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417.【ハル視点】甲板にて
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手を繋いだまま食堂を出ると、俺はアキトをじっと見つめて悪戯っぽく尋ねた。
「それで、アキトは俺をどこに連れていってくれるのかな?」
「えーっと…あ、あっち!」
ああ、やっぱりこの船の中の話だったのか。迷いなく進んでいくアキトに手を引かれて俺は歩き出した。アキトが目指したのは、食堂の向かい側にある階段だった。
ゆっくりと階段を上りきると、そこには繊細な彫刻が施された大きな扉があった。アキトは不安そうにしながらも扉に手を伸ばした。ゆっくりとアキトの手が取っ手を回すと、その扉は重厚な見た目に反して軽やかに開いた。
一気に開けた視界に飛び込んできたのは、雲一つない青空と、朝日に照らされた美しい森の木々、そしてどこまでも続いているように思える壮大な川の流れだった。
「うわー!すごい!すごいね!」
声だけでもワクワクしているのが伝わってくるな。はしゃぐアキトもたまらなく可愛いと思う。
「ああ、これはすごいな!」
素直に感心してそう声をかければ、アキトは嬉しそうに笑って俺を見上げてきた。
「ここが目的地だよ。甲板が解放されてるってさっきカーディに教えてもらったんだ。クリスさんとカーディは朝食前に来たんだって」
「これは確かに一見の価値があるね。アキト、案内ありがとう」
アキトは照れくさそうに笑いながら、どういたしましてと答えてくれた。
「ねえ、アキト。折角だし外に出てみようか?解放されてるなら問題無いよね?」
「うんっ!出てみたいっ!」
二人で手を繋いだままドアから一歩外へと足を踏み出せば、太陽の日差しが容赦なく照りつけてくる。ああ、今日も暑い日になりそうだな。その上甲板の上は、遮るものが無いせいで風が強い。ぶわりと遠慮なく吹き付けてくる風で、アキトの髪の毛がぶわっとひるがえった。可愛いおでこが見えてるなと思いながら、俺はアキトに声をかけた。
「うわー!」
「アキト、あそこの手すりの所まで行こう」
このまま扉近くにいるよりは安全だろうと手すり近くへの移動を提案した俺は、アキトの手を軽く引っ張りながら何とか目的地まで辿り着いた。
「風、強いねっ!」
風に負けじと声を張るアキトに、俺も大きな声で答える。
「うん、すごい風だ!」
それでもこの景色は、日差しと風に耐えるだけの価値があると思う。
そんな事を考えていると、不意にぶわっと一際強い風が吹いた。乱れきった髪の毛を片手で掻きあげながら、ふとアキトの方を見ればアキトの顔色が変わっていた。
「ねえアキト、何だか顔赤くない?暑い?」
日差しが強いせいかと声をかけたけれど、アキトはふるふると首を振った。
「ここに飲み物も持ってるけど何か飲む?」
俺はそう尋ねながら、収納機能付きの腕輪を撫でてみせた。
「あ、飲み物は無くて大丈夫!」
「そう?」
この腕輪の存在を隠していると言ってしまったせいで、遠慮してるってわけじゃないよね?真意を探るようにじっとアキトの様子を伺っていると、アキトは観念したように口を開いた。
「えーっとね、暑いとかじゃなくて…その…髪の毛をかき上げてたハルが格好良すぎて」
不意打ちでそんな事を言われた俺の気持ちが分かる?
