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389.二人きりの夕食
たくさんの料理が並んだテーブルを挟んで、俺達は向かい合わせで椅子に腰を下ろした。
「いただきまーす」
「いただきます」
綺麗な盛り付けに期待を膨らませながら口に運べば、目にも鮮やかな料理の数々はどれも驚くほど美味しかった。
船の上でとる食事というよりは、すごくこだわりのある有名レストランでの食事のような満足感だった。
香ばしく焼き上げられた大きなステーキは、ステーキ大好きなハルも唸るほどの美味しさだったし、カゴに入っていた小ぶりなパンは、硬いものから柔らかいものまで素材や種類も豊富でついつい次々と手が伸びてしまった。
どの料理も美味しかったんだけどなかでも俺が一番気に入ったのは、まさかのサラダだった。かかってるドレッシングがあまりに美味しくてね、一口食べて二人で顔を見合わせちゃったぐらいだったんだよ。
再現まではできなくても似たような雰囲気のドレッシングが作れたりしないかなーなんて言い合いながら、何が入ってるのかを二人で予想しながら食べるのはすごく楽しかった。
デザートは果物がたっぷりと乗った、こぶりなタルトみたいなものだった。甘い果物にさっぱりクリームを合わせてあってとっても美味しかった。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
自然に揃った挨拶が、なんだか嬉しい。
「どれも本当に美味しかったねー」
「うん、すごく美味しかったね。まさかここまでとは思わなかったよ」
「船の上って事、忘れそうになるよね」
不思議な事に揺れとかも一切感じないから、何なら動いてる事すら忘れそうになるんだけど。そう告げれば、ハルも笑いながら同意してくれた。
「分かるよ。窓の外の景色を見てる時ぐらいしか、動いてるって思わないよね」
「そう!そうなんだよ!」
「乗合船なら結構揺れるんだけどね」
「あ、やっぱりそうなんだ?」
「あっちは揺れるから船酔いで苦しんでる人もたくさんいるよ。まあ、アキトは川下りも平気だったから大丈夫かもしれないけどね」
あ、そういえばあの時の川下りは大丈夫だったな。
「そうだと良いんだけど…あんまり船に乗った事ないからなぁ」
「そうなんだ。じゃあ乗合船もいつか乗ってみたら良いかもね」
「うん、乗ってみたいなー」
そんな事を楽しく喋りながら、俺達はいそいそとお皿をワゴンの中にしまっていった。ハルによると、後は部屋の外に出しておくだけで回収してくれるんだって。この船のサービスって本当にすごいよね。
ワゴンを外に出した後は、二人揃って隣の部屋に移動した。さらりと俺の好きな果実水を出してくれたハルにお礼を言って、またソファに並んで座る。
食事を楽しんでいる間に窓の外の景色はもうすっかり夜になっていて、まるで切り絵みたいにみえる真っ黒な木々のシルエットと星空の対比がとっても綺麗だった。
星空を眺めながら果実水を飲む俺の隣で、ハルもお気に入りのお茶を美味しそうに飲んでいる。
穏やかな時間が流れるなか、不意にハルが口を開いた。
「アキト、改めて伴侶候補になってくれてありがとう」
「え、急にどうしたの?」
「さっきから考えたんだけど…言っておきたいことがあってね」
真剣な表情を浮かべたハルに、俺はそっと姿勢を正した。何か大事な話なんだなと思ったから。
「もし、アキトが…元の世界に戻る方法が見つかったらさ」
「…うん」
戻る方法が見つかったらか。そうなったら、一体どうしたら良いんだろうな。両親にはもちろん会いたいけど、ハルを置いていきたくもない。その時になったら、俺はどんな決断をするんだろう。
「そしたらさ、俺も一緒について行っても良い?」
「え…」
驚いて見上げたハルの表情はどこまでも穏やかで、俺に向かって優しく笑っていた。
「駄目かな?」
「駄目じゃないけど…でも、ハルの家族は?」
「きっとうちの家族は、遠い場所でも元気にやってるなら良いって言うよ」
「でも、もう会えなくなるんだよ?」
往復できるようになるならともかく、もし一方通行だったら。
「それでも俺は、アキトと離れたくないんだ。家族にはその可能性もあると前もって話しておくよ。アキトは急にこの世界に来たんだし、事前に話が出来るだけで全然違うと思うんだよね」
明るくそう言いきったハルに、恥ずかしながら俺は思いっきり泣き出してしまった。
だって俺の世界は、ハルにとってはただの異世界なんだよ。常識だって文化だって全然違う世界に、俺のためだけに飛び込む覚悟をしてくれるなんて。そこまで俺の事を想ってくれてるんだなって実感したら、我慢なんてできなかったんだ。
「わっ、アキト、泣く程嫌だった?」
唐突にボロボロと泣き出した俺に、ハルは本気で驚いたみたいで大慌てでそう尋ねた。何も答えられなかった俺はふるふると首を振りながら、思いっきりハルの体に抱き着いた。
言葉にはできなかったけどハルには俺の気持ちは伝わったみたいだ。そのまま俺の体を受け止めると何も言わずに、落ち着くまで俺の頭を優しく撫でてくれた。
「はーすっごい泣いちゃった…恥ずかしいな」
「嬉しくて泣いてくれたんなら、俺は嬉しいよ」
泣いてても怒ってても、アキトの感情は何でも見せて欲しいんだけどねなんて言ってくれるハルの頬に、俺は不意打ちでそっとキスを贈った。
「ありがと、ハル。大好きだよ」
