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373.【ハル視点】アキトの許し
兄さんが自己紹介をしているのは聞こえたけれど、それどころでは無かった俺はアキトをぎゅっと抱きしめた。
「アキト、ごめん。傷つけてごめん。誤解させてごめんね。これは正真正銘俺と血の繋がった実の兄なんだ…」
弁解する声が震えているのが我ながら情けないけれど、今はそんな事を気にしている場合じゃない。今必要なのはアキトにきちんと説明をする事だ。
「ねえ、さすがにお兄ちゃん捕まえてこれ扱いはひどくない?」
苦笑しながらもそう言いつのるウィル兄にも、今の俺には気を配る余裕なんて無かった。
「うちの家族は昔からこういう触れ合いが多い家なんだ。それが当然だと思って育ってきたから、その…家族に対してだけは咄嗟に拒否できないというか…いや、こんなのはただの言い訳だな。悪いのは間違いなく俺だ」
本当にごめんなさいと、俺は更に言葉を続けた。アキトの言葉を聞くのが怖くて、目も合わせずにひたすら言い訳を続ける俺の姿はさぞ滑稽だろうな。
「あの…」
「先にこれだけは言っておきたいんだけど――相手が例え誰であっても、俺は身内とアキト以外には絶対にこんな風に簡単に抱き着かせたりしないからね?」
意を決して視線を向ければ、アキトはまっすぐに俺の目を見返してくれた。
「俺の剣と、それにアキトに誓って約束する」
「あのさ…ハル?」
「アキトが嫌だって言うなら、身内にだってもう抱き着かせないようにするから、だから…別れるなんて言わないで?」
必死でそう言葉にすれば、アキトは呆れたように苦笑を浮かべた。
「さっきから言おうと思ってたんだけど」
「…うん」
どんな言葉が飛び出してくるんだろうと俺は身構えた。恨み事でも文句でも何でも良い。恋人をやめるという言葉以外なら、どんな言葉だって受け入れる。
「まさかお兄さんだと思わなかったから、ハルの元恋人とかなのかなとは疑ってたけど、別れたいなんて言わないよ?だって今の恋人は俺だし」
「アキト…ありがとう」
もう一度きゅっと抱きしめてから、腕の中のアキトの体をそっと解放する。正直に言えば名残惜しくはあったけれど、人前で抱き着かれるのはアキトにとっては恥ずかしい事の筈だからな。
その代わりにと、俺はそっとアキトと手を繋いだ。繋いだ手を振りほどかれない事に安堵した俺を見て、ウィル兄は楽し気に笑って口を開いた。
「はー変われば変わるもんだね」
揶揄うような一言だったが、その表情は嬉しそうにほころんでいた。
「自分でもびっくりだよ」
「そうだろうね。それよりハルの大事な人、紹介してくれないの?」
そう尋ねられた俺は、少し考えてから口を開いた。
「俺の世界で一番大事な人、アキト ヒイラギだ」
「アキトです。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。ちなみに俺は二番目だよ。よく母親似って言われる。目の色だけ父親に似たんだけどね」
朗らかに笑うウィル兄の説明を聞きながら、もしここにいるのがファーガス兄さんだったら元恋人なんて誤解は産まなかっただろうなと思った。家族で唯一の母親似がこのウィル兄で、長兄であるファーガス兄さんと俺はよく似ていると言われるから。
「あの、誤解してすみませんでした」
「いやいや、アキトくんが謝る必要は無いよ」
ウィル兄の否定に続いて、俺も慌てて口を開いた。
「そうだよ、本当にごめんね」
「ハルももう謝らなくて良いから」
アキトはそう言うと、反射的にまた謝ろうとしてしまった俺の口を伸ばした手でそっと押さえた。しかもふわりと笑って俺を見上げてくる。ああ、愛おしいという言葉はこういう時に使うんだな。
「…ハル、アキトくん」
「はい」
「ウィル兄、どうした?」
「二人のこれからに祝福を」
不意に告げられた祝福の言葉に、アキトと俺は顔を見合わせた。お互いのびっくり顔を見つめていたら、じわじわと嬉しさが胸いっぱいに広がってくる。
「ありがとうございます」
