534 / 1,561
533.体質の話
「えーと、まずはみなさん、防音結界を許してくれてありがとうございます」
お礼の言葉から始めた俺に、周りの皆も笑みを返してくれる。ウォルターさんからは硬くならなくて良いぞーと声がかかった。
「ブレイズの元気が無いように見える理由はもしかして俺の秘密のせいかなと思ったので、話を聞いてもらおうと思いました」
うーん、ちゃんと順序だてて説明しなきゃなって思ったら、なんだか急に小学生の作文みたいになってる気がする。
「うまく説明できるか分からないけど、聞いてください」
とは言ったものも、やっぱり自分の体質の話をするのはちょっと勇気がいるんだよな。自分から誰かに言ったのなんて、まだ数回しかないし。どう説明しようと悩んだ俺に気づいたのか、ハルはにっこりと笑って手を上げた。
「じゃあまずは前提から話そうか。俺はちょっと前まで魔物から食らった毒のせいで意識がなくてね」
「「「は?」」」
ウォルターさんとファリーマさん、ブレイズの声が綺麗に重なった。クリスさんとルセフさん、それにカーディはその話かと納得してるみたいだ。カーディもハルが眠ってた事、知ってたんだな。
「まあ正確に言うと意識が無いというより…身体をベッドの中に置いたまま、俺は幽霊になってたんだよ」
あっさりとそう続けたハルの説明に、さっきは驚いていなかった三人も大きく目を見開いている。まあ、びっくりするよね。
「原因は俺も分からないんだ。何かの奇跡なのか、それともあの毒の副作用なのかは――とにかく俺は幽霊になって一人で色んな場所を旅してたんだ」
そこまで話したハルが、俺の方へと視線を向けた。優しい目で促された俺は、ぐっと手を握りしめてから口を開いた。
「えっと、俺は生まれつき不思議なスキルを持っていて、幽霊が見えるんです」
「そんなスキルが…あるのか?」
ルセフさんの口にした当然の疑問に、俺は思ったよりも冷静に答えられた。
「俺の父親も同じスキルを持っていました。幽霊が見えるし、声が聞こえるスキルです」
「あ、いや否定に聞こえたならすまない。知らないスキルがまだまだたくさん存在してる事は知ってるし、アキトとハルがこんな嘘を言うとは思ってないよ」
そう言ったルセフさんは以前と何も変わらない温かい目で俺を見ると、ニコリと笑みを浮かべた。幽霊を見た事が無い人にはにわかには信じがたい話だと思うんだけど、そっか信じてくれるんだ。
ルセフさんだけじゃない。他の皆も普通の顔で話の続きを待ってくれてる。じわりと胸が温かくなった。
「もう予想は付いてると思うけど、俺は幽霊の状態でアキトにあったんだ」
「ああ、なるほど。そんな出会いだったんですね」
「あー、一応言っておくけど、アキトは両親以外にはこのスキルの事は隠して暮らしてきたらしい。だからこの前は適当な出会いを話したんだ、悪かったな」
頭を下げて謝罪するハルに、俺は慌てて口を開いた。
「待って、ハルが謝る事じゃないよ…みんな、ごめんね」
みんなは口々に気にするなと言ってくれた。
そもそもスキルは秘匿するものだからそれで正しいって慰められたし、クリスさんは出会った時が幽霊だったってだけで全部が嘘でも無いんでしょう?と笑っている。
「ああ、出会った時が幽霊だったってだけでそこは嘘じゃない。俺はアキトに出会うまでは一人でふらふらしてたんだが、アキトに出会ってからはいつも一緒にいたんだ」
「は?いつも?」
「ああ、だから俺はカーディさんが黒鷹亭で働いてたのも知ってるし、その後のクリスとカーディとアキトの飲み会も知ってる」
クリスさんとカーディはびっくり顔でハルを見つめている。
「ブレイズとアキトが昇級試験を受けた時も、ルセフたちのパーティーとの冒険もな」
「あー…俺のあの失態もか」
ルセフさんは苦い顔でぽつりとそう呟いた。あの毒キノコの事だなとすぐに分かったけど、あれはルセフさんの失態ってわけじゃないと思うんだけどな。あれは避けられない事故だと思う。
「あれは仕方ないさ」
「あ、もしかしてあの時の薬って…?」
ハッと顔を上げたファリーマさんの質問をハルは笑って流そうとしたけれど、俺は声をあげた。
「うん、ハルが教えてくれたんです!」
「あーそうか…あの時はありがとうな」
「いや、アキトがいなかったら、対処法を伝える事すら出来なかったんだからな」
それでも助かったよと笑ったルセフさんは、アキトもありがとうなと言葉を重ねた。あの時はこんな事があったななんて話をし始めていたその瞬間、ブレイズがいきなり叫んだ。
「え…待って!じゃあもしかしてハルさんは…ハルさんは、精霊じゃないって事!?」
しんと静まり返った中、全員の視線がブレイズに集中した。
