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513.【ハル視点】のんびりと
風変りな串焼き屋でゆっくりと食事を楽しんでから店を出る頃には、辺りはもうすっかり夜になっていた。魔道具の灯りが灯り街を彩る時間帯になっても、トリク祭りはまだまだ終わらないようだ。いや、むしろこれからもう一度始まると言っても過言で無いかもしれない。
周囲をちらりと見渡してみれば、楽し気な恋人同士や伴侶たちが買い物を楽しんでいるのが視界に入ってくる。祭りの日もやっぱり夜の方が人手は多いのかと感心しながら、俺とアキトは手をつないだままのんびりと街中を歩いていた。
「あれ…ハル、なんか露店増えてない?」
「ああ、そういえば増えてるな」
来た時は露店も屋台も何も無い道だったのにとぽそりと呟いたアキトに、俺は確かにそうだなと明るく答えた。
「ここはイーシャルだから、夜だけ増える店もあるんだろうな」
「ああ、そっか」
「何か良いものがあるかもしれないけど…見にいく?」
まだ何か欲しい物があるならとそう尋ねてみたが、アキトは少し考えてからゆるりと首を振った。
「ううん、俺はもう満足したかな」
あっさりとそう言いきったアキトは、まっすぐに俺の目を見つめながら尋ねた。
「ハルは?」
誤魔化したり嘘を吐いたりしないでねと言いたげなその目を見て、俺はふわりと笑みを浮かべた。
「うん、俺も今日はもう良いかな。何なら明日もトリク祭りはやってるからね」
「あ、そっか!」
「じゃあそろそろ宿に帰ろうか?」
「うん、そうだね。のんびり帰ろう」
アキトはそう言うと、ふにゃりと笑った。あーのんびり帰ろうって良い言葉だよな。俺との時間を楽しんでくれているんだなと実感できるせいか、じんわりと胸が温かくなる気がする。
「ああ、のんびりね」
そう返した俺はアキトの手を引くと、さっきまでよりものんびりと歩き出した。
大通りへ出て歩いていた俺達は、不意に後ろからかけられた聞きなれた声に揃って振り返った。
「あ、アキト!」
そこにいたのは俺達と同じく手を繋いだまま歩いていた、クリスとカーディさんだった。
「え、カーディ?クリスさんも?」
「こんばんはー!こんな所で会えるなんてなー」
嬉しそうに話し出したアキトとカーディさんの後ろから、クリスが目線だけで挨拶をしてくるのに俺も視線だけで答える。
「うん、こんばんは。偶然だね…ってあれ?今日は宿に帰れないかもって言ってなかった?」
アキトが質問したのは、まさに今俺が一番聞きたい事だった。さすがアキトだな。
たしか当初の予定では、数日かけて近くの街の親戚に会いに行くんだと言っていたからな。街の外に出るなら護衛をするぞと言ったんだが、それは契約外だし護衛付きの貸し切り馬車で移動するから気にするなと押し切られたんだ。
ゆるりと首を傾げて尋ねたアキトの疑問に、クリスは笑顔で答えた。
「その予定だったんですが…トリク祭りで色々と予定が狂ったんですよ」
「トリク祭りで?」
「ええ、良い方にですけどね」
「そうそう、クリスの親戚がみーんなトリク祭り目当てでイーシャルに来てたからさ、俺との顔合わせも一瞬で終わったんだ」
ああ、そういえば二人は少し前に伴侶になったばかりなんだったな。顔合わせのために親戚に会いたかったのか。
「ああ、そういう事か。それは幸運だったな」
俺が笑ってそう話しかければ、クリスは満足そうに笑って答えた。
「そうですね、かなり運が良かったです」
「ほんとになー」
ニコニコと嬉しそうに笑い合う二人の様子に、俺とアキトも思わず笑みを浮かべた。幸せそうで何よりだよ。
「ところで、お二人はもう夕食は済んでるんですか?」
「ああ、俺達はもう済ませたよ。そっちは?」
