生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
416 / 1,561

415.【ハル視点】大きな石の理由

 俺にとっては納得しかないクリスの発言だったけれど、アキトは不思議そうに首を傾げていた。意味が分からないと言いたげな少し困ったその表情も、可愛く見えるから困る。

 カーディさんはそんなアキトに、ニヤニヤと笑いながら話しかけた。

「不思議そうな顔してるけどさ、アキトもでっかい石付きの指輪になりそうだよなぁ?」
「え、なんで?」

 本気で意味が分からないと言いたげなアキトに、カーディさんとクリスは楽し気に笑いだした。指輪についての意匠はこれからアキトと相談するつもりだけれど、確かに小さな石では満足できる気がしないな。俺はじっと見つめてくるアキトから、そっと視線を反らした。

「アキトさん、良い事を教えてあげますね。カーディの生まれた南の方の地域では『伴侶の指輪の石の大きさは、それすなわち執着の大きさだ』なんて言われてるらしいですよ?」

 指輪の石が大きくなってしまう理由を、クリスはアキトにそう説明した。他人事だと思って楽しそうだな。

「え…それって…」
「さっきクリスも言ってたけどさ、執着が大きいと誰が見ても伴侶がいるんだなーって見せつけたいから大きい石を選ぶらしいよ」
「ええ、まあ。大きい石のほうがより簡単に周りを牽制できるんですら、当然でしょう?」

 クリス、黒い笑顔が見えてしまっているんが、その表情はカーディさんに見せても大丈夫なんだろうか。思わずそう心配してしまった。

「執着の大きさって事は、つまり気持ちの大きさって事にもなるだろ?だからまあ小さい石で良いとは言ったけど、クリスにそう提案された時は嬉しかったなー」

 さらりとそう爆弾を落としたカーディさんに、哀れクリスはビシッと固まった。ああ、でもこれは固まっても仕方ないと思う。ここまではっきりと本当は指輪の石が大きいのを喜んでいたと教えてくれたんだからな。俺とアキトは思わず顔を見合わせて笑ってしまった。

「まあまだこれから指輪を選ぶんだし、二人で相談して決めれば良いよ。ハルさんも良いよね?」
「ああ、二人で選ぼうって約束はしてたんだ」

 アキトはあまり派手じゃないのを好むみたいだけど、むしろこの話題を出してくれたおかげで受け入れてくれるかもしれないな。そう思うと、今この話題を出してくれたカーディさんとクリスに感謝しても良いくらいだ。

「なら余計だったかな?」
「ううん、ありがとう」
「ありがとう、カーディさん」

 二人からお礼を言われて照れくさそうに笑っていたカーディさんに、衝撃から立ち直ったらしいクリスがいきなりガバッと抱き着いた。ああ、やっと我に返ったのか。

「なっ…こら、クリス!」

 周りにたくさんの人がいる食堂での全力の抱擁に、カーディさんもクリスを引き剥がそうと奮闘している。それでも一向に離れないあたり、クリスって実は結構鍛えてるのかもしれないな。

「はーなーれーろー!」
「カーディ、そんなの初めて聞いた…」
「そうだろうな。だって初めて言ったからな」
「うん……カーディ、教えてくれてありがとう」

 俺とアキトの存在なんて忘れてるんだろうな。そう思うほどキラキラと目を輝かせてカーディさんだけを見つめるクリスに、カーディさんはううと小さく呻くと頬を赤く染めた。

「そこでお礼を言っちゃうのが、クリスらしいよな。あーもう」

 不意打ちを食らったと呟いた恥ずかしそうなカーディさんに、クリスは更に抱き着く力を強めたみたいだ。そんな二人の微笑ましくも幸せそうなやりとりを、俺とアキトはニヤニヤと笑いながら見つめていた。相変わらず仲が良くて何よりだよ。

「お待たせしました」

 そんな声かけと共に現れたのは、たくさんの給仕達だった。キビキビと動く給仕達は手際よくテーブルの上に料理を並べていく。ああ、どれもすごく美味しそうだ。

「すっごい豪華だ…」
「これは…すごいな…」

 圧倒される俺達の隣で、カーディさんだけは通常運転で笑っていた。

「おお、すっごくうまそうだなー」
「ありがとうございます。それではごゆっくりお楽しみ下さい」

 クリスとカーディさんの二人は、すぐに飲み物の入ったグラスを持ち上げた。俺もグラスを持ってからアキトの方を伺えば、慌てた様子でグラスに手を伸ばした。

「ではいただきましょうか。お二人の新しい関係性に」
「二人の新しい関係性に」

 新しい関係性――か。クリスらしい言葉選びだな。

「ありがとうございます!」
「俺からも、本当にありがとう」

 四人揃ってグラスを掲げてから、こくりと飲み物を口にする。アキトが好きそうな果実水の味だなと視線を向ければ、アキトはまじまじとそのグラスを見つめていた。あ、やっぱり気に入ったんだな。

「「いただきます」」

 食前の挨拶をしてから、俺はアキトの様子をちらりと見た。

 朝食と呼ぶにはかなり豪華な見た目の料理に、アキトは恐る恐るフォークを取り上げた。どうやらまずは付け合わせの野菜を食べてみるみたいだ。俺はこの卵料理から食べてみようかな。

「え、すっごく、美味しい…朝食にぴったりの味…」

 びっくり顔のアキトがじっと俺を見つめてくるのを感じながら、俺は口に運んだばかりの卵料理を味わっていた。

「ああ、これはうまいな」

 見た目こそ派手だが、味付けはしつこくなくて食べやすい。昨日の夕食を作った料理人なら心配はいらないと思っていたが、時間帯によってここまで味を変えてくるとは。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。