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452.【ハル視点】二人の反応
ここイーシャル領都では、門を抜けて最初に見えてくるのは大きな茶色の石階段だ。
階段の両脇には水が階段状になって流れる水路こそあるが、入ってすぐに見えるイーシャル領都らしいものなんてそれぐらいだ。
トリクの花が一つも無いここの景色を見て、思っていたほど綺麗な街じゃないんだなと一度がっかりする人も多いらしい。
どんな反応をするかと気にしていた俺の視線の先、アキトはきょろきょろと周りを見渡していた。
「あ、ハル、あれが水路?」
「うん、そうだよ」
アキトはへーと嬉しそうに声をあげた。あれ、何だか思ったよりも反応が良いな。
「おおーさすが水の街って言うだけあるな」
綺麗に透き通った水が流れている水路を見て、カーディさんも感心したようにそう呟いている。俺と同じく心配していたのだろうクリスは、控え目にカーディさんに尋ねる。
「カーディも気に入りました?」
「ああ、この雰囲気は好きだな」
カーディさんはそう言うと、階段の端っこに座りこんでる人達の方をちらりと見た。会話が盛り上がっているのか満面の笑みを浮かべた人、流れる水をただのんびりと眺めている人、中には屋台か何かで買ってきたのか軽食を楽しんでいる人もいる。
「日常に溶け込んでる雰囲気が」
「分かる!自由な感じで良いよね!」
確かにこの階段は住民の交流と寛ぎの場になっている。どうやら二人の目には、この階段も新鮮に映ったようだ。
「ああ、アキトもそう思うか?」
「うん」
顔を見合わせて笑い合うアキトとカーディさんに、俺は少しだけ申し訳ない気持ちでそっと言葉を付け加えた。
「あー…自由に見えるけど…一応規則はあるんだよ。あの小さな白い石の内側は、座り込んだり立ち止まったら駄目なんだ」
「へーそうなんだ?ちなみに破るとどうなるの?」
アキトの質問に、クリスは笑って答えた。
「もし破ると…衛兵から注意されます」
「え、注意だけ?」
「緩くないか?」
「でも、旅人や観光客だったら、その規則自体を知らない事もありますから」
「まあ、衛兵に注意される前に、多分周りの人が教えてくれると思うけどね」
この街の人は人懐っこい明るい人が多いからと俺はそう続けた。
「私たちも、座ってみましょうか?」
そうクリスが提案したのは、二人があまりにそわそわしてたからだろう。二人とも興味はあるけど、素直に座りたいって言って良いのかなって顔をしてたからな。もしクリスが提案していなかったら俺が提案していた所だ。
「ああ、良いな!」
「俺もぜひ座ってみたいです!」
「アキトが座りたいなら当然俺も」
俺達は四人揃って階段の端の方へ移動すると、空いている辺りを狙って腰を下ろした。ここの階段は不思議な事に座り心地が良いんだよな。座り心地にもこだわって作られたのか、それとも皆が座っているうちに自然と形が変わっていってたんだろうか。
「え、硬そうなのに座りやすい」
「びっくりしたな」
「良い反応で嬉しいです」
満足そうなクリスをちらりと見た俺は、そっと口を開いた。さっきのティーとのやりとりの説明をしていなかったなと思いだしたからだ。
「あ、そうだ。さっきは時間取って悪かったな」
「いえいえ、気にしなくて大丈夫ですよ」
「そうそう。それにしても、あの足技はすごかったな」
避けられないように狙って足を出したんだろう?とカーディさんは笑って尋ねてくる。
「ああ。あの男がよりによって俺の目の前でアキトを突き飛ばそうとしたから、ついな」
そう答えればクリスとカーディさんは納得顔で頷いてくれたが、アキトだけが不思議そうな顔で俺を見た。
「ああ、それは仕方ないな」
「それは仕方ないですよ」
その気持ちは分かりますと言いたげにぴったりと重なった二人の言葉に、思わず笑ってしまった。二人とも伴侶のためなら自分でもそうすると言いきるあたりが、本当に似たもの伴侶だな。
「さっき会ったティーはね、むかし俺が指導した事がある相手なんだ」
「そうなんですか」
「だから久しぶりの再会だったんだよ」
ここまでは誰に聞かれても問題は無い。ただここからの話は、あまり人に聞かれるわけにはいかないな。俺はそっとアキトの耳元に顔を近づけて囁いた。
「騎士と衛兵の合同演習の時に、新人として指導した相手なんだ」
「へーハル先生の生徒さんって事か」
「先生と生徒って言葉は何だか違うような…?」
「じゃあハル師匠と弟子?」
「それは嫌だな」
弟子を取った覚えは無いからと笑って答えた俺は、もしここに滞在中にまた会えたらきちんと紹介するからねとアキトに声をかけた。
