449 / 1,561
448.イーシャルの街を堪能
「はー堪能した!」
「俺も!」
初めてのイーシャルの街並みは見どころが多いというか、じっくり見たいなと思っちゃう所が多すぎた。
ついついカーディと二人して、年甲斐もなくあちこちうろうろしちゃったよ。でもハルとクリスさんは呆れるでも急かすでも無く、俺達の気が済むまで好きにさせてくれた。
そんな二人の優しさのおかげで、じっくり色んな所を見て回れて大満足だった。
綺麗な水路と可愛い花がいっぱいの街、水の都イーシャル――か。うん、俺イーシャルの街も好きになれそうだ。
「アキト、もう良いの?」
「カーディ、まだまだ時間はありますよ?」
こんなに待たせたのに遠慮してないかと心配そうに聞いてくれる二人に、俺達は笑顔を浮かべて口々にお礼を述べた。
「大丈夫だ、二人ともありがとな」
「待っててくれてありがとうございました」
「いや、気にしないで」
「お二人が楽しめたなら何よりですから」
「楽しめたのは二人が待っててくれたからだろ?」
「そうかもしれませんが…でも」
いつまでも続きそうなやりとりに割って入ったのは、ハルだった。
「クリス、これからどうする予定なんだ?」
「そうですね…そろそろ宿に行こうと思うんですがどうです?」
「あー今日は歩き続けで結構疲れてるし、良いんじゃないか?」
カーディが即座に賛成して、ちらりと俺を見た。
「俺も賛成です」
「ああ、俺も妥当だと思うよ。それで、どこに泊まるんだ?」
「黄昏の館に予約を入れてあります」
俺は変わった名前の宿だなと思っただけだったけど、ハルは驚いた顔をしてクリスさんを見返した。有名な宿だったりするんだろうか。
「それならこっちの道だな」
「あ、でも、その前に…」
「ん?どうかしたか?」
「ハル、こちらの道から行くのはどうですか?」
「ああ、なるほど。うん、それは良い考えだな。そっちにしよう」
そう答えるなりこちらを振り返ったハルは、俺の目の前にそっと手を差し出してくれた。そっか、もう街の中だからまた手を繋いで歩いて良いのか。
差し出された手をすぐにきゅっと握り返せば、ハルは幸せそうに微笑んでくれた。普段は恰好良いのに、こういう時だけ可愛いんだから困る。
そのままハルに優しく手を引かれて、俺は一際大きな水路脇の道をゆっくりと歩き出した。
「カーディ…」
「なんだよ、クリス。手、繋ぎたいのか?」
揶揄うようなカーディの声が聞こえてくる。
「ええ、私はいつでもどこでもカーディとなら触れ合いたいので」
さらりと言いきったクリスさんの声に続いて聞こえてきたのは、ぐうと唸るカーディの低い声だった。
不意打ちでそういう事を言われると、びっくりするし照れるんだよね。分かる分かる。ハルもそういう事、不意打ちで真剣に言うから気持ちは分かるぞ、カーディ。
頭の中では思いっきり同意しながらも、俺は後ろは振り返らなかった。二人の邪魔をしないようにってのもあったけど、折角のハルとの時間だから俺も楽しみたいからね。
「ここが一番大きな水路なんだ」
なんでもハルの説明によれば、この一際大きな水路は、主街道の真ん中を貫くように流れているものらしい。
「もし迷ってしまった時は、この大きな水路を辿れば北と南の門までは辿り着けますからね」
クリスさんはそう言うと、カーディにもしっかりと覚えておいて下さいねと真剣な表情で告げた。ここの衛兵は信頼できるから何かがあれば駆けこむんですよと言うクリスさんは、ちょっと過保護な気がする。
「おう、分かった。ちゃんと覚えとくな」
カーディは慣れた様子であっさりとそう答えた。
ここは船着き場と違って特に道が難しかったりはしなさそうだけど、それでもそういう万一の時に役立つ情報は嬉しい。この水路をたどれば、北か南の門まで辿り着くっと。ちゃんと覚えておこう。
そう思った瞬間、ハルの手がきゅっと俺の手を握りしめた。
「クリス、俺が一緒にいるのに、アキトを一人で迷わせたりしないぞ?」
「ああーうん。まあ、そうでしょうね」
真剣な表情ですかさず答えたハルの言葉に、クリスさんは苦笑しながらも同意を返した。
「俺も!」