びっくり顔のハルに俺は笑って、もう一度今度は唇に口づけた。
「いただきまーす」
「いただきます」
綺麗な盛り付けに期待を膨らませながら口に運べば、目にも鮮やかな料理の数々はどれも驚くほど美味しかった。
船の上でとる食事というよりは、すごくこだわりのある有名レストランでの食事のような満足感だった。
香ばしく焼き上げられた大きなステーキは、ステーキ大好きなハルも唸るほどの美味しさだったし、カゴに入っていた小ぶりなパンは、硬いものから柔らかいものまで素材や種類も豊富でついつい次々と手が伸びてしまった。
どの料理も美味しかったんだけどなかでも俺が一番気に入ったのは、まさかのサラダだった。かかってるドレッシングがあまりに美味しくてね、一口食べて二人で顔を見合わせちゃったぐらいだったんだよ。
再現まではできなくても似たような雰囲気のドレッシングが作れたりしないかなーなんて言い合いながら、何が入ってるのかを二人で予想しながら食べるのはすごく楽しかった。
デザートは果物がたっぷりと乗った、こぶりなタルトみたいなものだった。甘い果物にさっぱりクリームを合わせてあってとっても美味しかった。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
自然に揃った挨拶が、なんだか嬉しい。
「どれも本当に美味しかったねー」
「うん、すごく美味しかったね。まさかここまでとは思わなかったよ」
「船の上って事、忘れそうになるよね」
不思議な事に揺れとかも一切感じないから、何なら動いてる事すら忘れそうになるんだけど。そう告げれば、ハルも笑いながら同意してくれた。
「分かるよ。窓の外の景色を見てる時ぐらいしか、動いてるって思わないよね」
「そう!そうなんだよ!」
「乗合船なら結構揺れるんだけどね」
「あ、やっぱりそうなんだ?」
「あっちは揺れるから船酔いで苦しんでる人もたくさんいるよ。まあ、アキトは川下りも平気だったから大丈夫かもしれないけどね」
あ、そういえばあの時の川下りは大丈夫だったな。
「そうだと良いんだけど…あんまり船に乗った事ないからなぁ」
「そうなんだ。じゃあ乗合船もいつか乗ってみたら良いかもね」
「うん、乗ってみたいなー」
そんな事を楽しく喋りながら、俺達はいそいそとお皿をワゴンの中にしまっていった。ハルによると、後は部屋の外に出しておくだけで回収してくれるんだって。この船のサービスって本当にすごいよね。
ワゴンを外に出した後は、二人揃って隣の部屋に移動した。さらりと俺の好きな果実水を出してくれたハルにお礼を言って、またソファに並んで座る。
食事を楽しんでいる間に窓の外の景色はもうすっかり夜になっていて、まるで切り絵みたいにみえる真っ黒な木々のシルエットと星空の対比がとっても綺麗だった。
星空を眺めながら果実水を飲む俺の隣で、ハルもお気に入りのお茶を美味しそうに飲んでいる。
穏やかな時間が流れるなか、不意にハルが口を開いた。
「アキト、改めて伴侶候補になってくれてありがとう」
「え、急にどうしたの?」
「さっきから考えたんだけど…言っておきたいことがあってね」
真剣な表情を浮かべたハルに、俺はそっと姿勢を正した。何か大事な話なんだなと思ったから。
「もし、アキトが…元の世界に戻る方法が見つかったらさ」
「…うん」
戻る方法が見つかったらか。そうなったら、一体どうしたら良いんだろうな。両親にはもちろん会いたいけど、ハルを置いていきたくもない。その時になったら、俺はどんな決断をするんだろう。
「そしたらさ、俺も一緒について行っても良い?」
「え…」
驚いて見上げたハルの表情はどこまでも穏やかで、俺に向かって優しく笑っていた。
「駄目かな?」
「駄目じゃないけど…でも、ハルの家族は?」
「きっとうちの家族は、遠い場所でも元気にやってるなら良いって言うよ」
「でも、もう会えなくなるんだよ?」
往復できるようになるならともかく、もし一方通行だったら。
「それでも俺は、アキトと離れたくないんだ。家族にはその可能性もあると前もって話しておくよ。アキトは急にこの世界に来たんだし、事前に話が出来るだけで全然違うと思うんだよね」
明るくそう言いきったハルに、恥ずかしながら俺は思いっきり泣き出してしまった。
だって俺の世界は、ハルにとってはただの異世界なんだよ。常識だって文化だって全然違う世界に、俺のためだけに飛び込む覚悟をしてくれるなんて。そこまで俺の事を想ってくれてるんだなって実感したら、我慢なんてできなかったんだ。
「わっ、アキト、泣く程嫌だった?」
唐突にボロボロと泣き出した俺に、ハルは本気で驚いたみたいで大慌てでそう尋ねた。何も答えられなかった俺はふるふると首を振りながら、思いっきりハルの体に抱き着いた。
言葉にはできなかったけどハルには俺の気持ちは伝わったみたいだ。そのまま俺の体を受け止めると何も言わずに、落ち着くまで俺の頭を優しく撫でてくれた。
「はーすっごい泣いちゃった…恥ずかしいな」
「嬉しくて泣いてくれたんなら、俺は嬉しいよ」
泣いてても怒ってても、アキトの感情は何でも見せて欲しいんだけどねなんて言ってくれるハルの頬に、俺は不意打ちでそっとキスを贈った。
「ありがと、ハル。大好きだよ」
びっくり顔のハルに俺は笑って、もう一度今度は唇に口づけた。
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