が覚めちゃって」

 目が覚めちゃってと口では言っているけれど、どことなくまだ眠そうだ。目をこすりながらゆっくりと近づいてくるアキトのために、俺はさっき淹れておいた花茶をコップに注いだ。これは寝起きに飲むと、体が温まるからな。

「おはようございます、アキトさん」
「クリスさん、おはようございます」

 挨拶を交わす二人を見守りながら、そっとアキトを手招く。すぐにこちらへ近づいてきたアキトに、俺はすかさずカップを差し出した。
 
「はい。今朝は少し冷えるから、これ飲んで」
「ありがと」

 お礼を言って受け取ったアキトは、こくりと控え目に口をつけると嬉しそうに微笑んだ。良かったこのお茶はアキトの好きな味か。

「クリスも、もう少し飲むか?」
「ああ、頂きます」

 すぐに差し出されたクリスのコップに追加の花茶を注いでいると、両手でコップを持ったアキトはじっと俺達のやりとりを見つめていた。

「何か二人も仲良くなった?」

 少し嬉しそうにそう尋ねられたので、俺は笑って答えた。

「ああ、クリスはカーディさんにしか興味が無いから、アキトに惚れられる心配が無いからね。惚気たせいで興味を持たれたら困るから普段は我慢してるんだよ」

 それは間違いなく俺の本音だったけれど、アキトは不思議そうにゆるりと首を傾げていた。そんな心配はいらないと思うと言いたげな表情を浮かべているけれど、本当にアキトは、自分がどれだけモテるのか全く理解していないんだな。

「私も一緒ですよ。同じ理由で惚気もろくに出来なかったので…本当に楽しい見張りの時間でした」
「色々と情報交換もできたしな」
「さすがにハルさんは情報通でしたね」
「クリスもだろう」

 店の情報や買取素材の情報、他国の情勢まで、色んな事を話した。

 中でも驚いたのは、やっぱり本職である魔道具店の話だな。まさか今でも直接魔道具店に買取を申し込む方法があるなんて、俺もさすがに知らなかった。しかもそれがギルドの許可をきちんと得た制度だっていうんだから驚きだ。ギルドの利にはならないだろうに、よく許可をもぎ取れたな。

 これからも情報交換はこまめにしようと約束も交わしたし、ストファー魔道具店にはたまに顔を出すようにしないとな



 のんびりと飲み物を楽しみながら今日の予定を確認していると、ばさりと背後で音が聞こえた。三人の視線が集中した先、カーディさんはテントをめくったまま俺達の方を真顔で見つめていた。

「……おはよう」

 ぽつりと呟いたカーディさんは、ぎゅっと眉間にしわを寄せた。

「カーディ、おはよう。今日は自分で起きれたんだね」
「…うるさい」

 いつも笑顔のカーディさんは、そう言うなり不服そうにクリスを睨みつけている。アキトは一体何があったんだと言いたげな心配顔で、二人のやりとりをはらはらと見守っている。

 その不機嫌そうな顔の理由を昨夜のうちに知っていた俺は、そっとアキトの耳元に唇を寄せた。

「さっき聞いたんだけど、カーディさんは寝起きが悪いらしいよ」
「あ、そうなの?」

 そういう奴なら友人にもいたよと言ったアキトは、どうやら俺のその説明だけでカーディさんの心配をするのをやめたらしい。手に持ったままだった花茶を、幸せそうに飲み始めた。マイペースなアキトも可愛いな。

「ほら、これ飲んで」

 クリスが鞄から取り出したのは、目覚めが良くなると言っていたお茶だろう。本当にそんなお茶だけで効果があるのかと密かに心配してしまったが、カーディさんはパチパチと瞬きをすると次いでふわりと笑みを浮かべた。

「起きたかい?カーディ」
「ああ、おはよう、クリス」
「おはよう、カーディ」

 あまりに劇的なその変化に、さっき聞いた茶葉の名前はきちんと覚えておこうと俺はこっそりと決意した。我に返ったカーディさんは俺とアキトの視線に気づくと、気まずそうに苦笑を浮かべた。

「あー…みっともない所を見せたなぁ。俺はどうしても朝が無理でな」
「いやいや、体質なら仕方ないよ」
「ああ、気にするな」

 アキトと二人がかりで慰めたが、カーディさんはそれでもまだ恥ずかしそうにしている。どうしようかと悩んだのは一瞬だけだった。

 クリスはカーディさんのためになる行動なら、本気で怒ったりしないだろう。アキトのためになる行動なら、俺が本気で怒れないのと同じだと思う。

「そういう所も可愛いんだっていう伴侶から、楽しみを奪わないでやってくれないか?」
「あっ、ばらさないで下さいよ!」

 慌てた様子のクリスに、俺はあえてあっさりと答えた。

「ああ、悪いな、ついうっかり?」
「それなら私にだって考えがありますからね!アキトさん、ハルは」

 仕返しに俺の発言もアキトにばらされるのは、覚悟の上だ。別にアキトに隠しておきたい事なんて何もないからな。余裕の表情でクリスの言葉を待っていたけれど、それより早くカーディさんがクリスに抱き着いた。

「…クリス」
「はいっ!?」

 ひっくり返った声に今のクリスの感情が漏れてるな。ちょっと面白いぐらい動揺しているみたいだ。ちらりと視線を向ければ、アキトも微笑ましそうに二人を見つめている。

「ありがとう。この体質も悪くないって、今初めて思ったわ」
「…いつもは頼れるカーディが、私に頼ってくれる滅多にない機会だから…本当に可愛いと思ってるからね」

 ああ、すっかり二人の世界だな。まあ仲が良さそうで何よりだ。俺もこんな風にアキトと当然のようにいちゃつける伴侶になりたいなと素直にそう思った・

「ああ、ありがとう。あと、ハルもありがとな」

 予想外にカーディさんの口から俺への礼が飛び出してきて、俺は驚きながら聞き返した。

「え?俺?」
「俺のために、クリスの情報を教えてくれたから」
「ああ、どういたしまして」

 クリスはカーディさんの言葉を聞いて、何も言わずにただ笑みを浮かべた。どうやら俺の発言をアキトにばらされるのは、ギリギリの所でまぬがれたみたいだ。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。