お礼の言葉から始めた俺に、周りの皆も笑みを返してくれる。ウォルターさんからは硬くならなくて良いぞーと声がかかった。
「ブレイズの元気が無いように見える理由はもしかして俺の秘密のせいかなと思ったので、話を聞いてもらおうと思いました」
うーん、ちゃんと順序だてて説明しなきゃなって思ったら、なんだか急に小学生の作文みたいになってる気がする。
「うまく説明できるか分からないけど、聞いてください」
とは言ったものも、やっぱり自分の体質の話をするのはちょっと勇気がいるんだよな。自分から誰かに言ったのなんて、まだ数回しかないし。どう説明しようと悩んだ俺に気づいたのか、ハルはにっこりと笑って手を上げた。
「じゃあまずは前提から話そうか。俺はちょっと前まで魔物から食らった毒のせいで意識がなくてね」
「「「は?」」」
ウォルターさんとファリーマさん、ブレイズの声が綺麗に重なった。クリスさんとルセフさん、それにカーディはその話かと納得してるみたいだ。カーディもハルが眠ってた事、知ってたんだな。
「まあ正確に言うと意識が無いというより…身体をベッドの中に置いたまま、俺は幽霊になってたんだよ」
あっさりとそう続けたハルの説明に、さっきは驚いていなかった三人も大きく目を見開いている。まあ、びっくりするよね。
「原因は俺も分からないんだ。何かの奇跡なのか、それともあの毒の副作用なのかは――とにかく俺は幽霊になって一人で色んな場所を旅してたんだ」
そこまで話したハルが、俺の方へと視線を向けた。優しい目で促された俺は、ぐっと手を握りしめてから口を開いた。
「えっと、俺は生まれつき不思議なスキルを持っていて、幽霊が見えるんです」
「そんなスキルが…あるのか?」
ルセフさんの口にした当然の疑問に、俺は思ったよりも冷静に答えられた。
「俺の父親も同じスキルを持っていました。幽霊が見えるし、声が聞こえるスキルです」
「あ、いや否定に聞こえたならすまない。知らないスキルがまだまだたくさん存在してる事は知ってるし、アキトとハルがこんな嘘を言うとは思ってないよ」
そう言ったルセフさんは以前と何も変わらない温かい目で俺を見ると、ニコリと笑みを浮かべた。幽霊を見た事が無い人にはにわかには信じがたい話だと思うんだけど、そっか信じてくれるんだ。
ルセフさんだけじゃない。他の皆も普通の顔で話の続きを待ってくれてる。じわりと胸が温かくなった。
「もう予想は付いてると思うけど、俺は幽霊の状態でアキトにあったんだ」
「ああ、なるほど。そんな出会いだったんですね」
「あー、一応言っておくけど、アキトは両親以外にはこのスキルの事は隠して暮らしてきたらしい。だからこの前は適当な出会いを話したんだ、悪かったな」
頭を下げて謝罪するハルに、俺は慌てて口を開いた。
「待って、ハルが謝る事じゃないよ…みんな、ごめんね」
みんなは口々に気にするなと言ってくれた。
そもそもスキルは秘匿するものだからそれで正しいって慰められたし、クリスさんは出会った時が幽霊だったってだけで全部が嘘でも無いんでしょう?と笑っている。
「ああ、出会った時が幽霊だったってだけでそこは嘘じゃない。俺はアキトに出会うまでは一人でふらふらしてたんだが、アキトに出会ってからはいつも一緒にいたんだ」
「は?いつも?」
「ああ、だから俺はカーディさんが黒鷹亭で働いてたのも知ってるし、その後のクリスとカーディとアキトの飲み会も知ってる」
クリスさんとカーディはびっくり顔でハルを見つめている。
「ブレイズとアキトが昇級試験を受けた時も、ルセフたちのパーティーとの冒険もな」
「あー…俺のあの失態もか」
ルセフさんは苦い顔でぽつりとそう呟いた。あの毒キノコの事だなとすぐに分かったけど、あれはルセフさんの失態ってわけじゃないと思うんだけどな。あれは避けられない事故だと思う。
「あれは仕方ないさ」
「あ、もしかしてあの時の薬って…?」
ハッと顔を上げたファリーマさんの質問をハルは笑って流そうとしたけれど、俺は声をあげた。
「うん、ハルが教えてくれたんです!」
「あーそうか…あの時はありがとうな」
「いや、アキトがいなかったら、対処法を伝える事すら出来なかったんだからな」
それでも助かったよと笑ったルセフさんは、アキトもありがとうなと言葉を重ねた。あの時はこんな事があったななんて話をし始めていたその瞬間、ブレイズがいきなり叫んだ。
「え…待って!じゃあもしかしてハルさんは…ハルさんは、精霊じゃないって事!?」
しんと静まり返った中、全員の視線がブレイズに集中した。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。