約束もしていないから会えないかもしれないが、少なくともあのお調子者は俺に伴侶候補ができた事を色んな奴に広めてくれるだろう。そう思えば、あそこで会えた事に意味はあったなとそう思ってしまった。
階段の両脇には水が階段状になって流れる水路こそあるが、入ってすぐに見えるイーシャル領都らしいものなんてそれぐらいだ。
トリクの花が一つも無いここの景色を見て、思っていたほど綺麗な街じゃないんだなと一度がっかりする人も多いらしい。
どんな反応をするかと気にしていた俺の視線の先、アキトはきょろきょろと周りを見渡していた。
「あ、ハル、あれが水路?」
「うん、そうだよ」
アキトはへーと嬉しそうに声をあげた。あれ、何だか思ったよりも反応が良いな。
「おおーさすが水の街って言うだけあるな」
綺麗に透き通った水が流れている水路を見て、カーディさんも感心したようにそう呟いている。俺と同じく心配していたのだろうクリスは、控え目にカーディさんに尋ねる。
「カーディも気に入りました?」
「ああ、この雰囲気は好きだな」
カーディさんはそう言うと、階段の端っこに座りこんでる人達の方をちらりと見た。会話が盛り上がっているのか満面の笑みを浮かべた人、流れる水をただのんびりと眺めている人、中には屋台か何かで買ってきたのか軽食を楽しんでいる人もいる。
「日常に溶け込んでる雰囲気が」
「分かる!自由な感じで良いよね!」
確かにこの階段は住民の交流と寛ぎの場になっている。どうやら二人の目には、この階段も新鮮に映ったようだ。
「ああ、アキトもそう思うか?」
「うん」
顔を見合わせて笑い合うアキトとカーディさんに、俺は少しだけ申し訳ない気持ちでそっと言葉を付け加えた。
「あー…自由に見えるけど…一応規則はあるんだよ。あの小さな白い石の内側は、座り込んだり立ち止まったら駄目なんだ」
「へーそうなんだ?ちなみに破るとどうなるの?」
アキトの質問に、クリスは笑って答えた。
「もし破ると…衛兵から注意されます」
「え、注意だけ?」
「緩くないか?」
「でも、旅人や観光客だったら、その規則自体を知らない事もありますから」
「まあ、衛兵に注意される前に、多分周りの人が教えてくれると思うけどね」
この街の人は人懐っこい明るい人が多いからと俺はそう続けた。
「私たちも、座ってみましょうか?」
そうクリスが提案したのは、二人があまりにそわそわしてたからだろう。二人とも興味はあるけど、素直に座りたいって言って良いのかなって顔をしてたからな。もしクリスが提案していなかったら俺が提案していた所だ。
「ああ、良いな!」
「俺もぜひ座ってみたいです!」
「アキトが座りたいなら当然俺も」
俺達は四人揃って階段の端の方へ移動すると、空いている辺りを狙って腰を下ろした。ここの階段は不思議な事に座り心地が良いんだよな。座り心地にもこだわって作られたのか、それとも皆が座っているうちに自然と形が変わっていってたんだろうか。
「え、硬そうなのに座りやすい」
「びっくりしたな」
「良い反応で嬉しいです」
満足そうなクリスをちらりと見た俺は、そっと口を開いた。さっきのティーとのやりとりの説明をしていなかったなと思いだしたからだ。
「あ、そうだ。さっきは時間取って悪かったな」
「いえいえ、気にしなくて大丈夫ですよ」
「そうそう。それにしても、あの足技はすごかったな」
避けられないように狙って足を出したんだろう?とカーディさんは笑って尋ねてくる。
「ああ。あの男がよりによって俺の目の前でアキトを突き飛ばそうとしたから、ついな」
そう答えればクリスとカーディさんは納得顔で頷いてくれたが、アキトだけが不思議そうな顔で俺を見た。
「ああ、それは仕方ないな」
「それは仕方ないですよ」
その気持ちは分かりますと言いたげにぴったりと重なった二人の言葉に、思わず笑ってしまった。二人とも伴侶のためなら自分でもそうすると言いきるあたりが、本当に似たもの伴侶だな。
「さっき会ったティーはね、むかし俺が指導した事がある相手なんだ」
「そうなんですか」
「だから久しぶりの再会だったんだよ」
ここまでは誰に聞かれても問題は無い。ただここからの話は、あまり人に聞かれるわけにはいかないな。俺はそっとアキトの耳元に顔を近づけて囁いた。
「騎士と衛兵の合同演習の時に、新人として指導した相手なんだ」
「へーハル先生の生徒さんって事か」
「先生と生徒って言葉は何だか違うような…?」
「じゃあハル師匠と弟子?」
「それは嫌だな」
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