生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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448.イーシャルの街を堪能

「はー堪能した!」
「俺も!」

 初めてのイーシャルの街並みは見どころが多いというか、じっくり見たいなと思っちゃう所が多すぎた。

 ついついカーディと二人して、年甲斐もなくあちこちうろうろしちゃったよ。でもハルとクリスさんは呆れるでも急かすでも無く、俺達の気が済むまで好きにさせてくれた。

 そんな二人の優しさのおかげで、じっくり色んな所を見て回れて大満足だった。

 綺麗な水路と可愛い花がいっぱいの街、水の都イーシャル――か。うん、俺イーシャルの街も好きになれそうだ。

「アキト、もう良いの?」
「カーディ、まだまだ時間はありますよ?」

 こんなに待たせたのに遠慮してないかと心配そうに聞いてくれる二人に、俺達は笑顔を浮かべて口々にお礼を述べた。

「大丈夫だ、二人ともありがとな」
「待っててくれてありがとうございました」
「いや、気にしないで」
「お二人が楽しめたなら何よりですから」
「楽しめたのは二人が待っててくれたからだろ?」
「そうかもしれませんが…でも」

 いつまでも続きそうなやりとりに割って入ったのは、ハルだった。

「クリス、これからどうする予定なんだ?」
「そうですね…そろそろ宿に行こうと思うんですがどうです?」
「あー今日は歩き続けで結構疲れてるし、良いんじゃないか?」

 カーディが即座に賛成して、ちらりと俺を見た。

「俺も賛成です」
「ああ、俺も妥当だと思うよ。それで、どこに泊まるんだ?」
「黄昏の館に予約を入れてあります」

 俺は変わった名前の宿だなと思っただけだったけど、ハルは驚いた顔をしてクリスさんを見返した。有名な宿だったりするんだろうか。

「それならこっちの道だな」
「あ、でも、その前に…」
「ん?どうかしたか?」
「ハル、こちらの道から行くのはどうですか?」
「ああ、なるほど。うん、それは良い考えだな。そっちにしよう」

 そう答えるなりこちらを振り返ったハルは、俺の目の前にそっと手を差し出してくれた。そっか、もう街の中だからまた手を繋いで歩いて良いのか。

 差し出された手をすぐにきゅっと握り返せば、ハルは幸せそうに微笑んでくれた。普段は恰好良いのに、こういう時だけ可愛いんだから困る。

 そのままハルに優しく手を引かれて、俺は一際大きな水路脇の道をゆっくりと歩き出した。

「カーディ…」
「なんだよ、クリス。手、繋ぎたいのか?」

 揶揄うようなカーディの声が聞こえてくる。

「ええ、私はいつでもどこでもカーディとなら触れ合いたいので」

 さらりと言いきったクリスさんの声に続いて聞こえてきたのは、ぐうと唸るカーディの低い声だった。

 不意打ちでそういう事を言われると、びっくりするし照れるんだよね。分かる分かる。ハルもそういう事、不意打ちで真剣に言うから気持ちは分かるぞ、カーディ。

 頭の中では思いっきり同意しながらも、俺は後ろは振り返らなかった。二人の邪魔をしないようにってのもあったけど、折角のハルとの時間だから俺も楽しみたいからね。

「ここが一番大きな水路なんだ」

 なんでもハルの説明によれば、この一際大きな水路は、主街道の真ん中を貫くように流れているものらしい。

「もし迷ってしまった時は、この大きな水路を辿れば北と南の門までは辿り着けますからね」

 クリスさんはそう言うと、カーディにもしっかりと覚えておいて下さいねと真剣な表情で告げた。ここの衛兵は信頼できるから何かがあれば駆けこむんですよと言うクリスさんは、ちょっと過保護な気がする。

「おう、分かった。ちゃんと覚えとくな」

 カーディは慣れた様子であっさりとそう答えた。

 ここは船着き場と違って特に道が難しかったりはしなさそうだけど、それでもそういう万一の時に役立つ情報は嬉しい。この水路をたどれば、北か南の門まで辿り着くっと。ちゃんと覚えておこう。

 そう思った瞬間、ハルの手がきゅっと俺の手を握りしめた。

「クリス、俺が一緒にいるのに、アキトを一人で迷わせたりしないぞ?」
「ああーうん。まあ、そうでしょうね」

 真剣な表情ですかさず答えたハルの言葉に、クリスさんは苦笑しながらも同意を返した。
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