「俺達も、もう食事は済ませたぞ」
屋台でいっぱい買って食べたんだと笑って教えてくれるカーディさんを、クリスは優しい笑みを浮かべて見守っている。
「それで…お二人のこれからの予定は?」
「もうそろそろ黄昏の館に戻ろうかって話してた所だけど」
「ああ、それならちょうど良かった。甘い物があるんですが宿で一緒にいかがですか?」
「いいのか?」
「ええ、もしハルとアキトさんさえ良ければぜひ。ちょっと珍しいものなんですよ」
悪戯っぽく続けたクリスの言葉に、俺はちらりとアキトの方へと視線を向けた。
「えっと…」
アキトはそう呟くと、そのまま言葉に詰まって黙り込んでしまった。即答で行くと言うと思っていた俺は、もしかして断りたいのかと慌てて口を開こうとした。アキトは優しいから、疲れてるなんて理由でも上手く断れないんじゃないかと心配になったからだ。
だが俺が言葉を発するよりも早く、カーディさんが口を開いた。
「アキト、俺達と一緒にまったり過ごすのは…嫌か?」
しょんぼりと肩を落として寂しそうに尋ねるカーディさんに、アキトは大慌てでブンブンと首を振った。
「嫌じゃないよ!」
ただ二人の邪魔になるかと思っただけだからと続けたアキトに、カーディさんは表情を一変させると嬉しそうに答えた。
「よし、じゃあ決まりだなー」
ああ、やっぱりさっきのしょんぼりした態度は演技だったか。カーディさんはこういう駆け引きも上手いんだな。アキトの表情も嬉しそうだから、本当は参加したかったんだろうなと俺はそれには触れずに続けた。
「決まりは良いんだが…、どこで食べるんだ?」
どちらかの部屋に行くにしても椅子の数が足りないだろうと、俺はクリスに話しかける。そもそも二人で泊まっている個室の中に、友人とは言え他の奴を入れたくないと思うのは俺だけか?と視線を向ければ、クリスは苦笑を浮かべて答えた。
「それは大丈夫ですよ。黄昏の館には商談用の部屋がありますから、そこを借りれば良いかと」
「ああ、それもそうか」
「賛成ー!」
よし、これで問題は無くなったなと、俺達は揃って黄昏の館への道を歩き出した。
周囲をちらりと見渡してみれば、楽し気な恋人同士や伴侶たちが買い物を楽しんでいるのが視界に入ってくる。祭りの日もやっぱり夜の方が人手は多いのかと感心しながら、俺とアキトは手をつないだままのんびりと街中を歩いていた。
「あれ…ハル、なんか露店増えてない?」
「ああ、そういえば増えてるな」
来た時は露店も屋台も何も無い道だったのにとぽそりと呟いたアキトに、俺は確かにそうだなと明るく答えた。
「ここはイーシャルだから、夜だけ増える店もあるんだろうな」
「ああ、そっか」
「何か良いものがあるかもしれないけど…見にいく?」
まだ何か欲しい物があるならとそう尋ねてみたが、アキトは少し考えてからゆるりと首を振った。
「ううん、俺はもう満足したかな」
あっさりとそう言いきったアキトは、まっすぐに俺の目を見つめながら尋ねた。
「ハルは?」
誤魔化したり嘘を吐いたりしないでねと言いたげなその目を見て、俺はふわりと笑みを浮かべた。
「うん、俺も今日はもう良いかな。何なら明日もトリク祭りはやってるからね」
「あ、そっか!」
「じゃあそろそろ宿に帰ろうか?」
「うん、そうだね。のんびり帰ろう」
アキトはそう言うと、ふにゃりと笑った。あーのんびり帰ろうって良い言葉だよな。俺との時間を楽しんでくれているんだなと実感できるせいか、じんわりと胸が温かくなる気がする。
「ああ、のんびりね」
そう返した俺はアキトの手を引くと、さっきまでよりものんびりと歩き出した。
大通りへ出て歩いていた俺達は、不意に後ろからかけられた聞きなれた声に揃って振り返った。
「あ、アキト!」
