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352.椅子の話
「そこからの景色は結構すごいだろう?」
答えは分かってるけどと言いたそうな店主のおじさんの質問に、俺たちは四人揃って即座に頷いた。結構なんて言葉では絶対に追いつかない。クリスさんじゃないけど、その気になればお金が取れるぐらいの絶景だと思う。
「ああ、これはものすごい景色だよな!ありがとうな、おっちゃん!」
嬉しそうに笑いながらカーディがそう言えば、おじさんはそうだろうそうだろうと満足気に笑って答えた。
「本当にすごい景色を見せてもらいました。私の伴侶も気に入ったようで…本当にありがとうございます」
カーディの肩に手を乗せて、クリスさんもお礼の言葉を伝えている。俺は慌てて口を開いた。
「あの、俺船着き場初めてなんですけど、すごい景色が見れて感動しました!ありがとうございます!」
「ああ、兄ちゃんが船着き場が初めてって言われてた子か。そりゃあ良かった」
「私からもお礼を言わせてください」
ついついハルも一緒になって、二人でここからの景色の良さを褒めちぎってしまった。
「そこまで気に入ってもらえたなら良かったよ」
「あの…」
「ん?どうした?」
ハルの声かけに、おじさんは窓枠にもたれたまま答えた。
「この木製の椅子、息子さんが作ったと言ってましたが、家具職人なんですか?」
「ああ、そうだぞ。一番下の息子は家具職人だ」
「正直に言って…この座り心地は、王都の家具屋でも滅多に無いと思います」
真剣な顔でそう言いきったハルにおじさんは一瞬だけ驚いた顔をしたけれど、次の瞬間には嬉しそうに破顔した。
「そうかい!そうまで言われると嬉しいねぇ!」
「失礼でなければ、店を教えて頂きたいんですが…駄目でしょうか?」
ハルの申し出に、おじさんは困った顔でゆるく首を振った。あ、やっぱり教えてもらうのは無理なのかな。俺もこの椅子すごく気に入ったから、ちょっと興味があったんだけど。
「教えるのは構わないが……それは、本気で言ってるのか?」
「ええ、本気も本気ですよ。アキトもこの椅子、気に入ってたよね?」
「う、うん!」
急に話を振られて焦ってしまったけれど、気に入ったのは本当だからすぐにそう答える事ができた。おじさんの視線がこっちを向いたので、俺はその目をじっと見つめ返しながら続ける。
「座り心地ももちろんすごく良いんですけど、ここの部分のなめらかさがなんだか撫でたくなる感じで…俺もすごく気に入りました」
言いながらそっと肘掛けの部分を撫でて見せれば、店主は嬉しそうに目を細めた。
「ああ、そこは特にこだわったって言ってたよ。息子の仕事を褒められるのは嬉しいもんだねぇ」
噛み締めるようにそう呟いたおじさんは、サラサラと何かを書き記すとその紙をハルに向けて差し出した。
「そこが息子の家具屋だ。こだわりばっかりであんまり人気は出てねぇらしいけどな…まあ機会があれば行ってやってくれ」
ハルは大事そうにその紙を両手で受け取ると、必ず行きますと言いながら鞄の中にしまい込んだ。
「あの、私も後で教えてもらっても良いですか?」
「店主が良ければ教えるけど…良いですか?」
「ああ、じゃあもう一枚書いておくよ」
クリスさんが大事そうにその紙を受け取った瞬間、カランカランと鐘の鳴る音が川の方から聞こえてきた。何の音だろうと思うより前に、おじさんはバッと顔を上げた。
「帰ってきたな!」
「え?」
「あの音はな、だれの家の船かが分かる便利なもんなんだ。漁に出てた息子の船が帰ってきたんだ!」
そう行ったおじさんはついさっきまではのんびりと優しい顔をしていたのに、一瞬できりりとした顔に変わっていた。職人さんって感じがして格好良い。
「じゃあ兄ちゃんらは、ここで待っててくれ。できたらこっちに持ってきてもらうからよ!」
「え、屋台の方に回りますよ?」
そこまでしてもらうわけにはとハルとクリスさんが言ったけれど、おじさんは笑って手を振った。
「いいからいいから。よっし、もう一仕事してくっか!」
そう気合を入れなおしたおじさんは、すぐに窓を閉めて行ってしまった。
