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473.目覚め
窓から差し込む眩い光にうっすらと目を開けば、視界に飛び込んできたのは寝転がったまま読書をしている珍しいハルの姿だった。ぼんやりと見つめていた視線に気づいたのか、不意にハルの視線がこちらを向いた。
「あ、起きた?おはよう、アキト」
手に持っていた本をさらりと腕輪に仕舞ったハルは、寝ぐせのついた俺の前髪を優しい指先で整えた。
「おはよ…ハル」
えーと、ベッドに寝転がっててハルがいるって事は、ここは多分黄昏の館だよね。
昨夜の事を思いだそうと記憶を遡っていた俺は、ゆるりと首を傾げた。料理店マティウスを出た所まではぼんやりーっと覚えてるんだけど、それ以降の事は残念ながら何も覚えてない。
たしか俺がお酒に強いって事を知ったトリィさんが、途中から料理に合うお酒をお勧めしてくれるようになったんだよね。美味しい料理にぴったりと合うお酒まで出されたら、止まらなくなって初めて飲む量を飲んだ気がする。
「ね、ハル。俺って、普通に歩いて帰ってこれた?」
「ん?」
にっこり笑顔でごまかすって事は、何かとんでもない失態でも犯してしまったんだろうか。一瞬でぎくりと固まった俺に、ハルは笑って口を開いた。
「ごめんごめん。大丈夫、大通りまでは普通に歩いてたよ」
大通りまでは普通に歩いていた。その言葉が意味する所は…。
「じゃ、じゃあ、大通りから後は?」
「うーん…そこでアキトが水路に落ちそうになったから、そこからは抱き上げて帰ったよ」
「抱き上げてって…えーと、どんな風に?」
「もちろん恋人抱きで運んだよ?」
うわぁぁぁぁぁぁぁ。お姫様だっこで大通りからここまで運ばれたって事か。いや、ありがたいんだよ。ありがたいんだけど、どれだけの人に目撃されたんだろう。恥ずかしい。
「迷惑かけてごめんね、ありがとう」
「迷惑なんかじゃないよ?でもどういたしまして」
ふわりと笑ったハルは、恥ずかしがる俺の耳元に囁いた。
「クリスなんてあの店から出る前に寝落ちしたから、店から黄昏の館までずーっとカーディさんに抱き上げられてたよ?」
「え…そうなの?」
「ああ、マティウスさんとトリィさんは、微笑ましそうにしながらも次に会ったら揶揄おうってワクワクしてた」
昨日ちょっとお話しただけの人達なのに、そのマティウスさんとトリィさんの姿はあっさり想像できるな。嬉々として揶揄われるクリスさんを、カーディはニコニコしながら見つめるんだろうなとそんな所まで想像できてしまった。
「それに恋人抱きで移動してる人なんて、別に珍しくも無いしね」
さらりと告げられた気になる発言に思わず聞き返してみれば、なんでも恋人と伴侶の街でもあるイーシャルではそのぐらいの事で動揺する人なんていないらしい。
まああれだけ往来でキスとか抱き合ったりとかしてる人達がいるんだから、恋人抱きぐらいなら見慣れてるのかもしれない。
ただ俺の恥ずかしさを紛らわせるために、そう言ってくれてるだけかもしれないけど。深く考えるのはやめて、俺はハルのその言葉を信じる事に決めた。
「今日はクリスとカーディさんは別行動って決まってるけど…今からどうしようか?」
「うーん、どうしよう?」
「朝食というかもう昼食の時間だけど…アキト、食欲はありそう?」
「うん」
意外にも一切二日酔いとかは無いみたいだし、胃が重いなんて事もなさそうだ。
「ここ黄昏の館でも朝食は食べられるみたいだけど、折角なら街に出る?」
「そうだね、昼の街も歩いてみたいな」
到着した時は既に夕方だったし、夜のイーシャルの街とは雰囲気も全然違うだろう。ハルと二人でデートしたいなと思いながらそう答えると、ハルは笑顔で俺が案内するよと請け負ってくれた。
いそいそと二人で用意を済ませて受付へと足を向けた俺達は、予想外の事態に二人揃って目を大きく見開いた。
数組の客らしき人達の姿があって、受付前にまさかの列ができていたんだ。この時間帯だから受付は空いてると思ってたんだけど、読みが甘かったみたいだ。
「やけに混んでるな」
ハルも俺と同意見みたいだなと思いながらもそっと受付へと近づいていけば、すぐにカウンターの中から一人の人が抜け出して来てくれた。
「おはようございます。鍵をお預かりしますね」
「おはようございます」
「おはようございます、何だか…すごく混んでるんですね?」
不思議に思ってそう尋ねた俺を、黄昏の館の従業員らしき青年はきょとんと大きな目で見返した。ついでパチパチと瞬きをしてから、そっと口を開く。
「もしかしてお客様方は、何も知らずにこの時期にイーシャルに来られたんですか?」
「え?」
「どういう意味ですか?」
俺の隣からハルがそう尋ねれば、青年は柔らかい笑みを浮かべて続けた。
