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500.【ハル視点】ティーとの再会
公演が終わると、周囲は一気に騒がしくなった。このまま次の出し物を待つ人もかなりいるようだが、これから夜になると間違いなくもっと人が増えるだろう。アキトは十分満足したみたいだしと、俺達はすぐに人波に流されるようにして外へと続く道を歩き出した。
「楽しかったー」
満面の笑みを浮かべるアキトに、俺も笑顔で答える。
「ああ、楽しかったな」
ちらりと周りを見渡してみればどうやら周りを歩いている人達も、ほとんどがあの噴水広場の舞台を見ていた人達のようだだ。そこかしこから、あの舞台の感想が聞こえてくる。
「いやーフレイトの歌が凄すぎて」
「まさかこんな所で聞けると思ってなかったよな!」
「はーあのめっちゃ美人な踊り手さん…なんて名前なんだろ…」
「どの人さんだよ、美人さんなんていっぱいいただろ?」
「俺はやっぱり一曲目が好きでさぁ」
「確かにあれは良いよなーでも俺は最後から二番目の曲が好きだー」
「あ、それも好き」
「もう一回見たいよなー」
「なあ、見た事ない細長い笛みたいな楽器使ってた人いただろ?あれってどこの楽器?」
最初に歌ったあの見事な歌声の男性が、あの歌い手のフレイトなのか。名前は知っていたが顔は知らなかったから、まさかあれほどの人気の歌い手を連れてきているとは思わなかった。
フレイトの圧巻の歌から始まった公演は、最初から最後まで見ている人を少しも飽きさせなかった。
舞台には男女問わずたくさんの歌い手が登場したが、ほんの一瞬も観客を飽きさせない構成だった。何よりたくさんの歌い手で声を重ねてみたり、数人ずつで好きなようにまとまって歌ってみたりと、出演側もかなり楽しんでいたのが面白かった。
楽器を弾く奏で手も、気がつけばどんどん増えていった。異国では当然のように親しまれている生活に密着した楽器から、祭事にしか使われない珍しすぎる伝説級の楽器までが一堂に会していたのには素直に驚いた。
途中からは踊り手まで加わって、華やかさは増す一方だった。
あれは金を積んだとしても、そうそう見れる出し物では無いだろう。イーシャルの領主か、それともトリク祭りの実行をしている貴族なのかは知らないが、かなり奮発したんだろうな。
最終的には噴水広場にいた観客全員を巻き込んで、簡単なステップを踏んで踊ったりもした。パーティーなどのかしこまったダンスとは全く違う、ただ自分たちが楽しむためのダンスをアキトと手を繋いで踊るのはたまらなく楽しかった。
「はー終わっちゃったって気持ちと、良いものを見たって気持ちでいっぱいだよ」
寂しいような、嬉しいような複雑な気持ちだと告げたアキトに、俺は笑って頷いた。
「ああ、俺もそう思うよ。でも来て良かったね」
「うん、噴水広場の公演を教えてくれたあの宿の人にお礼言わなきゃね」
そこであの青年にお礼を言おうってなるのがアキトらしいな。俺はアキトにニッコリと笑いかけると、そっとアキトの頭に手を伸ばした。
「そうだな。忘れずに言うとしよう」
そう言いながら頭を撫でれば、アキトは嬉しそうに笑ってくれた。
感想を言い合いながら歩いていくと、気づけば俺達は昨日も訪れた大門前の階段へと辿り着いていた。とりあえず噴水広場からは出るかと歩いていたが、ここに繋がっていたのか。
「あーここもだいぶ変わってるな?」
「うん、そうだね。初めて来た場所みたいに感じるよ」
「確かに。ここにもこんなにトリクの花飾りがつくんだな」
階段周りには屋台や露店が一切無いせいか、他の場所に比べると明らかに人が少ない。さっきから人混みばかりだったからとアキトを階段に誘ってみれば、すぐに誘いに乗ってくれた。
