生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
415 / 1,561

414.【ハル視点】温かい気持ち

 既に伴侶持ちの兄弟や同僚達から、話には聞いた事があった。

 伴侶候補の儀式をした。一言そう言えば、報告した友人や仕事仲間はもちろん、ただ報告の場に居合わせただけの見知らぬ人にまで盛大にお祝いをされるんだ――と。

 そういうものなんだと幸せそうに語るのを、自分には関係ないと聞き流してきたんだけどな。

 はからずも今の俺達は、まさに人がたくさんいる場所で伴侶候補の儀式の報告をした事になるわけだ。

「すまない、話が聞こえたんだが…」

 そう前置きをして声をかけてきたのは、アキトの後ろの席に座っていた老紳士だった。

「お二人は伴侶候補の儀式をしたんだってね?おめでとう」
「「ありがとうございます」」

 お礼の言葉を口にしたアキトと俺の言葉が、ぴったりと重なった。それだけで老紳士は既に息がぴったりだなと楽し気に笑っている。隣に座っていたのはおそらく彼の伴侶なのだろう。その男性も、ふふと控え目に笑ってから口を開いた。

「僕からも、おめでとう。二人がずっと幸せでありますように」

 見知らぬ人に祝われると聞いた時はもっと冷やかしのような感じなのかと思っていたんだが、これはそういうのとは全然違うな。本当に心から祝福してくれているのが伝わってきて、じんわりと胸が暖かくなってくる。

「「ありがとうございます」」

 アキトと二人でお二人にお礼を言うと、近くのテーブルの人達からも口々にお祝いの言葉が届けられる。

「伴侶候補おめでとう」
「幸せになー」
「お似合いの二人だと思うよ」
「おめでとうー!」

 俺達の邪魔にならないようにと配慮しながらも、祝いの言葉を届けてくれる姿に自然と笑みがこぼれた。

 全員にお礼の言葉を述べてから椅子に座りなおすと、カーディさんがアキトになあと声をかけた。

「ん?」
「ハルさんとアキトさえ良ければなんだけど…」
「うん?」
「どうしたんだ?」
「腕輪、もっとちゃんと見せてくれないか?」

 ワクワクした様子のカーディさんのお願いに、アキトはちらりと俺に視線を向けてきた。

 アキトに似合うようにとこだわった腕輪なんだから、むしろぜひ見て欲しいくらいだ。そう思いながらも、俺はアキトに選択肢を委ねた。

「俺は良いけど、アキトは?」
「俺ももちろん良いよ」

 腕輪が見やすいようにと考えたのか、アキトはテーブルの上に乗せた手をぐいっとカーディさんの方へと伸ばした。

「触らないから安心してね」

 そんな言葉を明らかに俺に向けて口にしたカーディさんに、思わず苦笑してしまった。

「私も良いですか?」

 律儀に尋ねてくるクリスに、アキトは笑ってどうぞと答えた。ちらりと俺の方も確認してくるクリスに、俺は軽く頷きを返した。

「うん、見れば見るほど良い腕輪だなー!」

 アキトにも俺にもすごく似合ってると、カーディは笑顔で褒めてくれた。

「石も良いですね。お二人にぴったりの色で…」
「だろう?それはかなりこだわったからな」

 クリスはこっそりと俺にだけ聞こえる小さな声で、よりによってシャドウバードの魔石にバイオレットシャークの魔石とは驚きですねと呟いた。

「クリス、アキトに石の価値は言うなよ?」
「言うわけがないでしょう?気持ちは分かりますからね」
「ああ、なるほど。クリスも相当こだわったんだろう?」
「当然でしょう」

 そんな風に俺とクリスがこそこそと石について語り合っている隣で、アキトはカーディさんとのんびりと会話を楽しんでいた。

「俺達のはこれだ!」

 そんな声につられるように視線を向ければ、カーディさんは自分の腕輪をアキトに見せている所だった。

 伴侶候補の腕輪と伴侶の指輪をつけているのは知っていたが、そういえばあまり観察した事は無かったな。俺も興味を持って覗いてみれば、そこにある腕輪は俺達のものよりも少し幅広で、表面には細かい図形がびっしりと彫りこまれていた。

「すごい、格好良いね!」
「クリスが自分で模様を描いて作ってもらったらしいんだよ」
「え、そうなの!?」
「全て自分でというわけじゃないんです。これは魔道具作りで使う魔法陣から発想を得てるんですよ」
「それでもすごいです!」
「ありがとう」
「あとはこっちだな」

 カーディさんの手が、はまっている指輪を軽く撫でるように動いた。その愛おしそうな触れ方に、俺も早くアキトの指に指輪を贈りたいなと思ってしまった。

「あ、私のも見てください!」

 自慢したいですと言いきったクリスも、カーディさんの隣にすっと手を並べる。

 カーディさんの指輪についている灰色の石は、アッシュベアの魔石だな。クリスの指輪についている緑の石は多分ドライアドの涙と呼ばれる宝石…だと思う。

 クリスも人の事は言えないなと苦笑してしまった。

「すごいね」
「こっちは模様は俺が選んだんだけど、石はクリスが譲らなくてな」

 もっと小さい石でも良いと俺は思ったんだけどと笑うカーディさんの横で、誰が見ても分かるぐらいでないと意味が無いでしょうとクリスがボソリと呟いた。

 うん、その気持ちはすごく良く分かる。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。