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519.【ハル視点】話し合い
部屋に戻ったアキトが鍵をかけるのをきっちり見届けてから、俺は来たばかりの廊下を一人さびしく戻りだした。
ここから腹の探り合いが始まるのかもしれないと思うと、今すぐアキトの寝ているベッドに潜り込んで一緒に寝てしまいたくなる。まあそんな事をしたら後々面倒になりそうだから、絶対に出来ないんだけどな。
商談用の部屋の前に辿り着くと、先に戻ってきていたクリスが一人ぽつんと廊下に立っていた。
「待たせたな」
「いえ」
「入って待ってても良かったんだぞ?」
「ええ、そうなんですけど…なんとなく」
「すまなかったな、とりあえず部屋に入ろうか」
「ええ、そうですね」
部屋に入って後ろ手にドアの鍵を閉めれば、即座に防音結界が発動する。先に部屋に入っていたクリスはきちんと結界が作動したのを確認してから、そっと口を開いた。
「ハル、確認したい事と…それに話したい事があるんです」
「まだ椅子にも座ってないのにか?」
揶揄うように声をかければ、クリスはハッと顔を上げてまずは座りましょうかと気まずそうに呟いた。
「最初はお酒は無しで良いですか?」
「ああ、もちろんだ」
「お茶は、いりますか?」
「いや、もう十分だ。それで、確認したい事っていうのは?」
用件は分かっているけれどあえてとぼけて尋ねてみた。さてどう出るか。そう思いながら真正面に座っているクリスを見つめれば、クリスは視線を反らさずに見かえしてきた。
「ハル、アキトさんは…異世界人なんですか?」
腹の探り合いなんて一切無いあまりに直球の質問に驚きつつも、俺は一切表情を変えないままで答えた。
「どうしてそう思ったんだ?」
否定もしないけれどはっきりと肯定もしない。質問に質問で返した俺に、クリスは怒るでも無くあっさりと口を開いた。
「さっき食べたあのダンゴ、あれは私の親戚が新しく出す予定の店の新商品なんです」
「そうなのか」
「まだ一般には販売されていない試作品を、食べてみて欲しいと渡されたものなんですが…あれはとある異世界人がどうしても食べたいと言って、試行錯誤して作った料理法らしいんです」
なるほど、やっぱりあれは異世界人が考えた料理なのか。アキトがあれだけ嬉しそうにするって事は、もしかしたらアキトと同じ国から来た人なんだろうか。そんな事を考えてしまうのは、ただの現実逃避だろうか。
「数代前に親戚の家に保護されていた異世界人がいたという話は知っていましたが、その当時の家長の日記が今になって出てくるとは思いませんでした」
俺は何も答えなかったが、クリスは気にせずに続けた。
「特別に読ませてもらったその日記の中には、珍しい菓子の料理法と一緒にその異世界人のお話もありました。中でも私が気になったのは、その異世界人がよく口にしていたという言葉なんです。ミタラシダンゴが正式名称なんだと教えてくれたのに、何故か異世界人はダンゴの事をミタラシとだけ呼んでいたんだと」
「……」
「アキトさんはあの時、ミタラシと言いましたよね」
ああ、やっぱりアキトが呟いたあの言葉か。反応が無かったから大丈夫かと思ったんだが、クリスにはしっかりと聞こえていたらしい。
「もう一度聞きます。アキトさんは異世界人なんですか?」
ここまで情報があるなら、否定した所で意味は無いだろう。
「クリス、その質問に答える前に、もう一つだけ俺からも質問をしても良いか?」
「ええ、どうぞ」
「それを知って、クリスはどうするつもりだ?」
尋ねながら俺はじっとクリスの目を見かえした。
「もしアキトの異世界人としての知識を利用するつもりなら、俺は敵になるぞ」
「ハル…殺気を飛ばすのは止めてください」
クリスに指摘されて初めて、自分が殺気を飛ばしていた事に気が付いた。自分の感情を
制御するのは得意な方なんだが、アキトの事になると制御がきかなくなるらしい。
「そんなつもりは無かったんだが…すまない」