答えは分かってるけどと言いたそうな店主のおじさんの質問に、俺たちは四人揃って即座に頷いた。結構なんて言葉では絶対に追いつかない。クリスさんじゃないけど、その気になればお金が取れるぐらいの絶景だと思う。
「ああ、これはものすごい景色だよな!ありがとうな、おっちゃん!」
嬉しそうに笑いながらカーディがそう言えば、おじさんはそうだろうそうだろうと満足気に笑って答えた。
「本当にすごい景色を見せてもらいました。私の伴侶も気に入ったようで…本当にありがとうございます」
カーディの肩に手を乗せて、クリスさんもお礼の言葉を伝えている。俺は慌てて口を開いた。
「あの、俺船着き場初めてなんですけど、すごい景色が見れて感動しました!ありがとうございます!」
「ああ、兄ちゃんが船着き場が初めてって言われてた子か。そりゃあ良かった」
「私からもお礼を言わせてください」
ついついハルも一緒になって、二人でここからの景色の良さを褒めちぎってしまった。
「そこまで気に入ってもらえたなら良かったよ」
「あの…」
「ん?どうした?」
ハルの声かけに、おじさんは窓枠にもたれたまま答えた。
「この木製の椅子、息子さんが作ったと言ってましたが、家具職人なんですか?」
「ああ、そうだぞ。一番下の息子は家具職人だ」
「正直に言って…この座り心地は、王都の家具屋でも滅多に無いと思います」
真剣な顔でそう言いきったハルにおじさんは一瞬だけ驚いた顔をしたけれど、次の瞬間には嬉しそうに破顔した。
「そうかい!そうまで言われると嬉しいねぇ!」
「失礼でなければ、店を教えて頂きたいんですが…駄目でしょうか?」
ハルの申し出に、おじさんは困った顔でゆるく首を振った。あ、やっぱり教えてもらうのは無理なのかな。俺もこの椅子すごく気に入ったから、ちょっと興味があったんだけど。
「教えるのは構わないが……それは、本気で言ってるのか?」
「ええ、本気も本気ですよ。アキトもこの椅子、気に入ってたよね?」
「う、うん!」
急に話を振られて焦ってしまったけれど、気に入ったのは本当だからすぐにそう答える事ができた。おじさんの視線がこっちを向いたので、俺はその目をじっと見つめ返しながら続ける。
「座り心地ももちろんすごく良いんですけど、ここの部分のなめらかさがなんだか撫でたくなる感じで…俺もすごく気に入りました」
言いながらそっと肘掛けの部分を撫でて見せれば、店主は嬉しそうに目を細めた。
「ああ、そこは特にこだわったって言ってたよ。息子の仕事を褒められるのは嬉しいもんだねぇ」
噛み締めるようにそう呟いたおじさんは、サラサラと何かを書き記すとその紙をハルに向けて差し出した。
「そこが息子の家具屋だ。こだわりばっかりであんまり人気は出てねぇらしいけどな…まあ機会があれば行ってやってくれ」
ハルは大事そうにその紙を両手で受け取ると、必ず行きますと言いながら鞄の中にしまい込んだ。
「あの、私も後で教えてもらっても良いですか?」
「店主が良ければ教えるけど…良いですか?」
「ああ、じゃあもう一枚書いておくよ」
クリスさんが大事そうにその紙を受け取った瞬間、カランカランと鐘の鳴る音が川の方から聞こえてきた。何の音だろうと思うより前に、おじさんはバッと顔を上げた。
「帰ってきたな!」
「え?」
「あの音はな、だれの家の船かが分かる便利なもんなんだ。漁に出てた息子の船が帰ってきたんだ!」
そう行ったおじさんはついさっきまではのんびりと優しい顔をしていたのに、一瞬できりりとした顔に変わっていた。職人さんって感じがして格好良い。
「じゃあ兄ちゃんらは、ここで待っててくれ。できたらこっちに持ってきてもらうからよ!」
「え、屋台の方に回りますよ?」
そこまでしてもらうわけにはとハルとクリスさんが言ったけれど、おじさんは笑って手を振った。
「いいからいいから。よっし、もう一仕事してくっか!」
そう気合を入れなおしたおじさんは、すぐに窓を閉めて行ってしまった。
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