初めてのイーシャルの街並みは見どころが多いというか、じっくり見たいなと思っちゃう所が多すぎた。
ついついカーディと二人して、年甲斐もなくあちこちうろうろしちゃったよ。でもハルとクリスさんは呆れるでも急かすでも無く、俺達の気が済むまで好きにさせてくれた。
そんな二人の優しさのおかげで、じっくり色んな所を見て回れて大満足だった。
綺麗な水路と可愛い花がいっぱいの街、水の都イーシャル――か。うん、俺イーシャルの街も好きになれそうだ。
「アキト、もう良いの?」
「カーディ、まだまだ時間はありますよ?」
こんなに待たせたのに遠慮してないかと心配そうに聞いてくれる二人に、俺達は笑顔を浮かべて口々にお礼を述べた。
「大丈夫だ、二人ともありがとな」
「待っててくれてありがとうございました」
「いや、気にしないで」
「お二人が楽しめたなら何よりですから」
「楽しめたのは二人が待っててくれたからだろ?」
「そうかもしれませんが…でも」
いつまでも続きそうなやりとりに割って入ったのは、ハルだった。
「クリス、これからどうする予定なんだ?」
「そうですね…そろそろ宿に行こうと思うんですがどうです?」
「あー今日は歩き続けで結構疲れてるし、良いんじゃないか?」
カーディが即座に賛成して、ちらりと俺を見た。
「俺も賛成です」
「ああ、俺も妥当だと思うよ。それで、どこに泊まるんだ?」
「黄昏の館に予約を入れてあります」
俺は変わった名前の宿だなと思っただけだったけど、ハルは驚いた顔をしてクリスさんを見返した。有名な宿だったりするんだろうか。
「それならこっちの道だな」
「あ、でも、その前に…」
「ん?どうかしたか?」
「ハル、こちらの道から行くのはどうですか?」
「ああ、なるほど。うん、それは良い考えだな。そっちにしよう」
そう答えるなりこちらを振り返ったハルは、俺の目の前にそっと手を差し出してくれた。そっか、もう街の中だからまた手を繋いで歩いて良いのか。
差し出された手をすぐにきゅっと握り返せば、ハルは幸せそうに微笑んでくれた。普段は恰好良いのに、こういう時だけ可愛いんだから困る。
そのままハルに優しく手を引かれて、俺は一際大きな水路脇の道をゆっくりと歩き出した。
「カーディ…」
「なんだよ、クリス。手、繋ぎたいのか?」
揶揄うようなカーディの声が聞こえてくる。
「ええ、私はいつでもどこでもカーディとなら触れ合いたいので」
さらりと言いきったクリスさんの声に続いて聞こえてきたのは、ぐうと唸るカーディの低い声だった。
不意打ちでそういう事を言われると、びっくりするし照れるんだよね。分かる分かる。ハルもそういう事、不意打ちで真剣に言うから気持ちは分かるぞ、カーディ。
頭の中では思いっきり同意しながらも、俺は後ろは振り返らなかった。二人の邪魔をしないようにってのもあったけど、折角のハルとの時間だから俺も楽しみたいからね。
「ここが一番大きな水路なんだ」
なんでもハルの説明によれば、この一際大きな水路は、主街道の真ん中を貫くように流れているものらしい。
「もし迷ってしまった時は、この大きな水路を辿れば北と南の門までは辿り着けますからね」
クリスさんはそう言うと、カーディにもしっかりと覚えておいて下さいねと真剣な表情で告げた。ここの衛兵は信頼できるから何かがあれば駆けこむんですよと言うクリスさんは、ちょっと過保護な気がする。
「おう、分かった。ちゃんと覚えとくな」
カーディは慣れた様子であっさりとそう答えた。
ここは船着き場と違って特に道が難しかったりはしなさそうだけど、それでもそういう万一の時に役立つ情報は嬉しい。この水路をたどれば、北か南の門まで辿り着くっと。ちゃんと覚えておこう。
そう思った瞬間、ハルの手がきゅっと俺の手を握りしめた。
「クリス、俺が一緒にいるのに、アキトを一人で迷わせたりしないぞ?」
「ああーうん。まあ、そうでしょうね」
真剣な表情ですかさず答えたハルの言葉に、クリスさんは苦笑しながらも同意を返した。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。