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456.【ハル視点】アーチと噴水
手を繋いで歩いていると、アキトの意識がどこに向いているのかがよく分かる。トリクの花を見ていると思ったら、視界に飛び込んできたお店をまじまじと見つめてみたりとなかなかに忙しそうだ。
何かにぶつからないようにとアキトを誘導しながら、俺はのんびりとイーシャル領都の中を進んでいった。
そうして辿り着いたのは、小道の入口を彩るトリクの花で飾られたアーチだ。
「これすごいね。綺麗だ」
「うん、すごいね。俺も初めて見るよ」
アキトと初めてを分かち合えるのが嬉しい。そう思って口にすれば、アキトは不思議そうに俺を見上げてきた。
「え、ハルも初めてなの?」
「うん、これは初めてだよ」
「ここを通るのが初めてって事?でも道知ってたよね?」
不思議そうに首を傾げるアキトに、俺は笑って答えを教えた。
「ただ切花で飾り付けただけのアーチなら、数年前までここにあったよ。俺もそれは見た事があるんだ」
「でも、これは違うの?」
「今目の前にあるアーチには、生きたままのトリクの花が使われてるんだ」
そう答えれば、アキトはアーチに視線を向けた。
「発想だけは昔からあったんだけど、生きたままっていうのが難しくてね。結局魔道具と魔法の併用で何とかなったって聞いたな」
水を与える必要も肥料を与える必要も無い。ただそこにあるだけで、トリクの花はいつでも美しく咲き乱れる。もはやこのアーチ自体が魔道具みたいなものだ。
「さすがにハルは詳しいですね。一体どこから情報が漏れてるんでしょう…?」
クリスは苦笑を浮かべながら、直球でそう尋ねてきた。おい、目が笑ってないぞ、クリス。情報漏洩したのは誰だと問い詰めたいって顔をしてるな。これは俺が口を滑らせたかもしれない。
「…俺はトリクの花師から聞いただけだから、一般的な噂では無いぞ」
もし問い詰められてもトリクの花師の名前は言わないぞと視線で牽制しながら、俺はとりあえずそう答えた。さあ、どうでるか。そう思って身構えていたが、クリスの反応は意外なものだった。
安心したように笑って、それなら良かったですと答えた。
たったあれだけの言葉で、騎士としての俺だから手に入った情報で中身は特にないと理解してくれたみたいだ。
「ああ、それなら良かったです」
「なあ、そう言うって事は、これに使われてる魔道具ってもしかしてストファー魔道具店のなのか?」
「ええ、確かにうちの製品ですよ」
クリスは即答で答えてから、なるほどうちの魔道具だと言う話までは広まって無いんですねと呟いている。うん、クリスはやっぱり油断できない相手だな。
「それなら面倒は少なくなりそうです」
「そうか」
まあ納得してくれたなら良かった。
「すごい!すごいですね、ストファー魔道具店!」
不意にアキトが口を開いたかと思えば、口から飛び出してきたのはストファー魔道具店への誉め言葉だった。心からの称賛に、クリスとカーディさんは顔を見合わせてからふわりと笑みを浮かべた。
「ありがとうございます」
「ありがとな」
「二人の魔道具が関係してると思ったら、更に綺麗に見える気がします!」
勢いこんでそう続けたアキトにクリスはさらりとお礼を返していたが、カーディさんは意外にも頬を赤く染めてそっと目線を反らしてしまった。
「何ていうか…ここまで素直に褒められると、ちょっと照れるな」
ああ、分かる。分かるぞ、その気持ち。アキトの称賛には裏が無いのが分かるから、心の柔らかい所に届くんだよな。
「照れているカーディも可愛いです」
「はいはい」
あまりにも慣れた様子で軽くクリスの言葉を流してみせたカーディさんに、アキトと俺は思わず噴き出してしまった。普段からこういうやりとりをいっぱいしてるんだろうな。
アーチをくぐって更に小道を進んでいくと、この街に来てからずっと聞こえていたあの水の音が一気に勢いを増していく。ここまで来ると噴水の音と混ざるんだよな。
不思議そうなアキトの手を惹いて歩いていくと、小道の先に不意に大きな白い噴水が見えてきた。
今も勢いよく空めがけて噴き出している水は、夕陽を反射してキラキラと輝いている。計算したかのように最高の時間帯だな。
ここの噴水は噴水だけで見れば、かなり地味な造りだ。真っ白な噴水には目立った飾りも無い。だけどそこに咲き乱れているトリクの花の色味が足される事で、驚くほど魅力的になるんだよな。
「ここがメロウさんの言ってた噴水?」
