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514.【ハル視点】商談用の部屋
俺も知らなかったが、黄昏の館にある商談用の部屋はかなり人気の部屋らしい。
空きがあると良いんですがとクリスはすこし心配していたようだが、どうやら今日は運が良い日だったようだ。使用用途を伝えただけでささっと用意されたカートを押しながら、俺達は廊下を歩いていく。
「うわー綺麗な部屋ー」
開いたドアの隙間からそっと部屋の中を覗いたカーディさんが、思わずといった感じでそう歓声をあげた。嬉しそうなクリスが開ききったドアから、俺達は四人揃って商談用の部屋の中へと足を踏み入れた。
壁には連作らしい小ぶりで上品な絵がいくつか掛けられていて、一際目を惹く大きな花瓶には色とりどりの花が美しく活けられている。
「わ、ほんとだーすごいね!」
綺麗だと声をあげたアキトの後ろから室内に入ると、俺はすぐに部屋の鍵を閉めた。
ここの防音結界はかなり高度な物が使われていて、例えどんな魔道具を使ってもどんなスキルを使っても絶対に盗み聞きができないレベルなんだそうだ。本来なら王族や高位貴族ぐらいしか使えない高級魔道具だと思うんだが、当たり前のように使われているのがこの場所の凄い所だな。
「んーでも思ったよりは派手じゃないな?」
俺はこのぐらいの方が好きだけど、ちょっと意外だとカーディさんは笑って続けた。
「俺もそう思った」
「お、アキトもか。だよなー」
「あー二人とも…派手じゃないだけで、かなりお金はかかってますよ?」
楽し気なアキトとカーディさんのやりとりに、クリスは言い難そうにしながらもそう声をかけた。
「なんだ、そうなのか?」
困り切った顔でこちらを見たクリスに、俺も苦笑しながら口を開く。あの連作の絵もかなりの値段がしそうだが、やっぱりこっちだろうな。
「なかでも特にその花瓶とかな」
俺がそう言って指差したのは、たくさんの花が活けられているあの大きな花瓶だった。
「花を活けて使うなんてこの花瓶に失礼だと怒りだす奴がいるかもしれない。そんなレベルの花瓶だよ」
人によっては厳重な結界の向こうに陳列するべきだと主張するかもしれない。そんな年代物かつ希少な、美術品レベルの花瓶だからな。
「さすが、ハルは目利きですね」
「へーこれがー」
カーディさんはそう言うと、花瓶の近くへと移動してまじまじと花瓶を観察し始めた。一方でアキトはささっと静かに距離を取ると、椅子の方へとそーっと回り込んだ。
仲の良い二人だが、こういう時の行動は全く違うんだな。そんな事を考えながら、俺はアキトの隣へと歩き出した。
全員の分のお茶を入れてから、俺達は椅子に座って向かい合った。今日は何をしてたのかなんて話題でひとしきり盛り上がり不意に話題が途切れた時に、俺はクリスに尋ねた。
「親戚に会いにいく予定が終わったって事は、あとは買い出しだけか?」
俺の質問に、クリスとカーディさんは笑って首を振った。
あれ?たしかストファー魔道具店のための素材の買い出しも予定に入ってた筈だよな?
俺はアキトと顔を見合わせてから、二人の方にそっと視線を向けた。
「今回私たちが手に入れたかったのは、赤褐色の竜種の魔石なんです」
「竜種の魔石ってだけでも厄介なのに、よりによって色指定か…」
「ええ」
不思議そうなアキトに、俺は竜種の魔石は個体差によってそれぞれ色が異なっているんだと説明した。
しかもこの魔石の色は、実際に手に入れるまで一切色の予想ができないものだ。水竜系を倒しても赤い魔石が出ることもあるし、逆に火竜系を倒しても水色の魔石がでるなんて事もある。何故か竜種だけがそうなるが、理由は未だ解明されていない。
「そもそも竜種そのものが少ない上に、倒すのも難しい。倒したとしても魔石が出ない事もあるんだ」
「更にその上に色指定…って事?」
頷けばアキトはうわぁと困った顔で呟いた。色によって用途も微妙に変わってくるから、繊細な魔道具を作るなら色指定がかかせないんだよな。
「ええ、本当に入手困難な素材なんですよ」
「しかも熟練の冒険者に依頼したとしても、すぐに手に入るってわけじゃない」
「今回はイーシャルにあるという、不確かな噂を元に買いに来たんです」
「もし運良く見つけられたとしても、値段交渉にはかなりの時間がかかるだろう」
カーディさんは難しい顔でそう言ったと思ったら、にっこりと笑ってから続けた。
「…って、そう思ってたんだけどな」
俺とアキトはん?と揃って首を傾げた。
「思ってた?」
「思ってたんだが、まさかのムフィル商会が手配してくれてな」
「えーと、ムフィル商会?」
どこかで名前を聞いたようなと悩んでしまったアキトの隣で、俺は嫌そうにぼそりと呟いた。
「ああ、あいつか」
「え?」
「襲撃未遂犯の依頼人だ」
「あ…あの人か!」
