生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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454.【ハル視点】はしゃぐ二人の可愛さ

 トリクの花々で彩られた街並みは、どうやら二人の好みにぴったりとはまっていたらしい。よほど気に入ったのか遠くに見える建物を見てあれこれと感想を言い合ったり、魚がいないかと二人揃って水路を覗き込んだりしている。

 俺とクリスはそんな二人の可愛らしい行動を、微笑ましく見守っていた。

 はしゃぐアキトも可愛いなぁと見つめていると、不意にアキトがそっとこちらを振り返った。あーちょっと見つめすぎたかな。こっそりと反省しながらにっこりと笑って手を振れば、アキトもにっこりと笑みを返してくれた。

「それで、これがこの街の名物っていうトリクの花か!」

 カーディさんの声に、アキトは慌てて視線を戻した。

「えーっと、確かイーシャルの領主の家紋にも使われてるって言ってたやつだよね」

 花壇前に移動してしゃがみこんでいたカーディさんの横に、アキトはちょこんと並んでしゃがみこんだ。クリスがぼそりとなんでこんなに可愛いんだろうと呟いたのに、俺も小さく頷いて同意を返す。

「そうそう。どんな家紋か見てみたいよな」
「うん、こんなかわいいお花がどう使われてるのか想像つかないな」

 なるほど、二人はイーシャル領主の家紋に興味があるのか。

 見せてあげたい気持ちはあるけれど、これはなかなかの難題だ。

 家紋というのは悪用されないように厳密に管理されているものだ。関係の無い者が勝手に使えば当然処罰が下るし、領主一家であっても特別な時にしか見に着けない筈だ。

 うーん、一体どこに行けば見せてあげられるんだろう。領主が出資している施設とかにいけば、領主公認の証として掲示されていたりするだろうか?

 そんな事を考えていると、不意にカーディさんが声を上げた。

「あ、良い香りがする」
「あ…本当だ!良い香り!」
「俺は大きい花の方が分かりやすくて好きだと思ってたんだけど…こういう花も良いもんだな」

 照れくさそうに笑いながら、カーディさんはぼそりとそう呟いた。

「それぞれは控え目な花なのに、存在感があって良いよね」
「そう、存在感がすごいよな!」

 分かってもらえて嬉しいと言いたげな明るい笑顔のカーディさんの隣で、アキトは懐かしそうな表情でじっとトリクの花を見つめていた。もしかして元の世界にあった似た花の事でも思い出したんだろうか。

「どうした?」

 アキトの表情の変化に気付いたカーディさんがそう尋ねると、アキトは慌てて言葉を続けた。

「えーっと、やっぱり同じ枝から二色の花が咲いてるのが、ちょっと不思議だよなーっと思って」
「ああ、こういう咲き方は確かに珍しいよな」

 明らかに誤魔化したんだと分かっているだろうに、カーディさんはどうやらそのまま誤魔化されてくれるつもりらしい。

「二種類の花が咲くってだけなら他にもあるんだけど…トリクの花はその中でも特別な花だよ」

 思わずそう口を挟めば、アキトとカーディさんは二人揃ってゆるりと首を傾げた。

「「特別?」」
「ああ。トリクの花は、珍しい事に花の色によってはっきりした個性があるんだ」
「え、個性…?」

 不思議そうに尋ねてくるアキトに、俺はにっこりと笑って答える。

「うん、白い花の方は香りが良いけど味は薄くて、水色の花は香りは薄いけど味が良いんだよ。面白いでしょう?」

 これもきっかけは精霊の悪戯だと言い伝えられているが、真偽は定かでは無い。

「うん、面白いね。ハル、教えてくれてありがとう」

 尊敬の眼差しで俺を見上げながら嬉しそうに笑うアキトに、自然と微笑みがこぼれた。

 俺は元々知識や情報を集めるのが好きな性質ではあるけれど、アキトがこんな風に褒めてくれるならこれからもどんどん知識を増やしていこう。

「さすがハルだね」

 どこか自慢げにそう言ってくれたアキトを、クリスはじっと見つめていた。なんだ、褒められている俺が羨ましいのか?それならお前も、何か知ってる事を話せば良いとこっそりと手で合図を送る。

 俺の合図の意味にすぐに気づいたクリスは、躊躇いながらもゆっくりと口を開いた。

「えー…ちなみに白い方はお茶に浮かべて香りを楽しんだり、香料や香水も作られています。水色の方はジャムにしたり、炒めて料理などにも使われてますよ」

 かなり唐突な切り出し方だったけれど、カーディさんとアキトはへぇーと感心している。素直な二人で良かったな。

「クリスもさすがに詳しいな!」
「ありがとうございます!」

 褒められたと笑うクリスを、カーディさんは愛おしいと言いたげな視線で見つめていた。
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