439 / 1,561
438.【ハル視点】戦闘開始
俺が口にした『お礼ならクリスに』と言う言葉で、男達は一瞬にしてその顔色を変えた。真っ青な顔で俺とアキトを見つめながら、男達は恐る恐る口を開いた。
「知ってた…のか」
「嘘だろう?」
「え…?なんで…?」
「ば、バレていたのか?」
ああ、やっぱり襲撃の予定は、こちらにはバレていないと思っていたのか。あんな場所で街道を伺うなんて怪しい行動をしておいて、バレないわけがないだろう。
俺は男達に呆れながらも、そっとアキトに視線を向けた。アキトは俺達を襲撃予定だった男達を警戒しながらも、視線はしっかりと森の方へと固定している。さすがアキトだな。
「違うんだ、これは!」
「い、依頼だったから仕方なく…」
「そうだ、俺達はただ依頼を受けただけで――」
そんな言い訳にもならない言葉を口々に吐き出す男達を、俺は睨みつける。
「言い訳はいらない。そんな依頼を受けたのは、自分の意思だろう?」
冒険者ギルドが、善良な一般人を害する依頼を受ける事は絶対に無い。相手が犯罪者の場合のみ例外にはなるが、その場合は依頼する相手を選んでの指名依頼だ。
ギルドを通さない依頼は表ざたに出来ない内容が多く、犯罪すれすれの依頼や、まさに犯罪そのものの依頼も多い。その分報酬は高額にはなるが、そんな依頼を受けた時点で言い訳をする権利は無い。
「違っ!」
「もういいから、黙ってそこでじっとしていろ。でないと――お前らが狙われるかもな?」
脅すように低い声でそう言い放てば、男達は揃って黙り込んだ。
もしこいつらがここに居合わせただけの冒険者なら安全な場所に逃げろと声をかけるところだが、そんな気づかいはいらないだろう。カーディさんとクリスの方へ行かれるくらいなら、そこでじっとしててもらった方が良い。
「やっと静かになったな」
ふうと一つ大きく息を吐いてから、俺はすらりと腰の剣を抜き放った。視界の端で、土魔法のつぶてがふわりと浮かび上がるのが見えた。落ち着いた様子のアキトに頼もしさを感じながら、俺は集中して気配を探る。
俺達がこいつらと合流してからずっとこちらの様子を伺っていた魔物の気配は、俺の殺気に煽られるようにして動き出した。
「アキト、来るよっ!」
叫んだと同時に、腹の底に響くような狼の遠吠えが辺り一帯に響いた。男達が集まっている場所からは、押し殺しきれなかった悲鳴が上がる。
「うんっ!」
魔物は盛大に音を立てながら、どんどん近づいてくる。
森の木々を蹴散らしながら目の前に飛び出して来たのは、唸り声をあげる巨大な狼の魔物だった。濃い緑色の体毛に、茶色の模様。まるで木が突然動き出したかのように見えるその姿に俺は目を見張った。
よりによってファーレスウルフか。背後からの襲撃に気づかないなんて馬鹿なのかと思っていたが、こいつが相手ならあり得る話だ。特に森の中での擬態能力が高い、厄介な魔物だ。
「ファーレスウルフだ!」
そう叫ぶなり、俺はアキトの前に躍り出た。こいつの敏捷性は狼種の中でも群を抜いている。俺が前に出て攻撃を受け止めるるのが、おそらく一番安全だ。
ファーレスウルフはその場で立ち止まると、牙を剥いて唸りながらこちらを威嚇してくる。地の底から響くようなその唸り声に、またしても背後で悲鳴が上がる。
殺気を受け止めているのは俺とアキトなんだから、歯牙にもかけられてないおまえらは黙ってろ。
「ウウウウウ…」
全力で威嚇してくるファーレスウルフの目を、俺はまっすぐに見返した。下手に視線を反らす方が危険だと分かっているからな。真正面から睨みあっていると、不意に唸り声がぴたりと止んだ。
攻撃が来る。
そう思って身構えたが、ファーレスウルフが動くよりも早くアキトが動いた。
アキトの放った土魔法のつぶては、途中で軌道を変えながらファーレスウルフへと迫った。相変わらずの素晴らしい魔力操作だな。
普通の魔物なら間違いなくいくつかは命中しただろう。そう思える的確な攻撃だったが、ファーレスウルフは全てのつぶてを土塊を使って叩き落としてみせた。