二人で階段の隅に腰を下ろして、これからどこに行こうかと相談していると不意に声がかかった。
「あー!やっと見つけた!ハル!」
大きな声でそう叫んだのは、昨日も門の前で会ったあのティーだった。
「声が大きい」
隠密で行動しろという任務なら、俺も一目置くほどに気配を殺せるくせに普段は本当に賑やかな奴だ。
「あ、悪い」
素直にすぐに謝るから憎めない奴でもあるんだが。
「まあ良い。わざわざ俺達を探してたのか?ティー」
「そんなの探すに決まってるだろ!」
分かりやすく一瞬だけアキトを見たという事は、俺とアキトのやりとりをもっと見たかったって所だろうか。まあ俺からすれば惚気を聞いてくれるなら、むしろ歓迎だな。
「それにしても衛兵の制服って事は、今も仕事中か?」
「ああ、今日と明日は衛兵は全員祭りの巡回だよ。あ、一応言っておくけど今は休憩時間中だからな」
サボって俺を探すような奴だとは思っていないが、そうか、祭りの巡回中か。
「あー…うん。人が増えると色々あるからなぁ…」
夢中になっている間に財布を盗まれるとか、酒と祭りの雰囲気で気が大きくなったやつが暴れるとか、出会いを求めて声をかけまくっている奴がもめごとを起こすとか――祭りの規模が盛大であればあるほど、色々な問題が一気にやってくる日だ。
ティーは嫌そうに眉間にしわを寄せて頷いた。
「まあ色々あるな…」
「でも大事な仕事だからな」
「そうだな。あー…アキト…さんも、トリク祭り楽しめてるか?」
ティーはどこかぎこちなく、アキトにそう声をかけた。別にアキトに声をかけただけで怒り出したりはしないんだが、明らかに俺の反応を怖がってるな。
「はいっ!すごく楽しいです!」
「そっか、なら良かった。楽しんでくれてる人がいるなら俺達も頑張ろうって思えるからな」
「立派な衛兵になったんだな」
「あー…ありがとう?」
照れくさそうにしながらも嬉しそうに笑ったティーの笑顔は、十年以上前と何も変わっていなかった。
「楽しかったー」
満面の笑みを浮かべるアキトに、俺も笑顔で答える。
「ああ、楽しかったな」
ちらりと周りを見渡してみればどうやら周りを歩いている人達も、ほとんどがあの噴水広場の舞台を見ていた人達のようだだ。そこかしこから、あの舞台の感想が聞こえてくる。
「いやーフレイトの歌が凄すぎて」
「まさかこんな所で聞けると思ってなかったよな!」
「はーあのめっちゃ美人な踊り手さん…なんて名前なんだろ…」
「どの人さんだよ、美人さんなんていっぱいいただろ?」
「俺はやっぱり一曲目が好きでさぁ」
「確かにあれは良いよなーでも俺は最後から二番目の曲が好きだー」
「あ、それも好き」
「もう一回見たいよなー」
「なあ、見た事ない細長い笛みたいな楽器使ってた人いただろ?あれってどこの楽器?」
最初に歌ったあの見事な歌声の男性が、あの歌い手のフレイトなのか。名前は知っていたが顔は知らなかったから、まさかあれほどの人気の歌い手を連れてきているとは思わなかった。
フレイトの圧巻の歌から始まった公演は、最初から最後まで見ている人を少しも飽きさせなかった。
舞台には男女問わずたくさんの歌い手が登場したが、ほんの一瞬も観客を飽きさせない構成だった。何よりたくさんの歌い手で声を重ねてみたり、数人ずつで好きなようにまとまって歌ってみたりと、出演側もかなり楽しんでいたのが面白かった。
楽器を弾く奏で手も、気がつけばどんどん増えていった。異国では当然のように親しまれている生活に密着した楽器から、祭事にしか使われない珍しすぎる伝説級の楽器までが一堂に会していたのには素直に驚いた。
途中からは踊り手まで加わって、華やかさは増す一方だった。
