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380.対の腕輪
しばらく抱きしめた後、ハルは不意に俺の体を解放すると立ち上がった。
「アキト、ちょっとだけここで待っててくれる?」
「?…うん」
ハルは俺の返事を聞くなり、すぐにいそいそと部屋から出て行ってしまった。このまま甘い時間を過ごすのかなと期待していただけに、残念な気持ちが湧いてくる。
言われた通りに開いたままのドアをぼんやりと見つめて待っていれば、ハルはすぐに戻ってきた。
「ただいま」
「うん、おかえり」
にっこり笑ったハルの手には、細かい細工の施された綺麗な箱が乗っていた。
「こんなに早く役立つとは思わなかったけど、用意しておいて良かったよ」
ハルは嬉しそうにそういうと、俺の目の前にその箱を差し出した。
「はい、どうぞ」
正直に言うと箱に触れるのも躊躇してしまうほど、高級そうな箱だった。でもこんなに笑顔で差し出されたら、受け取る以外の選択肢なんてないよね。恐る恐る受け取れば、ハルはにっこりと笑みを浮かべて続けた。
「開けてみて。気に入ってもらえたら良いんだけど…」
ハルの言葉を聞きながら蓋を開けて箱の中身を覗き込めば、そこには銀色のお揃いの腕輪が二つ並んでいた。細身の腕輪にはぐるりと全体を覆うように植物の模様が刻まれていて、シックなのに目を引く存在感があった。
「うわー綺麗な腕輪だね」
「ありがとう。特にここがこだわりなんだ」
ハルが指差した場所を目で追えば、まるで植物の実のような意匠で二つの石が並んでいる事に気づいた。
うっすら茶色がかった黒の石と、透き通るような紫色の石が仲良く並んでいる。紫色の石の方は、まるでハルの目の色みたいな綺麗な色だ。視線を外せずに眺めていると、ハルは気に入った?と尋ねてくる。
「うん、すごく綺麗だ…」
「気に入ってくれたなら良かった。これはね、伴侶候補同士が着ける伝統の腕輪なんだ」
これが着いてるだけでも、伴侶候補がいるっていう証になるんだよとハルは続けた。
「ちなみにこの石は、それぞれの目の色を模しているんだ」
「こ…これって宝石なの?」
すっごい高い物じゃないのかと怯んで思わずそう尋ねてしまったけれど、ハルは笑って首を振った。
「これは宝石じゃないよ」
「…本当に?」
「俺がアキトに嘘を言うと思う?」
「あー…うん。ハルは俺に嘘なんて言わないよね」
あっさりと納得した俺を見て、ハルはくすぐったそうに笑った。
「伴侶候補同士が着けるこの腕輪、貰ってくれる?」
「えーと、嬉しいけど…ハルの分は俺が買いたいな」
俺からもハルに記念の何かを贈りたいからとそう告げれば、ハルは困ったと言いたげに眉間にしわを寄せた。あれ、何か駄目な感じ?
「アキト、ごめんね。この腕輪は伴侶候補になって欲しいって言った方が、用意するものなんだ」
伝統的に昔からそういう物だからこれは俺から贈るものなんだと言い切られると、それ以上は食い下がり難くなった。
「そっか、分かった」
残念だなと思いながらも同意を返せば、ハルはすぐに代替案を提案してくれた。
「そのかわりって言ったら何だけど、実際に伴侶になった時の指輪は俺と一緒に選ぼう?」
「え…!?伴侶になったら指輪なの?」
「うん、そうだよ。次はお互いの色の石を使った指輪を交換するんだよ。あ…そういえばこれも異世界から伝わった文化だな…もしかして知ってたりする?」
「うん。知ってるよ。うちの両親も指輪はずっと外さずに着けてたから…結婚イコール指輪って思いはあるかも」
「ああ、やっぱりそうなんだ?じゃあ一緒に選ぶって今から約束しておかない?」
「うんっ!約束しよう!」
にっこり笑って両手を取ったハルは、そっと手を引くとソファから俺を立ち上がらせた。立ち上がった俺を満足そうに見つめたハルは、そのまま俺の前に片膝をついて跪いた。
「アキト ヒイラギ。あなたの伴侶候補として共にある事を許して下さい。受け入れる気持ちがあるならば、この腕輪をあなたの手に着けさせて頂けますか」
キリリと引き締まった表情で俺を見上げてくるハルの姿に、心臓がバクバクと音を立てた。不意打ちで浴びるには、ちょっと格好良すぎるんだよね。なんだか騎士モードの時のハルみたいなんだよ。
あまりの格好良さにわーわー叫びたくなるぐらいには動揺したけれど、俺は澄ました顔で答えた。
「はい。こちらこそ伴侶候補としてお願いします」
ハルに合わせて丁寧に答えてみた俺に、ハルは引き締まった表情をくしゃりと歪めて微笑んだ。
「アキト、手を」
「うん」
すっと手を差し出せば、ハルの手が俺の腕に腕輪を通した。ちょっと大きいかなと思ったけれど、ハルが何事か呟くなり腕輪はきっちりと俺の腕のサイズに縮んでいった。
「俺にも腕輪はめてくれる?」
「もちろん。えーと…跪いた方が良いのかな?」
「いや、普通で大丈夫だよ」
そう言って差し出されたハルの腕に、自分の手で腕輪をはめる。ハルがまた何かを呟けば、ハルの腕輪もちょうど良いサイズに変化したみたいだ。
