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365.嫉妬
ドアの近くはまるでホテルのロビーのようになっていて、他の乗客らしき人達の姿もちらほらと見えている。上品そうな老夫婦や、楽し気に団らん中の家族、ビシッと揃いの制服らしきものをを着こなしている謎の団体まで様々だ。
「ハル、これを渡しておきますね」
「ああ、ありがとう」
クリスさんがハルに手渡したのは、小さな魔石のついたカードのような物だった。あれが部屋の鍵なのかな?本当にホテルみたいだな。
「この船の中では護衛は必要ありませんからね」
「本当に良いのか?」
「ええ、ゆっくりと船旅を楽しんでください」
「ありがとう、クリス」
「ありがとうございます」
気にしなくて下さいとクリスさんが返事をした瞬間、ロビーに大きな声が響いた。
「ハル!ハルじゃないか?」
落ち着いた雰囲気のロビーに急に響いた大きな声に、俺達は驚いて振り返った。さっき見た揃いの制服を着ていた一団から、一人の男性が俺達の方へ走り寄ってきているのが見えた。
「会いたかったよ、ハル!」
勢いよく駆け寄ってきた男性は少しの躊躇も一切の遠慮も無く、思いっきり真正面からハルに抱き着いた。え。抱き着いた?
「ああ、ハルの香りだ、本物だね」
ハルよりも少し小柄なその男性は、胸元に顔をうずめるようにしてハルに笑いかけている。赤みがかった茶色の髪と、ハルとお揃いみたいな紫の瞳をした男性だった。顔は驚くほど整っているのに女性的では無く、俺と違ってきっちり筋肉もついている。
「…なんでここにいるんだ?」
「そんなの任務に決まってるだろ?」
楽し気に笑う男性に、ハルは苦笑しながら確かにと返した。見知らぬ男性に、抱き着かれたままで。振り払うでも拒否するでも無く、俺の目の前で他の人に抱き着かれたまま普通に会話するハルに、俺はぐっと奥歯を噛み締めた。
何だか俺とハルよりもお似合いの二人のように見えてきてしまって、すごくもやもやする。俺の動揺なんて気づかなかったハルは、当然のように背中に手を回してその男性の体を抱き返した。明らかに普通の友人や知り合いとは違う距離感だ。
ハルはあんなに格好良いんだし、ああいう事だって慣れてたし、元恋人だってそりゃあいるって覚悟はしてたよ。でも、こんな形で仲の良さを見せつけられるとは思ってもみなかった。
ぐるぐると嫉妬心が渦巻いてしまって、こういう時にどんな顔をすれば良いのか分からない。
「手紙は読んだのか?」
「読んだからハルって呼びかけたんだよ」
え、ハルから手紙を出していたのか?しかも騎士団で目覚めてから、わざわざ目を覚ましたと知らせるための手紙を書いてまで?
「なあ、アキト。今日は俺達の部屋に一緒に泊まらないか?」
急に明るい声でそう尋ねてきたカーディは、じろりと思いっきりハルを睨みつけた。
「は?急にどうしたんだ?」
まだ抱き着かれたままのハルは、俺たちの方を驚いた顔で見つめてきた。
「クリスは、どう思う?」
「そうですね、今日はアキトさんは俺達の部屋に来るべきでしょうね?少なくとも恋人の目の前で他の人に抱き着かれたままでいるような奴は、最低だと思いますから」
「待ってくれ?」
「そうだよなー元恋人だか何だか知らないけど、その距離感を見せつけるのは趣味が悪いと思うし、ちゃんと拒否しないと駄目だろう」
クリスだったら絶対に俺の前でそんな事はしないぞと、俺を背中にかばいながらカーディが続けた。
「ちょっと待ってくれ」
「…まあ、私はその方が誰かは知ってますけど、きちんと説明をしないと。今もあなたの大事な恋人を傷つけてるんですが気づいてますか?」
意味深にそう言ったクリスさんの言葉に、ハルは慌てて抱き着いていた男性を振りほどいた。
「アキト、誤解しないで欲しい!」
「…誤解?」
俺の目にはまださっきの親密な二人の様子が焼き付いてるんだけど、誤解って言った?一周回ってちょっと腹が立ってきた俺は、じろっとハルを睨みつけながらそう尋ねた。恋人の前で他の人に抱き着かれたんだから、少しぐらい怒る権利はある筈だ。
「ああ、この子が手紙に書いてたハルの大事な人?」
乱暴に振り払われたのにニコニコと笑っていたその男性は、嬉しそうに俺の方へと近づいてきた。
「初めまして、ウィリアム・ウェルマールです」
ウェルマール?ってハルの苗字だよね?そう思った俺は、次の瞬間にはハルの腕の中に抱きこまれていた。
「ハル、これを渡しておきますね」
「ああ、ありがとう」
クリスさんがハルに手渡したのは、小さな魔石のついたカードのような物だった。あれが部屋の鍵なのかな?本当にホテルみたいだな。
「この船の中では護衛は必要ありませんからね」
「本当に良いのか?」
「ええ、ゆっくりと船旅を楽しんでください」
「ありがとう、クリス」
「ありがとうございます」
気にしなくて下さいとクリスさんが返事をした瞬間、ロビーに大きな声が響いた。
「ハル!ハルじゃないか?」
落ち着いた雰囲気のロビーに急に響いた大きな声に、俺達は驚いて振り返った。さっき見た揃いの制服を着ていた一団から、一人の男性が俺達の方へ走り寄ってきているのが見えた。
「会いたかったよ、ハル!」
勢いよく駆け寄ってきた男性は少しの躊躇も一切の遠慮も無く、思いっきり真正面からハルに抱き着いた。え。抱き着いた?