あれは金を積んだとしても、そうそう見れる出し物では無いだろう。イーシャルの領主か、それともトリク祭りの実行をしている貴族なのかは知らないが、かなり奮発したんだろうな。
最終的には噴水広場にいた観客全員を巻き込んで、簡単なステップを踏んで踊ったりもした。パーティーなどのかしこまったダンスとは全く違う、ただ自分たちが楽しむためのダンスをアキトと手を繋いで踊るのはたまらなく楽しかった。
「はー終わっちゃったって気持ちと、良いものを見たって気持ちでいっぱいだよ」
寂しいような、嬉しいような複雑な気持ちだと告げたアキトに、俺は笑って頷いた。
「ああ、俺もそう思うよ。でも来て良かったね」
「うん、噴水広場の公演を教えてくれたあの宿の人にお礼言わなきゃね」
そこであの青年にお礼を言おうってなるのがアキトらしいな。俺はアキトにニッコリと笑いかけると、そっとアキトの頭に手を伸ばした。
「そうだな。忘れずに言うとしよう」
そう言いながら頭を撫でれば、アキトは嬉しそうに笑ってくれた。
感想を言い合いながら歩いていくと、気づけば俺達は昨日も訪れた大門前の階段へと辿り着いていた。とりあえず噴水広場からは出るかと歩いていたが、ここに繋がっていたのか。
「あーここもだいぶ変わってるな?」
「うん、そうだね。初めて来た場所みたいに感じるよ」
「確かに。ここにもこんなにトリクの花飾りがつくんだな」
階段周りには屋台や露店が一切無いせいか、他の場所に比べると明らかに人が少ない。さっきから人混みばかりだったからとアキトを階段に誘ってみれば、すぐに誘いに乗ってくれた。
二人で階段の隅に腰を下ろして、これからどこに行こうかと相談していると不意に声がかかった。
「あー!やっと見つけた!ハル!」
大きな声でそう叫んだのは、昨日も門の前で会ったあのティーだった。
「声が大きい」
隠密で行動しろという任務なら、俺も一目置くほどに気配を殺せるくせに普段は本当に賑やかな奴だ。
「あ、悪い」
素直にすぐに謝るから憎めない奴でもあるんだが。
「まあ良い。わざわざ俺達を探してたのか?ティー」
「そんなの探すに決まってるだろ!」
分かりやすく一瞬だけアキトを見たという事は、俺とアキトのやりとりをもっと見たかったって所だろうか。まあ俺からすれば惚気を聞いてくれるなら、むしろ歓迎だな。
「それにしても衛兵の制服って事は、今も仕事中か?」
「ああ、今日と明日は衛兵は全員祭りの巡回だよ。あ、一応言っておくけど今は休憩時間中だからな」
サボって俺を探すような奴だとは思っていないが、そうか、祭りの巡回中か。
「あー…うん。人が増えると色々あるからなぁ…」
夢中になっている間に財布を盗まれるとか、酒と祭りの雰囲気で気が大きくなったやつが暴れるとか、出会いを求めて声をかけまくっている奴がもめごとを起こすとか――祭りの規模が盛大であればあるほど、色々な問題が一気にやってくる日だ。
ティーは嫌そうに眉間にしわを寄せて頷いた。
「まあ色々あるな…」
「でも大事な仕事だからな」
「そうだな。あー…アキト…さんも、トリク祭り楽しめてるか?」
ティーはどこかぎこちなく、アキトにそう声をかけた。別にアキトに声をかけただけで怒り出したりはしないんだが、明らかに俺の反応を怖がってるな。
「はいっ!すごく楽しいです!」
「そっか、なら良かった。楽しんでくれてる人がいるなら俺達も頑張ろうって思えるからな」
「立派な衛兵になったんだな」
「あー…ありがとう?」
照れくさそうにしながらも嬉しそうに笑ったティーの笑顔は、十年以上前と何も変わっていなかった。
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