やっぱりこうなるか。
「知ってた…のか」
「嘘だろう?」
「え…?なんで…?」
「ば、バレていたのか?」
ああ、やっぱり襲撃の予定は、こちらにはバレていないと思っていたのか。あんな場所で街道を伺うなんて怪しい行動をしておいて、バレないわけがないだろう。
俺は男達に呆れながらも、そっとアキトに視線を向けた。アキトは俺達を襲撃予定だった男達を警戒しながらも、視線はしっかりと森の方へと固定している。さすがアキトだな。
「違うんだ、これは!」
「い、依頼だったから仕方なく…」
「そうだ、俺達はただ依頼を受けただけで――」
そんな言い訳にもならない言葉を口々に吐き出す男達を、俺は睨みつける。
「言い訳はいらない。そんな依頼を受けたのは、自分の意思だろう?」
冒険者ギルドが、善良な一般人を害する依頼を受ける事は絶対に無い。相手が犯罪者の場合のみ例外にはなるが、その場合は依頼する相手を選んでの指名依頼だ。
ギルドを通さない依頼は表ざたに出来ない内容が多く、犯罪すれすれの依頼や、まさに犯罪そのものの依頼も多い。その分報酬は高額にはなるが、そんな依頼を受けた時点で言い訳をする権利は無い。
「違っ!」
「もういいから、黙ってそこでじっとしていろ。でないと――お前らが狙われるかもな?」
脅すように低い声でそう言い放てば、男達は揃って黙り込んだ。
もしこいつらがここに居合わせただけの冒険者なら安全な場所に逃げろと声をかけるところだが、そんな気づかいはいらないだろう。カーディさんとクリスの方へ行かれるくらいなら、そこでじっとしててもらった方が良い。
「やっと静かになったな」
ふうと一つ大きく息を吐いてから、俺はすらりと腰の剣を抜き放った。視界の端で、土魔法のつぶてがふわりと浮かび上がるのが見えた。落ち着いた様子のアキトに頼もしさを感じながら、俺は集中して気配を探る。
俺達がこいつらと合流してからずっとこちらの様子を伺っていた魔物の気配は、俺の殺気に煽られるようにして動き出した。
「アキト、来るよっ!」
叫んだと同時に、腹の底に響くような狼の遠吠えが辺り一帯に響いた。男達が集まっている場所からは、押し殺しきれなかった悲鳴が上がる。
「うんっ!」
魔物は盛大に音を立てながら、どんどん近づいてくる。
森の木々を蹴散らしながら目の前に飛び出して来たのは、唸り声をあげる巨大な狼の魔物だった。濃い緑色の体毛に、茶色の模様。まるで木が突然動き出したかのように見えるその姿に俺は目を見張った。
よりによってファーレスウルフか。背後からの襲撃に気づかないなんて馬鹿なのかと思っていたが、こいつが相手ならあり得る話だ。特に森の中での擬態能力が高い、厄介な魔物だ。
「ファーレスウルフだ!」
そう叫ぶなり、俺はアキトの前に躍り出た。こいつの敏捷性は狼種の中でも群を抜いている。俺が前に出て攻撃を受け止めるるのが、おそらく一番安全だ。
ファーレスウルフはその場で立ち止まると、牙を剥いて唸りながらこちらを威嚇してくる。地の底から響くようなその唸り声に、またしても背後で悲鳴が上がる。
殺気を受け止めているのは俺とアキトなんだから、歯牙にもかけられてないおまえらは黙ってろ。
「ウウウウウ…」
全力で威嚇してくるファーレスウルフの目を、俺はまっすぐに見返した。下手に視線を反らす方が危険だと分かっているからな。真正面から睨みあっていると、不意に唸り声がぴたりと止んだ。
攻撃が来る。
そう思って身構えたが、ファーレスウルフが動くよりも早くアキトが動いた。
アキトの放った土魔法のつぶては、途中で軌道を変えながらファーレスウルフへと迫った。相変わらずの素晴らしい魔力操作だな。
普通の魔物なら間違いなくいくつかは命中しただろう。そう思える的確な攻撃だったが、ファーレスウルフは全てのつぶてを土塊を使って叩き落としてみせた。
やっぱりこうなるか。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。