クリスは俺とアキトがそう言い合うのを聞いてから、笑顔で話し出した。
空きがあると良いんですがとクリスはすこし心配していたようだが、どうやら今日は運が良い日だったようだ。使用用途を伝えただけでささっと用意されたカートを押しながら、俺達は廊下を歩いていく。
「うわー綺麗な部屋ー」
開いたドアの隙間からそっと部屋の中を覗いたカーディさんが、思わずといった感じでそう歓声をあげた。嬉しそうなクリスが開ききったドアから、俺達は四人揃って商談用の部屋の中へと足を踏み入れた。
壁には連作らしい小ぶりで上品な絵がいくつか掛けられていて、一際目を惹く大きな花瓶には色とりどりの花が美しく活けられている。
「わ、ほんとだーすごいね!」
綺麗だと声をあげたアキトの後ろから室内に入ると、俺はすぐに部屋の鍵を閉めた。
ここの防音結界はかなり高度な物が使われていて、例えどんな魔道具を使ってもどんなスキルを使っても絶対に盗み聞きができないレベルなんだそうだ。本来なら王族や高位貴族ぐらいしか使えない高級魔道具だと思うんだが、当たり前のように使われているのがこの場所の凄い所だな。
「んーでも思ったよりは派手じゃないな?」
俺はこのぐらいの方が好きだけど、ちょっと意外だとカーディさんは笑って続けた。
「俺もそう思った」
「お、アキトもか。だよなー」
「あー二人とも…派手じゃないだけで、かなりお金はかかってますよ?」
楽し気なアキトとカーディさんのやりとりに、クリスは言い難そうにしながらもそう声をかけた。
「なんだ、そうなのか?」
困り切った顔でこちらを見たクリスに、俺も苦笑しながら口を開く。あの連作の絵もかなりの値段がしそうだが、やっぱりこっちだろうな。
「なかでも特にその花瓶とかな」
俺がそう言って指差したのは、たくさんの花が活けられているあの大きな花瓶だった。
「花を活けて使うなんてこの花瓶に失礼だと怒りだす奴がいるかもしれない。そんなレベルの花瓶だよ」
人によっては厳重な結界の向こうに陳列するべきだと主張するかもしれない。そんな年代物かつ希少な、美術品レベルの花瓶だからな。
「さすが、ハルは目利きですね」
「へーこれがー」
カーディさんはそう言うと、花瓶の近くへと移動してまじまじと花瓶を観察し始めた。一方でアキトはささっと静かに距離を取ると、椅子の方へとそーっと回り込んだ。
仲の良い二人だが、こういう時の行動は全く違うんだな。そんな事を考えながら、俺はアキトの隣へと歩き出した。
全員の分のお茶を入れてから、俺達は椅子に座って向かい合った。今日は何をしてたのかなんて話題でひとしきり盛り上がり不意に話題が途切れた時に、俺はクリスに尋ねた。
「親戚に会いにいく予定が終わったって事は、あとは買い出しだけか?」
俺の質問に、クリスとカーディさんは笑って首を振った。
あれ?たしかストファー魔道具店のための素材の買い出しも予定に入ってた筈だよな?
俺はアキトと顔を見合わせてから、二人の方にそっと視線を向けた。
「今回私たちが手に入れたかったのは、赤褐色の竜種の魔石なんです」
「竜種の魔石ってだけでも厄介なのに、よりによって色指定か…」
「ええ」
不思議そうなアキトに、俺は竜種の魔石は個体差によってそれぞれ色が異なっているんだと説明した。
しかもこの魔石の色は、実際に手に入れるまで一切色の予想ができないものだ。水竜系を倒しても赤い魔石が出ることもあるし、逆に火竜系を倒しても水色の魔石がでるなんて事もある。何故か竜種だけがそうなるが、理由は未だ解明されていない。
「そもそも竜種そのものが少ない上に、倒すのも難しい。倒したとしても魔石が出ない事もあるんだ」
「更にその上に色指定…って事?」
頷けばアキトはうわぁと困った顔で呟いた。色によって用途も微妙に変わってくるから、繊細な魔道具を作るなら色指定がかかせないんだよな。
「ええ、本当に入手困難な素材なんですよ」
「しかも熟練の冒険者に依頼したとしても、すぐに手に入るってわけじゃない」
「今回はイーシャルにあるという、不確かな噂を元に買いに来たんです」
「もし運良く見つけられたとしても、値段交渉にはかなりの時間がかかるだろう」
カーディさんは難しい顔でそう言ったと思ったら、にっこりと笑ってから続けた。
「…って、そう思ってたんだけどな」
俺とアキトはん?と揃って首を傾げた。
「思ってた?」
「思ってたんだが、まさかのムフィル商会が手配してくれてな」
「えーと、ムフィル商会?」
どこかで名前を聞いたようなと悩んでしまったアキトの隣で、俺は嫌そうにぼそりと呟いた。
「ああ、あいつか」
「え?」
「襲撃未遂犯の依頼人だ」
「あ…あの人か!」
クリスは俺とアキトがそう言い合うのを聞いてから、笑顔で話し出した。
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