そこにいたのは俺達と同じく手を繋いだまま歩いていた、クリスとカーディさんだった。
「え、カーディ?クリスさんも?」
「こんばんはー!こんな所で会えるなんてなー」
嬉しそうに話し出したアキトとカーディさんの後ろから、クリスが目線だけで挨拶をしてくるのに俺も視線だけで答える。
「うん、こんばんは。偶然だね…ってあれ?今日は宿に帰れないかもって言ってなかった?」
アキトが質問したのは、まさに今俺が一番聞きたい事だった。さすがアキトだな。
たしか当初の予定では、数日かけて近くの街の親戚に会いに行くんだと言っていたからな。街の外に出るなら護衛をするぞと言ったんだが、それは契約外だし護衛付きの貸し切り馬車で移動するから気にするなと押し切られたんだ。
ゆるりと首を傾げて尋ねたアキトの疑問に、クリスは笑顔で答えた。
「その予定だったんですが…トリク祭りで色々と予定が狂ったんですよ」
「トリク祭りで?」
「ええ、良い方にですけどね」
「そうそう、クリスの親戚がみーんなトリク祭り目当てでイーシャルに来てたからさ、俺との顔合わせも一瞬で終わったんだ」
ああ、そういえば二人は少し前に伴侶になったばかりなんだったな。顔合わせのために親戚に会いたかったのか。
「ああ、そういう事か。それは幸運だったな」
俺が笑ってそう話しかければ、クリスは満足そうに笑って答えた。
「そうですね、かなり運が良かったです」
「ほんとになー」
ニコニコと嬉しそうに笑い合う二人の様子に、俺とアキトも思わず笑みを浮かべた。幸せそうで何よりだよ。
「ところで、お二人はもう夕食は済んでるんですか?」
「ああ、俺達はもう済ませたよ。そっちは?」
「俺達も、もう食事は済ませたぞ」
屋台でいっぱい買って食べたんだと笑って教えてくれるカーディさんを、クリスは優しい笑みを浮かべて見守っている。
「それで…お二人のこれからの予定は?」
「もうそろそろ黄昏の館に戻ろうかって話してた所だけど」
「ああ、それならちょうど良かった。甘い物があるんですが宿で一緒にいかがですか?」
「いいのか?」
「ええ、もしハルとアキトさんさえ良ければぜひ。ちょっと珍しいものなんですよ」
悪戯っぽく続けたクリスの言葉に、俺はちらりとアキトの方へと視線を向けた。
「えっと…」
アキトはそう呟くと、そのまま言葉に詰まって黙り込んでしまった。即答で行くと言うと思っていた俺は、もしかして断りたいのかと慌てて口を開こうとした。アキトは優しいから、疲れてるなんて理由でも上手く断れないんじゃないかと心配になったからだ。
だが俺が言葉を発するよりも早く、カーディさんが口を開いた。
「アキト、俺達と一緒にまったり過ごすのは…嫌か?」
しょんぼりと肩を落として寂しそうに尋ねるカーディさんに、アキトは大慌てでブンブンと首を振った。
「嫌じゃないよ!」
ただ二人の邪魔になるかと思っただけだからと続けたアキトに、カーディさんは表情を一変させると嬉しそうに答えた。
「よし、じゃあ決まりだなー」
ああ、やっぱりさっきのしょんぼりした態度は演技だったか。カーディさんはこういう駆け引きも上手いんだな。アキトの表情も嬉しそうだから、本当は参加したかったんだろうなと俺はそれには触れずに続けた。
「決まりは良いんだが…、どこで食べるんだ?」
どちらかの部屋に行くにしても椅子の数が足りないだろうと、俺はクリスに話しかける。そもそも二人で泊まっている個室の中に、友人とは言え他の奴を入れたくないと思うのは俺だけか?と視線を向ければ、クリスは苦笑を浮かべて答えた。
「それは大丈夫ですよ。黄昏の館には商談用の部屋がありますから、そこを借りれば良いかと」
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