生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
525 / 1,561

524.のんびりイチャイチャ

 クリスさんの忠告について教えてもらった後は、自然と今日の予定が話題に上がった。

 ハルによると出発は昼頃だから、今すぐ急いで出る必要は無いんだって。

 今からトリク祭りを見て回る?とハルは聞いてくれたんだけど、昨日かなり堪能したからね。探りを入れてみたら、ハルも満足してるみたいだしもう良いかなと思ったんだ。

「じゃあ二人でのんびり過ごそうか」
「うん」

 嬉しそうに笑ってくれるハルに、俺も自然と笑みを浮かべて答えた。ハルと二人きりでのんびり過ごすのは、幸せで贅沢な時間だ。

 窓でも開ければ賑やかな声や音楽が聞こえてくるんだろうけど、防音結界の効いた部屋の中は静かなものだ。

「アキト、おいで」

 ベッドの背もたれに身体を預けるようにして座ったハルは、笑顔で俺を手招いた。素直にスタスタと近づいていけば、ハルは自分の脚の間をぽんぽんと軽く叩いた。

 そ、そこに座れって?それってバックハグってやつかな?

 イチャイチャできる嬉しさと恥ずかしさの間でちょっとだけ悩んだけど、俺は欲望に負けてそーっとハルに近づいていった。

 ベッドに乗り上げてゆっくりと近づいていく俺を、ハルは急かすでも無くただニコニコ笑って見つめている。ああもう、その悪戯っぽい顔も格好良いな。

 絶対頬が赤い気がする。そろりそろりと近づいていくと、俺は背中を向けてちょこんとハルの脚の間に腰を下ろした。

「可愛いな」

 耳元で愛おしそうな声がそんな恥ずかしい事を言ったと思ったら、次の瞬間には後ろからギュッと抱きしめられていた。

 あーこの姿勢、想像以上に恥ずかしいんだけど、思ったよりも落ち着くな。背中に感じるハルの体温に、俺はホッと息を吐いた。

「アキト、この依頼もあと数日で終わるね」
「うん、そうだね。でも、思ったよりもあっという間だったな」

 これが初の護衛依頼だったから密かに緊張してたんだけど、今のところ問題無く進んでいる気がする。トライプールに無事に着くまで油断はできないけどね。

「これは依頼人のおかげかな?クリスさんもカーディも良い人で良かったよね」
「ああ、そうだな。でもアキトはともかく、まさか俺にまで友人が増えるとは思わなかったよ」

 耳元でそう囁いたハルの顔は見えないけど、多分穏やかな笑顔なんだろうな。そう思わせるような優しい声色だった。

「大きな問題は無くても、色んな事があったよね」
「あーあの伴侶と恋人自慢は楽しかったな。どれだけ惚気ても問題ない奴が相手じゃないとできないししないけど」
「あーうん、俺もカーディといっぱい話したけど、楽しかったよ」

 惚気話とかした事なかったけど、カーディが上手く聞き出してくれたから結構惚気させてもらった気がする。

「それに川魚串は、やっぱり何度食べても美味しかったな」
「あれは本当に美味しかったね」

 もしかしたらあの川魚串を食べるためだけに、船着き場に行きたいーってなる日がくるかもしれない。そう呟いた俺に、ハルはそうなったら二人で行こうよと明るく答えてくれた。

「そうだ、船で会った兄の件では…」
「ハル、止まって!」

 この流れはまずいと思わず大きな声を上げれば、ハルはぴたりと言葉を止めた。俺のお腹に回された手から、ハルが緊張しているのが伝わってくる。俺はそんなハルの手をゆっくりとお腹からほどくと、恋人繋ぎでキュッと握りしめた。

「もう十分謝って貰ったからね?」

 緊張がほぐれるようにと、そのままゆっくりと握っては緩めてを繰り返す。

「…うん、そう、だったな。分かった、もう謝らないよ」

 ありがとうと呟いたハルに、俺はあえて明るい声で続けた。

「あの船旅も楽しかったよね」
「ああ、綺麗な景色も見れたしな。アキトに船酔いが無いなら、今度は海の船にも乗ってみないか?」

 あー港町にいたムキムキな船乗りさんだらけの、あの海の船か。

「そうだね、いつか」

 あれだけの筋肉が必要な魔物を相手どるんだって聞いたから、ちょっと警戒してたけどハルと一緒なら怖くない。

「船の中と言えばさ、この腕輪すごく嬉しかったな。ありがとう」

 俺は繋いでいたハルの手を持ち上げると、伴侶候補の腕輪を指先で柔らかく撫でた。

「いや、俺も喜んでもらえた事が嬉しかったよ」

 ハルはふふと耳元で笑うと、俺の髪の毛にチュッと小さな音を立ててキスをした。後頭部にキスをされると思ってなかった俺は思わず身じろいだけど、ハルは楽し気に笑うだけで離してはくれなかった。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。