殺気を飛ばした事を素直に謝まれば、クリスは苦笑を浮かべて気にしないでくだいと答えてくれた。
ここから腹の探り合いが始まるのかもしれないと思うと、今すぐアキトの寝ているベッドに潜り込んで一緒に寝てしまいたくなる。まあそんな事をしたら後々面倒になりそうだから、絶対に出来ないんだけどな。
商談用の部屋の前に辿り着くと、先に戻ってきていたクリスが一人ぽつんと廊下に立っていた。
「待たせたな」
「いえ」
「入って待ってても良かったんだぞ?」
「ええ、そうなんですけど…なんとなく」
「すまなかったな、とりあえず部屋に入ろうか」
「ええ、そうですね」
部屋に入って後ろ手にドアの鍵を閉めれば、即座に防音結界が発動する。先に部屋に入っていたクリスはきちんと結界が作動したのを確認してから、そっと口を開いた。
「ハル、確認したい事と…それに話したい事があるんです」
「まだ椅子にも座ってないのにか?」
揶揄うように声をかければ、クリスはハッと顔を上げてまずは座りましょうかと気まずそうに呟いた。
「最初はお酒は無しで良いですか?」
「ああ、もちろんだ」
「お茶は、いりますか?」
「いや、もう十分だ。それで、確認したい事っていうのは?」
用件は分かっているけれどあえてとぼけて尋ねてみた。さてどう出るか。そう思いながら真正面に座っているクリスを見つめれば、クリスは視線を反らさずに見かえしてきた。
「ハル、アキトさんは…異世界人なんですか?」
腹の探り合いなんて一切無いあまりに直球の質問に驚きつつも、俺は一切表情を変えないままで答えた。
「どうしてそう思ったんだ?」
否定もしないけれどはっきりと肯定もしない。質問に質問で返した俺に、クリスは怒るでも無くあっさりと口を開いた。
「さっき食べたあのダンゴ、あれは私の親戚が新しく出す予定の店の新商品なんです」
「そうなのか」
「まだ一般には販売されていない試作品を、食べてみて欲しいと渡されたものなんですが…あれはとある異世界人がどうしても食べたいと言って、試行錯誤して作った料理法らしいんです」
なるほど、やっぱりあれは異世界人が考えた料理なのか。アキトがあれだけ嬉しそうにするって事は、もしかしたらアキトと同じ国から来た人なんだろうか。そんな事を考えてしまうのは、ただの現実逃避だろうか。
「数代前に親戚の家に保護されていた異世界人がいたという話は知っていましたが、その当時の家長の日記が今になって出てくるとは思いませんでした」
俺は何も答えなかったが、クリスは気にせずに続けた。
「特別に読ませてもらったその日記の中には、珍しい菓子の料理法と一緒にその異世界人のお話もありました。中でも私が気になったのは、その異世界人がよく口にしていたという言葉なんです。ミタラシダンゴが正式名称なんだと教えてくれたのに、何故か異世界人はダンゴの事をミタラシとだけ呼んでいたんだと」
「……」
「アキトさんはあの時、ミタラシと言いましたよね」
ああ、やっぱりアキトが呟いたあの言葉か。反応が無かったから大丈夫かと思ったんだが、クリスにはしっかりと聞こえていたらしい。
「もう一度聞きます。アキトさんは異世界人なんですか?」
ここまで情報があるなら、否定した所で意味は無いだろう。
「クリス、その質問に答える前に、もう一つだけ俺からも質問をしても良いか?」
「ええ、どうぞ」
「それを知って、クリスはどうするつもりだ?」
尋ねながら俺はじっとクリスの目を見かえした。
「もしアキトの異世界人としての知識を利用するつもりなら、俺は敵になるぞ」
「ハル…殺気を飛ばすのは止めてください」
クリスに指摘されて初めて、自分が殺気を飛ばしていた事に気が付いた。自分の感情を
制御するのは得意な方なんだが、アキトの事になると制御がきかなくなるらしい。
「そんなつもりは無かったんだが…すまない」
殺気を飛ばした事を素直に謝まれば、クリスは苦笑を浮かべて気にしないでくだいと答えてくれた。
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