「え、そうなの?それは嬉しいな」
なんて事を平然とした顔で答えられたのは、いっそ奇跡だと思う。周りに乗客の姿は無いけれど、見張り台には船員の気配がある。そうじゃなければ、俺はアキトに抱き着いて口づけていたかもしれない。それぐらい、不意打ちの格好良いという誉め言葉は衝撃的だった。
俺はお礼の言葉を口にしながら、そっとアキトを庇うように立ち位置を変えた。この方がアキトの表情が見やすいからな。
こういう時ばかりは、アキトが華奢で良かったと思ってしまう。俺の体で風を遮る事ができるのは、この体格差のおかげだからな。
見下ろしたアキトの髪の毛は、強風のせいでぐちゃぐちゃに乱れてしまっていた。まあ、ぐちゃぐちゃでも可愛いのは可愛いんだけどね。
俺はそっと手を伸ばすと、アキトの髪の毛を手櫛で整えていく。目を細めてされるがままのアキトが可愛くて、自然と笑みがこぼれてしまった。
「それで、アキトは俺をどこに連れていってくれるのかな?」
「えーっと…あ、あっち!」
ああ、やっぱりこの船の中の話だったのか。迷いなく進んでいくアキトに手を引かれて俺は歩き出した。アキトが目指したのは、食堂の向かい側にある階段だった。
ゆっくりと階段を上りきると、そこには繊細な彫刻が施された大きな扉があった。アキトは不安そうにしながらも扉に手を伸ばした。ゆっくりとアキトの手が取っ手を回すと、その扉は重厚な見た目に反して軽やかに開いた。
一気に開けた視界に飛び込んできたのは、雲一つない青空と、朝日に照らされた美しい森の木々、そしてどこまでも続いているように思える壮大な川の流れだった。
「うわー!すごい!すごいね!」
声だけでもワクワクしているのが伝わってくるな。はしゃぐアキトもたまらなく可愛いと思う。
「ああ、これはすごいな!」
素直に感心してそう声をかければ、アキトは嬉しそうに笑って俺を見上げてきた。
「ここが目的地だよ。甲板が解放されてるってさっきカーディに教えてもらったんだ。クリスさんとカーディは朝食前に来たんだって」
「これは確かに一見の価値があるね。アキト、案内ありがとう」
アキトは照れくさそうに笑いながら、どういたしましてと答えてくれた。
「ねえ、アキト。折角だし外に出てみようか?解放されてるなら問題無いよね?」
「うんっ!出てみたいっ!」
二人で手を繋いだままドアから一歩外へと足を踏み出せば、太陽の日差しが容赦なく照りつけてくる。ああ、今日も暑い日になりそうだな。その上甲板の上は、遮るものが無いせいで風が強い。ぶわりと遠慮なく吹き付けてくる風で、アキトの髪の毛がぶわっとひるがえった。可愛いおでこが見えてるなと思いながら、俺はアキトに声をかけた。
「うわー!」
「アキト、あそこの手すりの所まで行こう」
このまま扉近くにいるよりは安全だろうと手すり近くへの移動を提案した俺は、アキトの手を軽く引っ張りながら何とか目的地まで辿り着いた。
「風、強いねっ!」
風に負けじと声を張るアキトに、俺も大きな声で答える。
「うん、すごい風だ!」
それでもこの景色は、日差しと風に耐えるだけの価値があると思う。
そんな事を考えていると、不意にぶわっと一際強い風が吹いた。乱れきった髪の毛を片手で掻きあげながら、ふとアキトの方を見ればアキトの顔色が変わっていた。
「ねえアキト、何だか顔赤くない?暑い?」
日差しが強いせいかと声をかけたけれど、アキトはふるふると首を振った。
「ここに飲み物も持ってるけど何か飲む?」
俺はそう尋ねながら、収納機能付きの腕輪を撫でてみせた。
「あ、飲み物は無くて大丈夫!」
「そう?」
この腕輪の存在を隠していると言ってしまったせいで、遠慮してるってわけじゃないよね?真意を探るようにじっとアキトの様子を伺っていると、アキトは観念したように口を開いた。
「えーっとね、暑いとかじゃなくて…その…髪の毛をかき上げてたハルが格好良すぎて」
不意打ちでそんな事を言われた俺の気持ちが分かる?
「え、そうなの?それは嬉しいな」
なんて事を平然とした顔で答えられたのは、いっそ奇跡だと思う。周りに乗客の姿は無いけれど、見張り台には船員の気配がある。そうじゃなければ、俺はアキトに抱き着いて口づけていたかもしれない。それぐらい、不意打ちの格好良いという誉め言葉は衝撃的だった。
俺はお礼の言葉を口にしながら、そっとアキトを庇うように立ち位置を変えた。この方がアキトの表情が見やすいからな。
こういう時ばかりは、アキトが華奢で良かったと思ってしまう。俺の体で風を遮る事ができるのは、この体格差のおかげだからな。
見下ろしたアキトの髪の毛は、強風のせいでぐちゃぐちゃに乱れてしまっていた。まあ、ぐちゃぐちゃでも可愛いのは可愛いんだけどね。
俺はそっと手を伸ばすと、アキトの髪の毛を手櫛で整えていく。目を細めてされるがままのアキトが可愛くて、自然と笑みがこぼれてしまった。
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