「ああ、ハルの香りだ、本物だね」
ハルよりも少し小柄なその男性は、胸元に顔をうずめるようにしてハルに笑いかけている。赤みがかった茶色の髪と、ハルとお揃いみたいな紫の瞳をした男性だった。顔は驚くほど整っているのに女性的では無く、俺と違ってきっちり筋肉もついている。
「…なんでここにいるんだ?」
「そんなの任務に決まってるだろ?」
楽し気に笑う男性に、ハルは苦笑しながら確かにと返した。見知らぬ男性に、抱き着かれたままで。振り払うでも拒否するでも無く、俺の目の前で他の人に抱き着かれたまま普通に会話するハルに、俺はぐっと奥歯を噛み締めた。
何だか俺とハルよりもお似合いの二人のように見えてきてしまって、すごくもやもやする。俺の動揺なんて気づかなかったハルは、当然のように背中に手を回してその男性の体を抱き返した。明らかに普通の友人や知り合いとは違う距離感だ。
ハルはあんなに格好良いんだし、ああいう事だって慣れてたし、元恋人だってそりゃあいるって覚悟はしてたよ。でも、こんな形で仲の良さを見せつけられるとは思ってもみなかった。
ぐるぐると嫉妬心が渦巻いてしまって、こういう時にどんな顔をすれば良いのか分からない。
「手紙は読んだのか?」
「読んだからハルって呼びかけたんだよ」
え、ハルから手紙を出していたのか?しかも騎士団で目覚めてから、わざわざ目を覚ましたと知らせるための手紙を書いてまで?
「なあ、アキト。今日は俺達の部屋に一緒に泊まらないか?」
急に明るい声でそう尋ねてきたカーディは、じろりと思いっきりハルを睨みつけた。
「は?急にどうしたんだ?」
まだ抱き着かれたままのハルは、俺たちの方を驚いた顔で見つめてきた。
「クリスは、どう思う?」
「そうですね、今日はアキトさんは俺達の部屋に来るべきでしょうね?少なくとも恋人の目の前で他の人に抱き着かれたままでいるような奴は、最低だと思いますから」
「待ってくれ?」
「そうだよなー元恋人だか何だか知らないけど、その距離感を見せつけるのは趣味が悪いと思うし、ちゃんと拒否しないと駄目だろう」
クリスだったら絶対に俺の前でそんな事はしないぞと、俺を背中にかばいながらカーディが続けた。
「ちょっと待ってくれ」
「…まあ、私はその方が誰かは知ってますけど、きちんと説明をしないと。今もあなたの大事な恋人を傷つけてるんですが気づいてますか?」
意味深にそう言ったクリスさんの言葉に、ハルは慌てて抱き着いていた男性を振りほどいた。
「アキト、誤解しないで欲しい!」
「…誤解?」
俺の目にはまださっきの親密な二人の様子が焼き付いてるんだけど、誤解って言った?一周回ってちょっと腹が立ってきた俺は、じろっとハルを睨みつけながらそう尋ねた。恋人の前で他の人に抱き着かれたんだから、少しぐらい怒る権利はある筈だ。
「ああ、この子が手紙に書いてたハルの大事な人?」
乱暴に振り払われたのにニコニコと笑っていたその男性は、嬉しそうに俺の方へと近づいてきた。
「初めまして、ウィリアム・ウェルマールです」
ウェルマール?ってハルの苗字だよね?そう思った俺は、次の瞬間にはハルの腕の中に抱きこまれていた。
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