「ありがとう」
俺とアキトの綺麗に重なった返事に、ウィル兄はにっこりと笑みを浮かべた。
「どういたしまして。二人は息もぴったりだね」
「アキト、ごめん。傷つけてごめん。誤解させてごめんね。これは正真正銘俺と血の繋がった実の兄なんだ…」
弁解する声が震えているのが我ながら情けないけれど、今はそんな事を気にしている場合じゃない。今必要なのはアキトにきちんと説明をする事だ。
「ねえ、さすがにお兄ちゃん捕まえてこれ扱いはひどくない?」
苦笑しながらもそう言いつのるウィル兄にも、今の俺には気を配る余裕なんて無かった。
「うちの家族は昔からこういう触れ合いが多い家なんだ。それが当然だと思って育ってきたから、その…家族に対してだけは咄嗟に拒否できないというか…いや、こんなのはただの言い訳だな。悪いのは間違いなく俺だ」
本当にごめんなさいと、俺は更に言葉を続けた。アキトの言葉を聞くのが怖くて、目も合わせずにひたすら言い訳を続ける俺の姿はさぞ滑稽だろうな。
「あの…」
「先にこれだけは言っておきたいんだけど――相手が例え誰であっても、俺は身内とアキト以外には絶対にこんな風に簡単に抱き着かせたりしないからね?」
意を決して視線を向ければ、アキトはまっすぐに俺の目を見返してくれた。
「俺の剣と、それにアキトに誓って約束する」
「あのさ…ハル?」
「アキトが嫌だって言うなら、身内にだってもう抱き着かせないようにするから、だから…別れるなんて言わないで?」
必死でそう言葉にすれば、アキトは呆れたように苦笑を浮かべた。
「さっきから言おうと思ってたんだけど」
「…うん」
どんな言葉が飛び出してくるんだろうと俺は身構えた。恨み事でも文句でも何でも良い。恋人をやめるという言葉以外なら、どんな言葉だって受け入れる。
「まさかお兄さんだと思わなかったから、ハルの元恋人とかなのかなとは疑ってたけど、別れたいなんて言わないよ?だって今の恋人は俺だし」
「アキト…ありがとう」
もう一度きゅっと抱きしめてから、腕の中のアキトの体をそっと解放する。正直に言えば名残惜しくはあったけれど、人前で抱き着かれるのはアキトにとっては恥ずかしい事の筈だからな。
その代わりにと、俺はそっとアキトと手を繋いだ。繋いだ手を振りほどかれない事に安堵した俺を見て、ウィル兄は楽し気に笑って口を開いた。
「はー変われば変わるもんだね」
揶揄うような一言だったが、その表情は嬉しそうにほころんでいた。
「自分でもびっくりだよ」
「そうだろうね。それよりハルの大事な人、紹介してくれないの?」
そう尋ねられた俺は、少し考えてから口を開いた。
「俺の世界で一番大事な人、アキト ヒイラギだ」
「アキトです。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。ちなみに俺は二番目だよ。よく母親似って言われる。目の色だけ父親に似たんだけどね」
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「あの、誤解してすみませんでした」
「いやいや、アキトくんが謝る必要は無いよ」
ウィル兄の否定に続いて、俺も慌てて口を開いた。
「そうだよ、本当にごめんね」
「ハルももう謝らなくて良いから」
アキトはそう言うと、反射的にまた謝ろうとしてしまった俺の口を伸ばした手でそっと押さえた。しかもふわりと笑って俺を見上げてくる。ああ、愛おしいという言葉はこういう時に使うんだな。
「…ハル、アキトくん」
「はい」
「ウィル兄、どうした?」
「二人のこれからに祝福を」
不意に告げられた祝福の言葉に、アキトと俺は顔を見合わせた。お互いのびっくり顔を見つめていたら、じわじわと嬉しさが胸いっぱいに広がってくる。
「ありがとうございます」
「ありがとう」
俺とアキトの綺麗に重なった返事に、ウィル兄はにっこりと笑みを浮かべた。
「どういたしまして。二人は息もぴったりだね」
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