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506.【ハル視点】料理人の腕前
大好物のマルックスのグリルを口に運んだアキトは、もぐもぐとじっくりと味わってからポツリと呟いた。
「え、予想以上だ…」
もっと大騒ぎをして喜ぶのかと思っていたんだが、アキトの顔には珍しく一切表情が無い。真顔のアキトなんて珍しいななんて思いながら俺も一口食べてみれば、思わず息を飲むほどの旨味が口内に広がった。
元々肉汁が多いのがマルックスの特徴ではあるが、どうやって焼けばこんな味が引き出せるんだろう。アキトの言葉じゃないが、まさに予想以上だな。
「確かにこれは美味しいな」
「美味しすぎるよね」
「焼き方がうまいのか、素材が良いのか…いや、それともこの珍しい食べさせ方か?」
アキトに料理を作る時にこの味を引き出したいというのは、さすがに本職の料理人に失礼だろうな。分かってはいるんだが、少しでもこの味に近づけられないかと分析せずにはいられなかった。
ふと視線をあげれば、アキトはマルックスをもう一口頬張るところだった。もぐもぐと口を動かしているアキトに、ほんの思いつきで俺は声をかけた。
「ね、これってお酒にも合いそうだね?」
「いやいやいや、昨日運んでもらっちゃったから、今日はさすがにやめとくよ」
昨日の事を思いだしたのか、ぶんぶんと手を振ったアキトは恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。ああ、途中から恋人抱きで運んだのをまだ気にしてるのか。
「気にしなくて良いのに」
「え、でも…迷惑かけたし」
そう続けたアキトに、俺は笑って首を振った。
「酔ったアキトを運べるのは、俺の特権だろう?俺の伴侶候補様?」
軽い言葉に重い気持ちを隠すようにして囁けば、アキトは不思議そうに首を傾げた。
「えー…特権って本気でそう思ってる?」
「アキトに嘘は吐かないよ?ああでも、もし他の人に恋人抱きで運ばれたら、絶対に嫉妬するけどね」
そんな事態にならないようにもちろん全力を尽くすけれど、一応言っておこうと俺は軽い気持ちでそう口にした。嫉妬深い俺の発言をアキトはどう受け取っただろうか。そう思った瞬間、アキトはふわりと笑みを浮かべて答えた。
「いやいや、もしハルがいなかったらあそこまで油断して飲まないよ」
俺がいなかったら油断しない。さらりと言われたその殺し文句が、じわじわと俺の胸を温かくしていく。
「元の世界でも結構酒には強かったし、酔いつぶれたのなんて実家で家族と飲んだ時ぐらいだよ?」
あれは酔ってもすぐに寝れるーって思ってたからだと思うしと続けるアキトに、愛おしさがどんどん増して行く。
これ以上俺を惚れさせてどうするつもりなんだろうな、アキトは。
「よし、次に店員が来たらお酒も頼もう、ね?」
「うん、ありがと…でも昨日みたいには酔わないように気をつける!」
「だから別に気にしなくて良いのに」
お酒以外にも色んな種類の野菜串や川魚串を挟んで、次に店員が運んできたのは俺が心待ちにしていたあのウカのステーキ串だった。
「ウカのステーキ串だ、いるか?」
「ああ、大きめで頼む」
マルックスをあそこまで美味しく調理できるんだから、ウカのステーキ串も絶対に驚くほど美味い筈だ。そう思って即答した俺を、アキトはニコニコと笑って見つめていた。
「俺は普通でお願いします」
「分かった」
二人分のお皿に切り取ったステーキ肉を盛り付けると、店員は静かに部屋から去っていった。
「ハル、食べないの?」
アキトにそう尋ねられた俺は、ハッと顔を上げた。どうやら俺はウカのステーキ肉に見惚れていたみたいだ。
「あ、いや、美味しそうだなと見惚れてた」
食べ物に見惚れて固まってしまうなんて、まるで小さなこどもみたいだ。これはかなり恥ずかしいな。
「食べよ」
「ああ、そうだな」
二人揃ってステーキを切り分けて口に運べば、一気にじゅわりと肉汁があふれ出てくる。しっかりと濃いめに味付けがされているおかげで、肉の味が更に惹き立てられている。