「うん、そうだよ。アキト、感想は?」
「えーっと、びっくりするぐらい綺麗だし…何か圧倒されてる」
「カーディはどうです?」
「俺もアキトと一緒だな。感動するぐらい綺麗だけど圧倒されてる」
二人の視線が一瞬も噴水から離れないのが、どれだけ感動したかの答えだな。俺はふふと小さく笑うと、アキトと一緒になって噴水を見上げた。
何かにぶつからないようにとアキトを誘導しながら、俺はのんびりとイーシャル領都の中を進んでいった。
そうして辿り着いたのは、小道の入口を彩るトリクの花で飾られたアーチだ。
「これすごいね。綺麗だ」
「うん、すごいね。俺も初めて見るよ」
アキトと初めてを分かち合えるのが嬉しい。そう思って口にすれば、アキトは不思議そうに俺を見上げてきた。
「え、ハルも初めてなの?」
「うん、これは初めてだよ」
「ここを通るのが初めてって事?でも道知ってたよね?」
不思議そうに首を傾げるアキトに、俺は笑って答えを教えた。
「ただ切花で飾り付けただけのアーチなら、数年前までここにあったよ。俺もそれは見た事があるんだ」
「でも、これは違うの?」
「今目の前にあるアーチには、生きたままのトリクの花が使われてるんだ」
そう答えれば、アキトはアーチに視線を向けた。
「発想だけは昔からあったんだけど、生きたままっていうのが難しくてね。結局魔道具と魔法の併用で何とかなったって聞いたな」
水を与える必要も肥料を与える必要も無い。ただそこにあるだけで、トリクの花はいつでも美しく咲き乱れる。もはやこのアーチ自体が魔道具みたいなものだ。
「さすがにハルは詳しいですね。一体どこから情報が漏れてるんでしょう…?」
クリスは苦笑を浮かべながら、直球でそう尋ねてきた。おい、目が笑ってないぞ、クリス。情報漏洩したのは誰だと問い詰めたいって顔をしてるな。これは俺が口を滑らせたかもしれない。
「…俺はトリクの花師から聞いただけだから、一般的な噂では無いぞ」
もし問い詰められてもトリクの花師の名前は言わないぞと視線で牽制しながら、俺はとりあえずそう答えた。さあ、どうでるか。そう思って身構えていたが、クリスの反応は意外なものだった。
安心したように笑って、それなら良かったですと答えた。
たったあれだけの言葉で、騎士としての俺だから手に入った情報で中身は特にないと理解してくれたみたいだ。
「ああ、それなら良かったです」
「なあ、そう言うって事は、これに使われてる魔道具ってもしかしてストファー魔道具店のなのか?」
「ええ、確かにうちの製品ですよ」
クリスは即答で答えてから、なるほどうちの魔道具だと言う話までは広まって無いんですねと呟いている。うん、クリスはやっぱり油断できない相手だな。
「それなら面倒は少なくなりそうです」
「そうか」
まあ納得してくれたなら良かった。
「すごい!すごいですね、ストファー魔道具店!」
不意にアキトが口を開いたかと思えば、口から飛び出してきたのはストファー魔道具店への誉め言葉だった。心からの称賛に、クリスとカーディさんは顔を見合わせてからふわりと笑みを浮かべた。
「ありがとうございます」
「ありがとな」
「二人の魔道具が関係してると思ったら、更に綺麗に見える気がします!」
勢いこんでそう続けたアキトにクリスはさらりとお礼を返していたが、カーディさんは意外にも頬を赤く染めてそっと目線を反らしてしまった。
「何ていうか…ここまで素直に褒められると、ちょっと照れるな」
ああ、分かる。分かるぞ、その気持ち。アキトの称賛には裏が無いのが分かるから、心の柔らかい所に届くんだよな。
「照れているカーディも可愛いです」
「はいはい」
あまりにも慣れた様子で軽くクリスの言葉を流してみせたカーディさんに、アキトと俺は思わず噴き出してしまった。普段からこういうやりとりをいっぱいしてるんだろうな。
アーチをくぐって更に小道を進んでいくと、この街に来てからずっと聞こえていたあの水の音が一気に勢いを増していく。ここまで来ると噴水の音と混ざるんだよな。
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「ここがメロウさんの言ってた噴水?」
「うん、そうだよ。アキト、感想は?」
「えーっと、びっくりするぐらい綺麗だし…何か圧倒されてる」
「カーディはどうです?」
「俺もアキトと一緒だな。感動するぐらい綺麗だけど圧倒されてる」
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