生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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511.珍しい甘い物

「無事にこれからの予定も決まったことですし、そろそろこれの出番でしょうか」

 クリスさんはそんな事を言いながら、持ち込んでいた魔道収納鞄の中から小ぶりな木箱を取り出した。

 テーブルに載せられたその木箱の蓋には、いくつかの花の模様が小さく描かれていた。繊細なタッチの黒い線だけで描かれた花の中には、桜や梅に似たものまで混じっていてちょっと気になる。

「この箱の中身が…さっき言ってた珍しい甘い物なのか?」

 ハルは興味深そうに箱を観察しながらそう尋ねた。

「ええ、箱にもこだわってるらしいんです。綺麗な箱でしょう?」
「ああ、確かにこれは綺麗だな」

 手土産や贈り物にも良さそうだと、ハルは感心した様子だ。確かにこれは贈り物にも出来るかもしれないなと思わせる箱だった。

「それでは、開けますよ」

 そう声をあげたクリスさんに、俺はワクワクしながら箱へと視線を向けた。

「おおー面白い見た目だな」

 楽し気なカーディの声を聞きながら覗き込んだ木箱の中は、真ん中で二つに分かれていた。どうやら半分ずつ種類が違うみたいだけど、どちらも見た目の形は似たような雰囲気だ。

 丸い形の物が三つずつ串に刺さっていて、片方はとろみのある茶色いタレがかけられている。残りの半分にはタレは無く、ピンクと白と緑色の丸い物が刺さっている。

 うん、これ団子だよね。

 箱から出てきたものがあまりに予想外過ぎてついつい冷静に分析してしまったけど、これってどっからどう見てもみたらし団子と三色団子だよね。

 こんな所で団子に出会えるなんてと、俺は驚きに思わず固まってしまった。

「へえ、確かにこれは面白いし、かなり変わった見た目だな。俺も見た事がないよ」

 あ、ハルが知らないって事はこの世界ではそう知られてるものじゃないのか。

「クリス、これって…なんていう菓子なんだ?…というかこれは本当に菓子なのか?」

 見た目は串焼きみたいだよなと尋ねたカーディに、クリスさんは箱に添えられていた紙を見ながら答えた。

「えーと、ダンゴという名前で、れっきとした菓子だそうですよ?」
「ダンゴ?ダンゴかー。聞きなれない名前だな」

 カーディはダンゴの響きが気に入ったのか、楽し気に何度も何度も繰り返している。

 うん、やっぱりこれは団子だよね。というかこの見た目でもしこれが団子じゃなかったら、逆にびっくりするけどさ。

「まあ、まずは食べてみませんか?」
「そうだな」
「ああ」
「そうですね」

 取り出したお皿にみたらし団子と三色団子を並べたクリスさんは、それぞれの前にそっとお皿を差し出してくれた。お礼を言って受け取った俺達は、まじまじと目の前の団子を観察した。

「さあ、どうぞ」
「「いただきます」」
「んっ!これ、もちもちして美味いな!」
「ああ、確かにこれは…初めて食べる食感ですね」

 カーディとクリスさんが口をつけて感想を言うのを待ってから、俺もそっと団子を取り上げた。どちらにしようか悩んだけれど、やっぱりまずはみたらし団子からかな。

 久しぶりの和菓子に内心ではドキドキしながらみたらし団子に齧りついた俺は、口内に広がった味に心から感動してしまった。ちょっと甘めのタレがたまらなく懐かしい。

 俺は甘くない醤油が効いたみたらしも好きだけど、こういうちょっと甘いみたらしもやっぱり美味しいんだよなぁ。うん、これは間違いなくみたらし団子だ。

「みたらし、うま…」

 思わずそう呟きながら、俺はもぐもぐと口を動かした。

「うん、これは美味しいね、アキト」
「あ、うん、もちもちですごく美味しい!」
 
 ハルと二人で笑い合っている間に、カーディとクリスさんは今度は三色団子に齧りついていた。

「ああ、こっちも美味い!」
「ええ、こちらは三色で味が違うんですね」

 感想を言い合う二人を見ながら三色団子に齧りつけば、確かに一つずつ味が違っていた。白はともかく、ピンクと緑は果物とか野菜とかで染めているのかな?俺が知ってる三色団子とは違う風味がしたけど、これはこれで美味しかった。

「わ、本当に味が違うんだ!」
「これは楽しいな」
「見た目は串焼きっぽいと思ったけど、これはちゃんと菓子だな」

 カーディも団子の味が気に入ったのか、満足そうに頷きながら食べ進めている。

「クリス、ダンゴ気に入った!」
「ハルとアキトさんも気に入りました?」
「はいっ」
「ああ、好きな味だな」
「それは良かったです」

 クリスさんはそう言うと、本当に嬉しそうな笑みを浮かべてみせた。
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