「美味しいっ!」
アキトの嬉しそうな声を聞きながら、俺はじっくりとウカのステーキを堪能した。
あー、これはすごいな。アキトの予想以上というあの言葉が、自分の好物になった途端に理解できてしまった。焼き方のせいでステーキというよりは別の料理な気もするが、とにかく驚くほどに美味い。
「味付けが濃いのがお肉に合ってるね」
ニコニコと嬉しそうに俺を見つめながら、アキトがそう声をかけてくる。
「ああ…これは、すごいな…もっと食べたいな」
思わずこぼれた言葉に、アキトはうんうんと優しく頷いてくれた。
「串丸ごとだと、どれぐらいの大きさなんだろうな」
食べきれる大きさだろうか。
「後で店員さんに聞いてみたら?」
「ああ、そうだな」
串を片手に店員が部屋まで来てくれるのは、もう何度目かな。回数も途中までは数えてたが、もう何度目かはよく分からない。
肉の種類はもちろん部位まで全然違う物があったり、大きな川魚から小さい貝まで海鮮も種類豊富だった。
お試しが一周した後、俺はアキトに勧められるまま、ウカのステーキ串を追加した。あの店員が運んでいたのはお試し用にと作った特大サイズだったらしく、通常の大きさなら俺一人でも食べきれそうだったからな。
ウカのステーキを堪能した後は、二人揃って焼いた果物を食べた。これがまさかの予想以上の美味しさで驚きしかなかった。普通に焼いてない状態でなら食べたことのある果物ばかりなのに、全くの別物だと思うぐらいに味が違う。それぞれの果物にあった香草やスパイスが上手く組み合わされているようだ。
「焼いた果物ってこんなに美味しいんだ」
「ああ、さすがにこれは驚いたな」
ここの料理人は本当に一流なんだなと感心しながら、俺とアキトは皿の上の料理を綺麗に全て平らげた。
「でもどれも美味しかったね」
「ああ、アッシュには感謝しないとな」
俺達はちらりと視線を交わしてから、そっと口を開いた。
「「ごちそうさまでした」」
いただきますと同じく、二人の声は綺麗に重なった。
「え、予想以上だ…」
もっと大騒ぎをして喜ぶのかと思っていたんだが、アキトの顔には珍しく一切表情が無い。真顔のアキトなんて珍しいななんて思いながら俺も一口食べてみれば、思わず息を飲むほどの旨味が口内に広がった。
元々肉汁が多いのがマルックスの特徴ではあるが、どうやって焼けばこんな味が引き出せるんだろう。アキトの言葉じゃないが、まさに予想以上だな。
「確かにこれは美味しいな」
「美味しすぎるよね」
「焼き方がうまいのか、素材が良いのか…いや、それともこの珍しい食べさせ方か?」
アキトに料理を作る時にこの味を引き出したいというのは、さすがに本職の料理人に失礼だろうな。分かってはいるんだが、少しでもこの味に近づけられないかと分析せずにはいられなかった。
ふと視線をあげれば、アキトはマルックスをもう一口頬張るところだった。もぐもぐと口を動かしているアキトに、ほんの思いつきで俺は声をかけた。
「ね、これってお酒にも合いそうだね?」
「いやいやいや、昨日運んでもらっちゃったから、今日はさすがにやめとくよ」
昨日の事を思いだしたのか、ぶんぶんと手を振ったアキトは恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。ああ、途中から恋人抱きで運んだのをまだ気にしてるのか。
「気にしなくて良いのに」
「え、でも…迷惑かけたし」
そう続けたアキトに、俺は笑って首を振った。
「酔ったアキトを運べるのは、俺の特権だろう?俺の伴侶候補様?」
軽い言葉に重い気持ちを隠すようにして囁けば、アキトは不思議そうに首を傾げた。
「えー…特権って本気でそう思ってる?」
「アキトに嘘は吐かないよ?ああでも、もし他の人に恋人抱きで運ばれたら、絶対に嫉妬するけどね」
そんな事態にならないようにもちろん全力を尽くすけれど、一応言っておこうと俺は軽い気持ちでそう口にした。嫉妬深い俺の発言をアキトはどう受け取っただろうか。そう思った瞬間、アキトはふわりと笑みを浮かべて答えた。
