生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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364.船の中へと

 歓声を上げながらも視線を動かせば、視界に飛び込んでくるのは船、船、船、また船だ。

 白い船に黒い船、大きな船に小さな船、ゴテゴテに飾り付けられた船から、どこまでもシンプルな船まで、多種多用な船がずらーっと並んでいる。

「すごいね、カーディ!」
「ああ下から見るのとは迫力が違うな」
「あそこの派手な船、すごい色合いだね」

 紫と黄色とピンクで色づけられたその船は、景色から浮いて見えるほどに派手だった。

「あれは、おそらく貴族の船だろうな」
「へー貴族は派手なのが好きなの?」
「好きというか、あれは目立つための色合いなんだろうな。アキトはどの船が好みだ?」
「えーと…あの黒い船に金色のラインの船とか格好良いよね」

 周りを見渡してみたらふと目に留まった船を指差すと、カーディはニヤニヤ笑って顔を近づけてきた。

「アキトの髪色とハルの髪色だからか?ん?」
「ち、違うよ!普通に格好良いなと思っただけで」
「カーディ、アキト、手続きは終わりましたよ」
「そろそろ行こうか?」

 わーわーと二人で騒いでいる間に、問題なく乗船手続きは終わったようだ。気づかない間に、職員のお姉さんもいなくなっている。

「おう、手続きありがとう」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」



 階下に下りていけば、さっき二階に案内してくれた男性がすぐに俺達に気づいてくれた。

「こちらへどうぞ」

 人がたくさんいる広場のような場所を横目に、俺達は廊下を進んでいく。ここがカーディの言ってた下の待合か。数人の人が並んでいる屋台の方からは、魚の焼ける香ばしい香りが漂ってくる。

 普段の俺なら美味しそうだな、食べてみたいなってなるだろうな。そう思うぐらい良い香りだったけど、今はあの川魚串で満足してるからか落ち着いたものだ。俺は屋台を興味深く観察しながら、前を歩くハルの背中を追った。

「こちらの船です」

 そう言って男性が立ち止まったのは、予想外にもこじんまりとした船だった。彫刻のような装飾こそあるものの、さっき見えていたシンプルな白い船だ。あの貴族仕様のド派手な船じゃなくて良かったと、ちょっとだけ思った。

「案内ありがとうございました」
「ありがとう」
「ありがとな」
「ありがとうございました」

 思い思いに感謝の言葉を告げれば、男性はにっこりと笑ってくれた。

「良い船旅になりますように」

 柔らかい声に背中を押されるようにして、俺達は木製のタラップを渡り船へと乗り移った。



 船に一歩足を踏み入れた瞬間、何だか全身に違和感を感じた。特別危険だとかそういう感じはしないけれど、何だか不思議な感覚が全身を通り抜けていった気がする。

「あれ?」
「あ、アキトも気づいた?」
「何か違和感?不思議な感じがしたんだけど…」

 そうハルに話しかけながら顔を上げて、俺はゆるりと首を傾げた。外から見た時はこじんまりとした船だと思ったのに、中が広い。いや、広すぎる。

「えーと…何だかやけに広くない?」
「面白いでしょう?この船はドワーフとエルフが手を組んで作ったという船なんですよ」

 最新式の船なんですよと、クリスさんは笑顔で続けた。

「はーでも…ちょっと広すぎないか?」

 カーディは感心した様子で周りを見ながらも、そう声をあげた。

「何でもエルフが作った空間魔法で中だけ広げてあるらしいよ?」
「空間魔法…」
「魔道収納鞄の応用らしいけど、まあ俺達には理解できないと思うよ」

 ハルでさえそう言うような物なら、俺には理解できそうにない。一瞬で理解する事を諦めた俺は、これは見た目と中身が合って無いすごい船だと思う事に決めた。
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