「アキト、ちょっとだけここで待っててくれる?」
「?…うん」
ハルは俺の返事を聞くなり、すぐにいそいそと部屋から出て行ってしまった。このまま甘い時間を過ごすのかなと期待していただけに、残念な気持ちが湧いてくる。
言われた通りに開いたままのドアをぼんやりと見つめて待っていれば、ハルはすぐに戻ってきた。
「ただいま」
「うん、おかえり」
にっこり笑ったハルの手には、細かい細工の施された綺麗な箱が乗っていた。
「こんなに早く役立つとは思わなかったけど、用意しておいて良かったよ」
ハルは嬉しそうにそういうと、俺の目の前にその箱を差し出した。
「はい、どうぞ」
正直に言うと箱に触れるのも躊躇してしまうほど、高級そうな箱だった。でもこんなに笑顔で差し出されたら、受け取る以外の選択肢なんてないよね。恐る恐る受け取れば、ハルはにっこりと笑みを浮かべて続けた。
「開けてみて。気に入ってもらえたら良いんだけど…」
ハルの言葉を聞きながら蓋を開けて箱の中身を覗き込めば、そこには銀色のお揃いの腕輪が二つ並んでいた。細身の腕輪にはぐるりと全体を覆うように植物の模様が刻まれていて、シックなのに目を引く存在感があった。
「うわー綺麗な腕輪だね」
「ありがとう。特にここがこだわりなんだ」
ハルが指差した場所を目で追えば、まるで植物の実のような意匠で二つの石が並んでいる事に気づいた。
うっすら茶色がかった黒の石と、透き通るような紫色の石が仲良く並んでいる。紫色の石の方は、まるでハルの目の色みたいな綺麗な色だ。視線を外せずに眺めていると、ハルは気に入った?と尋ねてくる。
「うん、すごく綺麗だ…」
「気に入ってくれたなら良かった。これはね、伴侶候補同士が着ける伝統の腕輪なんだ」
これが着いてるだけでも、伴侶候補がいるっていう証になるんだよとハルは続けた。
「ちなみにこの石は、それぞれの目の色を模しているんだ」
「こ…これって宝石なの?」
すっごい高い物じゃないのかと怯んで思わずそう尋ねてしまったけれど、ハルは笑って首を振った。
「これは宝石じゃないよ」
「…本当に?」
「俺がアキトに嘘を言うと思う?」
「あー…うん。ハルは俺に嘘なんて言わないよね」
あっさりと納得した俺を見て、ハルはくすぐったそうに笑った。
「伴侶候補同士が着けるこの腕輪、貰ってくれる?」
「えーと、嬉しいけど…ハルの分は俺が買いたいな」
俺からもハルに記念の何かを贈りたいからとそう告げれば、ハルは困ったと言いたげに眉間にしわを寄せた。あれ、何か駄目な感じ?
「アキト、ごめんね。この腕輪は伴侶候補になって欲しいって言った方が、用意するものなんだ」
伝統的に昔からそういう物だからこれは俺から贈るものなんだと言い切られると、それ以上は食い下がり難くなった。
「そっか、分かった」
残念だなと思いながらも同意を返せば、ハルはすぐに代替案を提案してくれた。
「そのかわりって言ったら何だけど、実際に伴侶になった時の指輪は俺と一緒に選ぼう?」
「え…!?伴侶になったら指輪なの?」
「うん、そうだよ。次はお互いの色の石を使った指輪を交換するんだよ。あ…そういえばこれも異世界から伝わった文化だな…もしかして知ってたりする?」
「うん。知ってるよ。うちの両親も指輪はずっと外さずに着けてたから…結婚イコール指輪って思いはあるかも」
「ああ、やっぱりそうなんだ?じゃあ一緒に選ぶって今から約束しておかない?」
「うんっ!約束しよう!」
にっこり笑って両手を取ったハルは、そっと手を引くとソファから俺を立ち上がらせた。立ち上がった俺を満足そうに見つめたハルは、そのまま俺の前に片膝をついて跪いた。
「アキト ヒイラギ。あなたの伴侶候補として共にある事を許して下さい。受け入れる気持ちがあるならば、この腕輪をあなたの手に着けさせて頂けますか」
キリリと引き締まった表情で俺を見上げてくるハルの姿に、心臓がバクバクと音を立てた。不意打ちで浴びるには、ちょっと格好良すぎるんだよね。なんだか騎士モードの時のハルみたいなんだよ。
あまりの格好良さにわーわー叫びたくなるぐらいには動揺したけれど、俺は澄ました顔で答えた。
「はい。こちらこそ伴侶候補としてお願いします」
ハルに合わせて丁寧に答えてみた俺に、ハルは引き締まった表情をくしゃりと歪めて微笑んだ。
「アキト、手を」
「うん」
すっと手を差し出せば、ハルの手が俺の腕に腕輪を通した。ちょっと大きいかなと思ったけれど、ハルが何事か呟くなり腕輪はきっちりと俺の腕のサイズに縮んでいった。
「俺にも腕輪はめてくれる?」
「もちろん。えーと…跪いた方が良いのかな?」
「いや、普通で大丈夫だよ」
そう言って差し出されたハルの腕に、自分の手で腕輪をはめる。ハルがまた何かを呟けば、ハルの腕輪もちょうど良いサイズに変化したみたいだ。
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