「いやいや、もしハルがいなかったらあそこまで油断して飲まないよ」
俺がいなかったら油断しない。さらりと言われたその殺し文句が、じわじわと俺の胸を温かくしていく。
「元の世界でも結構酒には強かったし、酔いつぶれたのなんて実家で家族と飲んだ時ぐらいだよ?」
あれは酔ってもすぐに寝れるーって思ってたからだと思うしと続けるアキトに、愛おしさがどんどん増して行く。
これ以上俺を惚れさせてどうするつもりなんだろうな、アキトは。
「よし、次に店員が来たらお酒も頼もう、ね?」
「うん、ありがと…でも昨日みたいには酔わないように気をつける!」
「だから別に気にしなくて良いのに」
お酒以外にも色んな種類の野菜串や川魚串を挟んで、次に店員が運んできたのは俺が心待ちにしていたあのウカのステーキ串だった。
「ウカのステーキ串だ、いるか?」
「ああ、大きめで頼む」
マルックスをあそこまで美味しく調理できるんだから、ウカのステーキ串も絶対に驚くほど美味い筈だ。そう思って即答した俺を、アキトはニコニコと笑って見つめていた。
「俺は普通でお願いします」
「分かった」
二人分のお皿に切り取ったステーキ肉を盛り付けると、店員は静かに部屋から去っていった。
「ハル、食べないの?」
アキトにそう尋ねられた俺は、ハッと顔を上げた。どうやら俺はウカのステーキ肉に見惚れていたみたいだ。
「あ、いや、美味しそうだなと見惚れてた」
食べ物に見惚れて固まってしまうなんて、まるで小さなこどもみたいだ。これはかなり恥ずかしいな。
「食べよ」
「ああ、そうだな」
二人揃ってステーキを切り分けて口に運べば、一気にじゅわりと肉汁があふれ出てくる。しっかりと濃いめに味付けがされているおかげで、肉の味が更に惹き立てられている。
「美味しいっ!」
アキトの嬉しそうな声を聞きながら、俺はじっくりとウカのステーキを堪能した。
あー、これはすごいな。アキトの予想以上というあの言葉が、自分の好物になった途端に理解できてしまった。焼き方のせいでステーキというよりは別の料理な気もするが、とにかく驚くほどに美味い。
「味付けが濃いのがお肉に合ってるね」
ニコニコと嬉しそうに俺を見つめながら、アキトがそう声をかけてくる。
「ああ…これは、すごいな…もっと食べたいな」
思わずこぼれた言葉に、アキトはうんうんと優しく頷いてくれた。
「串丸ごとだと、どれぐらいの大きさなんだろうな」
食べきれる大きさだろうか。
「後で店員さんに聞いてみたら?」
「ああ、そうだな」
串を片手に店員が部屋まで来てくれるのは、もう何度目かな。回数も途中までは数えてたが、もう何度目かはよく分からない。
肉の種類はもちろん部位まで全然違う物があったり、大きな川魚から小さい貝まで海鮮も種類豊富だった。
お試しが一周した後、俺はアキトに勧められるまま、ウカのステーキ串を追加した。あの店員が運んでいたのはお試し用にと作った特大サイズだったらしく、通常の大きさなら俺一人でも食べきれそうだったからな。
ウカのステーキを堪能した後は、二人揃って焼いた果物を食べた。これがまさかの予想以上の美味しさで驚きしかなかった。普通に焼いてない状態でなら食べたことのある果物ばかりなのに、全くの別物だと思うぐらいに味が違う。それぞれの果物にあった香草やスパイスが上手く組み合わされているようだ。
「焼いた果物ってこんなに美味しいんだ」
「ああ、さすがにこれは驚いたな」
ここの料理人は本当に一流なんだなと感心しながら、俺とアキトは皿の上の料理を綺麗に全て平らげた。
「でもどれも美味しかったね」
「ああ、アッシュには感謝しないとな」
俺達はちらりと視線を交わしてから、そっと口を開いた。
「「ごちそうさまでした」」
いただきますと同じく、二人の声は綺麗に重なった。
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