生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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421.街道で食べ歩き

 船着き場を後にした俺達は、すぐに街道の分岐点目指して歩き出した。

 ここからは魔物も出る危険地帯だから手を繋げないのが、ちょっとだけ…いや、正直に言えばかなり残念だ。川上の船着き場からちょこちょこ手を繋いでもらってたからか、なんとなく手の行き場に困ってしまう。

「どの道で行きましょうか?」

 クリスさんは、ハルを見つめながらそう尋ねた。

 ハルによると何でもこの辺りにはいくつかの街道があって、そのどの道を選んでも目的地であるイーシャル領の領都には辿り着くんだって。それは分かりやすくて良いね。

 違いと言えば経由地が違うのと、あとは道幅が違うぐらいらしい。

「やっぱり道幅が狭くて馬車が入れない、あの道が良いと思うんだが…どうだろう?」
「そうですね、その方が良いと思います」
「中規模の道なら衛兵のウマでの巡回もあると思うんだが…」
「ああ、それは確かに。でも・・・」

 ハルとクリスさんが真剣な顔で相談している横で、俺とカーディは大きくひとつ深呼吸をしてから思いっきり伸びをした。

「「んんー!」」

 自然と重なった声に、二人で顔を見合わせて笑ってしまった。

 ほんの一日ほどあの船に乗ってただけなのに、体を動かしたくてうずうずしてる気がする。元々すっごいスポーツマンだったわけじゃないのに、この世界に来て冒険者になってから体を動かすのが日常になってるんだよね。だから動かせないのが気持ち悪いんだ。

「あー船での移動も良いんだけど、自分の足で移動するのも良いよなぁ」
「うん、わかる」

 カーディの言葉に、俺はすかさず同意を返した。

「もう昨日から体を動かしたくてなぁ」
「あ、カーディも?俺も一緒だよ!」
「ああ、これだから冒険者は…って言われるやつだな!」

 そうかそうか、アキトも立派な冒険者になったんだなーなんて言われてしまった。でも元冒険者のカーディにそう言われるのは、この世界に馴染めてるって言われてる気がして嬉しかった。



 徒歩の人しか利用できないというその街道は、想像していたよりも混みあってはいなかった。馬車で移動する人が多いから、馬車が通れる道幅の道が一番混むんだって。

 ぽつぽつと歩いている人達の間を、買ったばかりの果物を齧りながら歩いていく。

「あ、これ…美味いな!すっごく好きな味だ」
「え、どれですか?」
「それそれ、その白いやつ」

 色んな屋台で買ったから名前までは分からないけどと言ったカーディに、クリスさんは苦笑を洩らしながら白い果実に齧りついた。

「ああ。本当だ。これはかなり美味しいですね」
「お、やっぱりクリスも好きな味だったか!」
「名前が分かればまた買えるんですが…名前が分からないのは困りますね」

 少ししょんぼりしたクリスさんの声に、ハルはちらりと後ろを振り返った。

「クリス、それはエリーアっていう果物だよ」

 え、そんな一瞬見ただけでそこまで分かるの?ハルすごすぎない?

「あー…そういえば、採れたてだって言ってるの買った気がする。ハル、教えてくれてありがと」
「これがエリーアですか…ハル、ありがとうございます」
「どういたしまして」

 朗らかに笑ったハルを、思わず尊敬の眼差しで見つめてしまった。



 さすがに切り分けないと駄目な果物は、食べ歩きには向かないだろう。そう思ってこぶりな物とか皮ごと齧れるものとかを選んでたんだけど、そろそろお腹も満たされてきた。

 ちらりと後ろを見てみればクリスさんはもう食べ終わっていて、カーディはあの南国の果物チルーを幸せそうに頬張っていた。一瞬だけ見えたクリスさんの目があまりに甘くて、見てはいけない物を見てしまったような気分になった。

 慌てて前を向けば、ハルがそっと声をかけてくる。

「アキト、もう良いの?」
「うん、ハルも?」
「ああ、俺も満足したよ。アキト、食事が終わったなら一つだけ良いかな?」

 不意に真剣な表情になってハルは俺を見た。一体なんだろうと思いながら、俺も真剣な顔でそっと頷きを返した。

「このまま行けば、もうすぐナルイット領とイーシャル領の境界を超える事になる」
「うん」
「俺の予想では、襲撃があるとしたらこの街道が一番確率が高いと思うんだ」
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