生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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385.【ハル視点】想像を超える返事

「アキト、俺の伴侶になってくれないかな?」
「え…」

 アキトは小さく驚きの声をこぼし、次に大きく目を見開いて、そしてそのまま固まってしまった。よほど予想外な言葉だったんだろうか。少なくとも反応は嫌そうでは無かったと思うけれど、これはただの俺の願望だろうか。

 アキトは固まったまま、ギギギと俺の方を向いた。あれ?これはもしかして伝わってないんじゃないかと不安になってきた。

「あ、もちろん今すぐにこの場で結婚して欲しいとか、さすがにそんな無茶は言わないよ?」

 俺は慌ててそう続けた。

「もしアキトさえ良ければ、俺の伴侶候補になって欲しいって意味なんだ」
「あの…ハル。伴侶候補っていうのはどういう意味…?」

 そう尋ねられた瞬間、俺は自分の言葉の足りなさを心から反省した。異世界とこの世界では文化も環境も違うと分かっているのに、配慮ができていなかった。次は気をつけようと決意しながら、俺は冷静を装ってアキトに尋ねた。

「あー、もしかしてアキトの世界にはそんな言葉は無かったのかな?」
「うん、無かったね」
「なるほど、じゃあ説明するね。伴侶候補っていうのはこの世界で言う結婚を前提に付き合ってる人達の関係を言うんだ」

 この説明で通じるだろうかと悩みながら説明すれば、アキトはすぐに答えてくれた。

「えーっと…つまりは婚約者って事?」
「うん、そうだね。貴族が交わすのは婚約で、一般的には伴侶候補の方が通りが良いかな」

 そこまで説明してから、この説明だと俺が貴族だと知っているアキトは、本気じゃないのかと誤解するんじゃないかと気づいてしまった。俺は一応貴族だけど今は表向きは冒険者だから伴侶候補の方がふさわしいかと思ったんだと、慌てて説明を付け加えた。

「なるほど…説明ありがと」
「どういたしまして」

 うつむいてしまったアキトに、俺は恐る恐る声をかける。

「やっぱり早すぎるかな?恋人になってからまだそんなに時間も経ってないのに、急ぎ過ぎじゃないかって思われるかなと言えずにいたんだ」

 そこで言葉を区切った俺は、アキトの手を握りしめた手にきゅっと力を込める。

「影響受けてて格好悪いんだけど……クリスとカーディさんの関係を見てたら、伴侶って良いなって思ったんだ」

 アキトはハッとした様子で俺の方を見て、こくこくと頷いてくれた。アキトもそう思っていたって事かな。

「伴侶候補ならいつでも隣にいるのが当たり前だし、周りからももうすぐ伴侶になる二人として見てもらえるんだ。…だから余計なちょっかいを出してくる人も減ると思うんだよね」

 もしそんな奴がいても、アキトは俺の伴侶候補ですがと牽制できるようになる。そう思っての発言だったけれど、当のアキトは不思議そうに首を傾げていた。

 まるで自分に興味を持つ人なんていないと言いたげな反応だな。あんなに色んな人から色を含んだ視線を向けられているのに、まさか全く気づいていないとは。

 幽霊だった時は少しくらい自覚してくれないと危険じゃないかと思っていたけれど、今は生身で隣にいられるんだからそのままでいて欲しい気持ちも少しだけあるな。

「あー…それに伴侶候補って立場があれば、もうアキトを不安にさせたりしないかなって気持ちもちょっとだけあるんだけどね…」

 もう誤解されないようにこれからは気をつけるつもりだけど、それでももしもの時に伴侶候補という立場がアキトの支えになってくれるかななんて考えもあった。

「でもこれだけは断言できるよ。俺はアキトとずっと一緒にいたいし、いずれは家族にもなりたいって心の底から思ってる……アキトは?」

 まっすぐに見つめて尋ねれば、アキトは震える声で答えてくれた。

「うん…俺も。俺もハルとずっと一緒にいたいし、いずれは家族になりたいって思ってるよ。早すぎるなんて思わない」
「っ!じゃあ…!」

 嬉しい予感に思わず笑顔になった俺の目を、アキトはまっすぐに見つめてくる。

「俺をハルの伴侶候補にして欲しい」

 多分俺は『はい』とか『良いよ』とか、そんな返事でもきっと喜んだと思う。けれどアキトの返事は。俺の想像をさらりと超えてきた。アキトが自分の意思で、伴侶候補にして欲しいと言ってくれるのか。

「ありがとう、アキトッ!」

 そう叫ぶなり、俺はガバッとアキトに抱き着いた。アキトは楽し気にふふと笑い声を上げただけで、抵抗もせずに俺の腕の中に収まってくれた。
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