「知らずに来られたなら本当に幸運ですね。今日からトリク祭りが始まるんですよ!」
「あ、起きた?おはよう、アキト」
手に持っていた本をさらりと腕輪に仕舞ったハルは、寝ぐせのついた俺の前髪を優しい指先で整えた。
「おはよ…ハル」
えーと、ベッドに寝転がっててハルがいるって事は、ここは多分黄昏の館だよね。
昨夜の事を思いだそうと記憶を遡っていた俺は、ゆるりと首を傾げた。料理店マティウスを出た所まではぼんやりーっと覚えてるんだけど、それ以降の事は残念ながら何も覚えてない。
たしか俺がお酒に強いって事を知ったトリィさんが、途中から料理に合うお酒をお勧めしてくれるようになったんだよね。美味しい料理にぴったりと合うお酒まで出されたら、止まらなくなって初めて飲む量を飲んだ気がする。
「ね、ハル。俺って、普通に歩いて帰ってこれた?」
「ん?」
にっこり笑顔でごまかすって事は、何かとんでもない失態でも犯してしまったんだろうか。一瞬でぎくりと固まった俺に、ハルは笑って口を開いた。
「ごめんごめん。大丈夫、大通りまでは普通に歩いてたよ」
大通りまでは普通に歩いていた。その言葉が意味する所は…。
「じゃ、じゃあ、大通りから後は?」
「うーん…そこでアキトが水路に落ちそうになったから、そこからは抱き上げて帰ったよ」
「抱き上げてって…えーと、どんな風に?」
「もちろん恋人抱きで運んだよ?」
うわぁぁぁぁぁぁぁ。お姫様だっこで大通りからここまで運ばれたって事か。いや、ありがたいんだよ。ありがたいんだけど、どれだけの人に目撃されたんだろう。恥ずかしい。
「迷惑かけてごめんね、ありがとう」
「迷惑なんかじゃないよ?でもどういたしまして」
ふわりと笑ったハルは、恥ずかしがる俺の耳元に囁いた。
「クリスなんてあの店から出る前に寝落ちしたから、店から黄昏の館までずーっとカーディさんに抱き上げられてたよ?」
「え…そうなの?」
「ああ、マティウスさんとトリィさんは、微笑ましそうにしながらも次に会ったら揶揄おうってワクワクしてた」
昨日ちょっとお話しただけの人達なのに、そのマティウスさんとトリィさんの姿はあっさり想像できるな。嬉々として揶揄われるクリスさんを、カーディはニコニコしながら見つめるんだろうなとそんな所まで想像できてしまった。
「それに恋人抱きで移動してる人なんて、別に珍しくも無いしね」
さらりと告げられた気になる発言に思わず聞き返してみれば、なんでも恋人と伴侶の街でもあるイーシャルではそのぐらいの事で動揺する人なんていないらしい。
まああれだけ往来でキスとか抱き合ったりとかしてる人達がいるんだから、恋人抱きぐらいなら見慣れてるのかもしれない。
ただ俺の恥ずかしさを紛らわせるために、そう言ってくれてるだけかもしれないけど。深く考えるのはやめて、俺はハルのその言葉を信じる事に決めた。
「今日はクリスとカーディさんは別行動って決まってるけど…今からどうしようか?」
「うーん、どうしよう?」
「朝食というかもう昼食の時間だけど…アキト、食欲はありそう?」
「うん」
意外にも一切二日酔いとかは無いみたいだし、胃が重いなんて事もなさそうだ。
「ここ黄昏の館でも朝食は食べられるみたいだけど、折角なら街に出る?」
「そうだね、昼の街も歩いてみたいな」
到着した時は既に夕方だったし、夜のイーシャルの街とは雰囲気も全然違うだろう。ハルと二人でデートしたいなと思いながらそう答えると、ハルは笑顔で俺が案内するよと請け負ってくれた。
いそいそと二人で用意を済ませて受付へと足を向けた俺達は、予想外の事態に二人揃って目を大きく見開いた。
数組の客らしき人達の姿があって、受付前にまさかの列ができていたんだ。この時間帯だから受付は空いてると思ってたんだけど、読みが甘かったみたいだ。
「やけに混んでるな」
ハルも俺と同意見みたいだなと思いながらもそっと受付へと近づいていけば、すぐにカウンターの中から一人の人が抜け出して来てくれた。
「おはようございます。鍵をお預かりしますね」
「おはようございます」
「おはようございます、何だか…すごく混んでるんですね?」
不思議に思ってそう尋ねた俺を、黄昏の館の従業員らしき青年はきょとんと大きな目で見返した。ついでパチパチと瞬きをしてから、そっと口を開く。
「もしかしてお客様方は、何も知らずにこの時期にイーシャルに来られたんですか?」
「え?」
「どういう意味ですか?」
俺の隣からハルがそう尋ねれば、青年は柔らかい笑みを浮かべて続けた。
「知らずに来られたなら本当に幸運ですね。今日からトリク祭りが始まるんですよ!」
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